エリザベス ペイトン:Still life 静/生
原美術館(東京都品川区)にて、ニューヨーク在住の女性作家、エリザベス ペイトンの日本の美術館では初となる個展が開催されています。
《Two women (after Courbet)》 2016 Private Collection
以下全て、原美術館における展示風景
© Elizabeth Peyton, courtesy Sadie Coles HQ, London; Gladstone Gallery, New York and Brussels; neugerriemschneider, Berlin
《Ken and Nick(Ken Okiishi and Nick Mauss)》 2005
Collection Glenn and Amanda Fuhrman NY, Courtesy the FLAG Art Foundation
エリザベス ペイトンは、90年代半ば、親しい友人をはじめミュージシャンやカルチャー・アイコン、歴史的な人物などを繊細なタッチの油絵で表現し、人気を集めたアメリカの女性画家。その肖像画は、時代に新風をもたらす“新しい具象画”と称されました。描かれる対象は、自身にとっての美しいもの、憧れの対象などで、それらは彼女の日常のフィルターを介しているため、親密な雰囲気を纏っています。
近年では、美術史やオペラからもインスピレーションを得るなどさらに多様なテーマを作品に反映させ、各国で高く評価されています。
本展は、日本では紹介される機会の少なかったペイトンの25年の画業を、作家自身が 選んだ42点で一望する貴重な機会です。
《Nick(La Luncheonette December2002)》2003
Collection of Karen and Andy Stillpass
手前より、《Georgia O’Keeffe after Stieglitz 1918》 2006 The Sander Collection
《Pete (Peter Doherty)》 2005 Charlotte Feng Ford Collection、他
ペイトンの肖像画の特徴のひとつに、「同時代の人物も歴史的人物と同じような距離感で描いている」という点が挙げられます。
例えば、「ニルヴァーナ」のヴォーカル、カート・コバーン(1967-1994)の肖像は、眠りの場面を捉えた〈人物画〉という面と、カートの自殺を殉教になぞらえた〈聖人画〉という二面性を内包しているように見えます。それにより、作品は神聖で独特の雰囲気を醸し出しています。
《Kurt Sleeping》 1995 Private Collection, New York
また《Prince Eagle(Foutainebleau)》[プリンス イーグル(フォンテーヌブロー)、1999年]では、フランスの城の水辺を背景に、俯きがちに歩く友人を描いています。歴史ある美しい景観とは対象的に、人物の表情はほとんど見えず足速に画面を横切っています。
歴史的な城と今の友人を交差させることで、時代の距離を越えて同じ画面の中でストーリーを展開させているようです。
《Prince Eagle(Foutainebleau)》1999年
Laura and Stafford Broumand Collection
ペイトンの絵は、彼女の心象が写し出された、親密で日常的な作品といえます。何ものにもとらわれず、自由で個性的。私たちは色彩や筆跡から彼女の心の中を覗き込み、その日常を感じることができます。
原美術館という親密な雰囲気が漂う邸宅で、ペイトンの瑞々しい感性と向き合えるまたとない機会です。彼女特有の色彩や繊細な線による美しい作品の数々をぜひお楽しみ下さい。
文:五十嵐 絵里子
写真:新井 まる
会期:2017年1月21日~5月7日
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川4-7-25
電話番号:03-3445-0651
開館時間:11:00~17:00(祝日を除く水曜日は20:00まで、入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月休(3月20日は開館)、3月21日
入館料:一般 1100円 / 大高生 700円 / 小中生 500円 / 原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生は入館無料 / 20名以上の団体は1人100円引
URL:http://www.haramuseum.or.jp/