光と色彩に出会うイタリア絵画!「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展
日本とイタリアの国交樹立150周年を記念し、7月13日から東京・六本木の国立新美術館で特別展が開催中です。
今回の展覧会では、15世紀から17世紀初頭までの約60点の色彩性豊かなヴェネツィアのルネサンス絵画が出品され
ています。
会場入口は、水の都ヴェネツィアを彷彿とさせるような造りになっています。
展覧会構成は、ヴェネツィア・ルネサンス美術の初期から終焉にかけて1章から5章で紹介されており、特に4章では、
ヴェネツィア画派が非常に得意とする分野である肖像に焦点が当てられています。
イタリア・アカデミア美術館のパオラ・マリー二館長からの挨拶もありました。
・第1章 ルネサンスの黎明―15世紀の画家たち
まず、私たちを迎えるのは、ヴェネツィアの初期ルネサンス絵画を代表する画家、ジョヴァンニ・ベッリー二の《聖母
子(赤い智天使の聖母)》です。青色の壁と共鳴し合うように、深味のある彩色が施された絵画が並びます。また、ヴィ
ットーレ・カルパッチョの《聖母マリアのエリサベト訪問》では、宗教画でありながらも、背景にトルコ風のモチー
フをいれており、当時の暮らしを織り交ぜています。
・第2章 黄金時代の幕開け -ティツィアーノとその周辺
本展の大きな見どころは、サン・サルヴァドール聖堂にあるティツィアーノ・ヴェチェッリオの高さ4mある《受胎告
知》です。神がマリアに宿る瞬間から芸術がはじまり、宗教画の中に神の美を見いだすことのできる、伝統と祈りの
込められた絵画に圧倒されます。
また、私が注目したのはパリス・ボルドーネの《眠るヴィーナスとキューピッド》です。細やかなタッチと鮮やかな
色彩が特徴でありながら、実は16世紀に横たわる裸婦が流行し、子宝繁栄のために結婚の記念に多く描かれ、夫婦の
寝室に飾られることもあったそうです。絵画にも様々な歴史やエピソードがあることが感じられました。
・第3章 三人の巨匠たちーティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ
この章では、三人の巨匠達の大作を中心に構成されていますが、ヴェネツィア絵画の鮮やかな色使いに加え、独自の
表現方法を追求していた三者三様の絵画を見ることができます。
例えば、劇的な明暗表現で宗教画を多く描いたヤコポ・ティントレット(本名:ヤコポ・ロブスティ)が15世紀半ば頃に
描いた大型祭壇画《聖母被昇天》は、埋葬された聖母マリアが天に昇ろうとする瞬間を描いています。画面中央の聖
母マリアの衣が今まさに風に揺れているように見えます。
・第4章 ヴェネツィアの肖像画
印象的なのは肖像画に描かれた人物達に与えられた生き生きとした眼差しでした。描かれた人々と向き合うとき、
そこには「あなたと作品」の時間が存在するようです。表情、身体の動き、何を感じることができるでしょうか。
・第5章 ルネサンスの終焉ー巨匠達の後継者
本章では、ルネサンスの終わりと、バロック様式への移行を予感させる構成になっています。特にパドヴァニーノ
(本名アレッサンドロ・ヴァロターリ)の1620年頃に描かれた神話画《オルフェウスとエウリュディケ》は、一瞬の
感情や情熱を強い明暗方法で描かれています。黒い背景に浮かび上がるように描かれたオルフェウスとエウリュディ
ケが際立っています。
また、各章によって壁の色が異なるので、そちらも会場を巡りながらチェックしてみたください。
展覧会場を抜けると、展覧会売店につながっており、水の都ヴェネツィアに関するグッズやTシャツ、帽子などもあり、
必見です!
東京では10月10日(月・祝)までの展示ですが、大阪では10月22日から国立国際美術館で巡回展が行われます。日伊
国交樹立150周年の機会に触れられる貴重なイタリア絵画の数々。このチャンスを見逃すことなく、会場に足を運ん
でみてはいかがでしょうか。
文・写真:矢内美春
【情報】
《東京展》
会期:2016年7月13日(水)~10月10日(月・祝)
休館日:毎週火曜日(8月16日は開館)
開館時間:10時~18時、金曜日と8/6(土)、8/13(土)、 8/20(土)は20時まで開館
会場:国立新美術館 企画展示室 2E
《大阪展》
会期:2016年10月22日(土)~1月15日(日)
会場:国立国際美術館