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宿命の対決!レオナルド×ミケランジェロ

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2017年6月28日

宿命の対決!レオナルド×ミケランジェロ


宿命の対決!レオナルド×ミケランジェロ

 

 

 

 

「レオナルド×ミケランジェロ展」が東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催されている。
期間は2017年6月17日(土)から9月24日(日)まで。

 

15世紀イタリアルネサンスの2人の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの素描(ディゼーニョ)を対比する日本初の展覧会。素描のほかに油彩画、手稿、書簡など、トリノ王立図書館やカーサ・ブオナローティ所蔵品を中心におよそ65点(うち日本初公開作品を含む)が一堂に会する。

 


ミケランジェロ・ブオナローティ《イサクの犠牲》 1535年頃 カーサ・ブオナローティ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

 


レオナルド・ダ・ヴィンチ《大鎌を装備した戦車の二つの案》 1485年頃 トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale

 

 

美術展で素描をじっくり見比べる機会はあまりないのでは?
素描は習作や下絵であるため、ほとんどの場合その隣には立派に額装された完成作品が飾られている。
いくらあのレオナルドとミケランジェロだからといって、正直なところ素描ばかりじゃ物足りないのでは…?  なんて心配は一切無用!

 

一本のチョークでここまで表現できるなんて!とその美しさにきっと感嘆することだろう。繊細な線描をなぞりながら素描の新たな魅力を発見できるはず。

 

 


レオナルド・ダ・ヴィンチ《髭のある男性頭部(チェーザレ・ボルジャ?)》 1502年頃 トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale

 

 

素描はすべての創造の源

 

 

15世紀イタリアで画家として才能を発揮し、建築、科学、解剖学の分野にまで関心を広げ「万能人」と呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチ。
一方、10代から頭角を現し「神のごとき」と称された世紀の天才彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ。

 

 

両巨匠とも素描はすべての創造の源であり芸術家にとっては最も重要なものと考えていた。

 

 

ルネサンス期では、「〈自然〉を母として、〈素描〉を父とすると、〈建築〉〈彫刻〉〈絵画〉の3姉妹がいる」といわれた。
つまり、自然に則ってデッサンすることは、芸術の基本中の基本と位置づけられていたということ。

 

 

ミケランジェロ・ブオナローティ《河神》 1525年頃 カーサ・ブオナローティ

 

 


ミケランジェロ・ブオナローティ《背を向けた男性裸体像》 1504-05年 カーサ・ブオナローティ ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

 

 

2人の天才の「最も美しい」といわれる素描

 

 

レオナルド作《少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》と、ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》が来日。
間近でじっくりと比較してみよう。

 

 


レオナルド・ダ・ヴィンチ《少女の頭部/<岩窟の聖母>の天使のための習作》1483-85年頃 トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale

 

 

レオナルドは左利き。そのため左上から右下へのハッチングが特徴的。斜線の重なりによる陰影と鉛白によるハイライトが柔らかな表情を描き出している。

 

 


ミケランジェロ・ブオナローティ《<レダと白鳥>の頭部のための習作》 1530年頃 カーサ・ブオナローティ ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

 

 

斜線を交差させるクロスハッチングと呼ばれる描き方。彫刻家でもあるミケランジェロはまるで大理石を削り取るかのように描いている。

 

 

「レダと白鳥」にみる対比

 

 

ギリシア神話の「レダと白鳥」は、スパルタ王の妻レダが、白鳥に化けた主神ゼウスに誘惑されている場面。
「レダと白鳥」は残念ながらオリジナルの絵画は両者とも失われおり、本展の展示は後代の追随者による模倣によって制作されたものだが、その魅力を十分に伝えている。

 

 

ミケランジェロの白鳥(変身したゼウス)が女性的であるのに対し、レオナルドの描く白鳥は驚くほど男性的。その違いも細部まで愉しみたい。

 

 


フランチェスコ・ブリーナ(帰属)《レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)》1575年頃 カーサ・ブオナローティ ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

 

 


レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《レダと白鳥》 1505-10年頃 ウフィツィ美術館©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

 

 

発光するような魅惑的な裸のレダがコントラポストのポーズで立ち、グレーの白鳥に姿を変えたゼウス(その表情にも注目してほしい)は、大きな翼でレダの柔らかい腰にを包み込むように抱いている。

 

 

見逃せない!【7月11日から公開】
ミケランジェロ・ブオナローティ(未完作品、17世紀の彫刻家の手で完成)
《十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)》

 


1514-1516年 大理石 2500(キリスト像だけで2010)mm  サン・ヴィンチェンツォ修道院付属聖堂蔵

 

 

彫り進めていくうちにキリストの顔の頬に黒い線(大理石の模様)が現れたために、制作途中で放棄され長く行方不明となっていた作品。
2000年になって、ローマ郊外の修道院に納められているキリスト像が、ミケランジェロによって手がけられた本作品であったことが明らかとなった。
数奇な運命をたどった本作が、いよいよ7月11日より公開される。これは見逃せない!

 

 

 

 

 

文: 五十嵐 絵里子
写真: 丸山順一郎

 

 

 

開催概要
「レオナルド×ミケランジェロ展」
会期:2017年6月17日(土)〜2017年9月24日(日)
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
※祝日・振替休日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで(最終入場時間19:30)
※臨時の時間変更の場合あり
休館日:月曜日 
※但し、祝日・振替休日の場合は開館
観覧料:
・当日:一般 1,700円、高校・大学生 1,000円、小・中学生 500円

 

 

【問い合わせ先】
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 

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Writer

五十嵐 絵里子

五十嵐 絵里子 - Eriko Igarashi -

大阪藝術大学芸術学部文芸学科卒業。
2015年に美術検定1級取得。都内で会社員をしながら、現在アートナビゲーターとして活動中。
山形県出身、東京都在住。