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特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」

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2016年2月13日

特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」


日伊国交樹立150周年を記念した特別展である今回の展覧会では、ダ・ヴィンチが描く大変貴重な現存する絵画から

傑作<<糸巻きの聖母>>と、直筆ノート『鳥の飛翔に関する手稿』が日本初公開となります。

絵画、手稿、素描、ダ・ヴィンチの真筆を中心にレオナルド派の作品など約70点と、関連模型を通じ体系的に紹介

されています。

 

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芸術家、科学者、そして発明家と「万能人」として多方面に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチ。

本展のテーマである「見えない世界を探る(beyond the visible)」ことはダ・ヴィンチが生涯を通じて研究したこと

であり、絵画、素描などからその成果を見ることができます。

 

IMG_4470カルロ・ジュゼッペ・ジュルリ《ウィトルウィウス的人体図 (レオナルド・ダ・ヴィンチ作品に基づく)》
レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館

 

本展の見どころである≪糸巻きの聖母≫は英国貴族バクルー公爵が代々所蔵する傑作で、英国外に出品されるのは

なんと77年ぶり。

この作品は、レオナルド5大テーマのひとつであり、多くの画家の研究対象となっています。

そして、誰もが知るあの名画≪モナ・リザ≫へつながる技法の絵画でもあります。

 

聖母子の肌はヴェラトゥーラという技法で描かれ、何回も丹念に塗り重ねることで人物が光を発しているかのように

表現しています。

また、手前に描かれている岩はまるで呼吸しているかのように写実的で、レオナルドの地質学調査の結果が反映

されています。

岩、人物、服と描きかえるテクニックはレオナルドしかできない技です。

 

IMG_1360レオナルド・ダ・ヴィンチ 『鳥の飛翔に関する手稿』(ファクシミリ版)

Leonardo da Vinci. Codice sul volo degli uccelli. Biblioteca reale di Torino Leonardo da Vinci. Codice sul volo degli uccelli. Biblioteca reale di Torino
レオナルド・ダ・ヴィンチ 『鳥の飛翔に関する手稿』 第10紙葉裏、第11紙葉表、1505年、トリノ王立図書館 ⓒBiblioteca Reale

そして、≪糸巻きの聖母≫と合わせて見ていただきたいのが、『鳥の飛翔に関する手稿』です。

こちらは、人間の飛行を予見していたことを示す手稿で、人間の飛行に関する実験方法から実現の予言にいたるまで、

様々な研究の図解入りの直筆ノートとなっています。

今でこそ、人間が空を飛ぶことは簡単なことですが、何百年も前から空を飛ぶことを考えていたとは驚きです。

あらためて、レオナルドの非凡さを感じることができます。

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北イタリアの画家《貴族の肖像》アカデミア・カッラーラ

 

面白いと思ったのは北イタリアの画家による貴族の肖像画群です。

15世紀後半から横顔の作品が流行したそうで、レオナルドも描いています。

 

素描(デッサン)とはいえ、完成された作品で、一人ひとり丁寧に顔の特徴が鮮明に書き込まれています。

レオナルドは、顔の特徴が人の性格をいくらかでも表しているのは本当であるとし、たとえば、「唇、鼻、

目のしわがしっかりしている人は陽気でよく笑う人」などと書き残しているそうです。

ガイドを聞いていて自分はどれに当てはまるだろうか?と、思わず鏡を見たくなってしまいました。

 

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展覧会の最後には、素描から忠実に再現した関連模型が展示されていました。

橋の模型や組み立てプレハブパネルなど、レオナルドの都市計画に携わった建築家としての一面を見ることができ

ます。

 

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16世紀 ロンバルディア地方 画家《洗礼者聖ヨハネ》カポディモンラ美術館

 

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左:ジョヴァンニ・アントーニオ・バッチ《ルクレティアの自害》個人蔵
右:ジョヴァンニ・ピエトロ・リッツォーリ《プロセルピナの略奪》個人蔵

 

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レオナルド・ダ・ヴィンチ 《ユダの手の研究》 1495年頃、アカデミア美術館素描版画室
Su concessione del Ministero per i Beni e le Attività Culturali-Venezia Gallerie dell’Accademia

 

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レオナルド・ダ・ヴィンチ 《受胎告知の天使のための左手と腕の研究》 1505年頃、アカデミア美術館素描版画室
Su concessione del Ministero per i Beni e le Attività Culturali-Venezia Gallerie dell’Accademia

 

最後に、本展のキーポイントは、ずばり「動作」と感じました。

レオナルドは、人物を描くならその人物が心に抱いているものを十二分に表すだけの動作が必要であるとし、

心の情熱を動作で上手く表現しなくてはならないと言っています。

描かれている人々の表情であったり、手の動きにぜひ注目してみてください。

 

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展覧会売店には『鳥の飛翔に関する手稿』のレプリカのようなマニア心くすぐる物から、実用的なスマホケースなど

たくさんのグッズがありました! ぜひチェックしてみてください。

文 / 大須賀美紀   写真 / 新麻記子・新井まる

【情報】

 

特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」

 

会期 : 2016年1月16日(土)~4月10日(日)

休館日 : 毎週月曜日、3月22日(火)(ただし、3月21日・28日は開館)

開館時間 : 9:30~17:30、土曜日は19:30まで開館

開場 : 東京都江戸東京博物館

 



Writer

大須賀美紀

大須賀美紀 - Ohsuga Miki  -

学生ライター 

現在大学では国際政治が専門ながら、スペインのボデゴンについても勉強中。 

母の影響で幼い頃からヴァイオリンを習い、バレエやオペラ、西洋絵画展にもよく足を運ぶ。 

最近興味があるのは、韓国のアルバムアートワーク。お気に入りはミンヒジン室長の作品。