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横山大観の作品が大集合!『生誕150年 横山大観展』

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2018年4月27日

横山大観の作品が大集合!『生誕150年 横山大観展』


 

横山大観の作品が大集合!『生誕150年 横山大観展』

 

 

東京・竹橋にある東京国立近代美術館で、5月27日(日)までの期間、『生誕150年 横山大観展』が開催されています。

 

横山大観(1868−1958)は明治・大正・昭和時代に活躍した日本画家です。

 

本展は、横山大観の作品のみで成り立っています。しかも、出品数は90点(展示替え有り)で、大画面作品やシリーズ作品が多く、第一から第三会場まであります。

 

 

明治・大正・昭和に分けて展示、3つの元号を駆け抜けた巨匠の全貌を解き明かし、見終わった後には心地よい充足感が得られる大回顧展となっています。

 

 

 

 

 

 

下積みを重ね、世間に認められた明治期

 

 

 

明治期は、東京美術学校を卒業して下積みの生活を送り、横山大観が世間にようやく認められた時代です。

 

作品から、新進気鋭の画家として新しい日本的絵画を生み出そうとした大観の勢いが感じ取れます

 

また、明治の終わりから大正の初めにかけて、切磋琢磨したライバル的存在の日本画家・菱田春草(1874−1911)や、師である岡倉覚三(天心)(1863−1913)の死を経験をしました。

 

 

 

キャリアを着実にアップ…研究に挑んだ大正期

 

 

 

 

「群青富士」1917年頃、横山大観、静岡県立美術館蔵 4/13‐5/6展示

 

 

 

大正期は、横山大観の作品への評価が高まりました。

 

大観が様々な技法を研究して実践した時代です。
展覧会では、この時期の屏風作品や複数の掛け軸で成り立つ豪華絢爛なシリーズを一挙に楽しめます。

 

会場に並んだ作品を見るだけで、大正期の大観がいかに充実し、キャリアを確実に築いていったかが見て取れるでしょう。もちろん、富士山を描いた作品もあります。

 

 

 

重要文化財「生々流転」(部分)1923年、横山大観、東京国立近代美術館蔵

 

 

 

第二会場に展示されている《生々流転》(1923)は、大正期の代表的な作品です。
40メートル以上の長さ水の一生を表現しています。

 

よく見ると、四季の中で人々の営みや1日の時間の流れが描かれています。大きさだけでなく細部描写まで力が入っています。

 

ぜひ、会場でその長さに驚きつつ、じっくりと鑑賞してみてください。

 

 

 

日本画の重鎮へと…昭和期

 

 

 

昭和期は、日本画界の重鎮として日本国家に貢献するため積極的に活動しました。

 

大胆で迫力のある大画面の作品と、可愛らしい花々を描いた静かで優しい作品があります。

 

 

 

 

「夜桜」 1929年、横山大観、大倉集古館蔵 5/8-5/27展示

 

 

 

満開の桜を描いた華やかな《夜桜》(1929)は、1930(昭和5)年にローマで開催された
日本美術展覧会のために描いた作品です。日本を象徴する桜と、松を大きく分かりやすく描いています。
桜の白、松の鮮やかな緑、夜空の引き締まった群青という色彩の対比が美しい作品です。

 

昭和期の代表的な作品は、「海山十題」として有名な〈海に因む十題〉〈山に因む十題〉(1940)です。
多くの時間と精力を注いだこのシリーズの売り上げを、陸海軍に寄付したことで知られています。海と富士山を四季折々の姿で描いた艶やかな作品です。

展覧会では、このシリーズの一部が一列に展示され、当時の様子を伺いしることができます。

 

 

 

何故、横山大観は富士を描いたのか?

 

 

 

戦時中は、富士山は天皇が治める国としての日本を表すと解釈されました。
当時の大観が描いた作品も例外に漏れず、美しい一方で士気を高めるための作品でした。
昭和前期の大観は、日本を「御國」と呼んで、タバコパイプといった日用品から松といった画題選択まで日本のものを好んだようです(参考文献②pp.201-229)。

 

戦争後も、横山大観は富士山を描き続けます。富士山が持つ意味は変わりましたが、
引き続き富士山を主題とした作品を制作し、横山大観=富士山と一般に知られるように
なりました。

 

富士山が大好きだったのか? 十八番だから制作したのか? 富士山を描いている時の横山大観の気持ちを想像するのも面白いですね。

 

 

 

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『生誕150年 横山大観展』は、活動初期から晩年までの作品をお腹いっぱい楽しめ富士山だけではない、様々な横山大観の姿を知ることができる展覧会です。横山大観について知りたいという方はもちろん、ファンも満足すること間違いありません。

 

 

 

参考文献 ①東京国立近代美術館他『生誕150年 横山大観展』2018年
     ②横山大観記念館編『大観の画論』1993年

 

 

 

文・耳塚里沙
写真・鈴木佳恵

 

 

 

【展覧会概要】
展覧会名:生誕 150 年 横山大観展
会期:2018年4月13日(金)〜5月27日(日)
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3−1
開館時間:午前10時〜午後5時(金、土曜日は午後8時まで)
休館日:月曜日(ただし4月30日は開館)
観覧料:一般1500円、大学生1100円、高校生600円、中学生以下無料
問い合わせ:公式サイト http://taikan2018.exhn.jp
      ハローダイヤル 03-5777-8600

 

 

 

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Writer

耳塚 里沙

耳塚 里沙 - mimizuka risa -

学生ライター。

大学では日本美術史を専攻中。

明治時代の洋画について勉強している。

美術館に行くことが好き。

将来は学芸員として美術館で働きたいと考えている。