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Viva 北斎!ー『北斎とジャポニスム』

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2017年11月4日

Viva 北斎!ー『北斎とジャポニスム』


 

Viva 北斎!ー『北斎とジャポニスム』

 

マネ、印象派、ゴーギャン、ナビ派、アール・ヌーヴォー…。

西洋近代芸術に大きな影響を与えたジャポニスム。

日本美術の中で特に注目されたのが江戸後期の浮世絵師である葛飾北斎(1760〜1849)です。

『北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』では、北斎の絵と西洋の絵画や工芸作品を隣り合わせで展示しています。

一会場で二度おいしいだけではなく、西洋の芸術家たちが “HOKUSAI” を熱心に鑑賞して模写し、新しい美術を作ったことが実感できます。

北斎を西洋芸術家の視点から見ると、面白い発見があるかも!

 

1Who is 北斎?

 

右 葛飾北斎《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》1830-33(天保元-4)年頃 ミネアポリス美術館

左 クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館(松方コレクション)

 

葛飾北斎は、江戸後期に活躍した浮世絵師です。

勝川春章(1726〜1792)に入門して20代から活動し、90歳で亡くなるまで絵を描き続けました。

やまと絵、漢画、洋風画など色々な画風を吸収し見る人を驚かせる作品を制作しました。

「冨嶽三十六景」は今も人気ですね。

 

2.みんな真似してビッグになった!

 

北斎の絵を使って日本文化を紹介した書籍

 

「名無しさん」から「世界の HOKUSAI 」へ

 

北斎は開国前から出島のオランダ商館員たちに知られていました。

フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796〜1866)は1832年から刊行された『日本』に北斎の絵手本や肉筆画を複製して載せました。

 

1854年に日本が開国すると、ヨーロッパの外交官たちが来日して日本旅行記を書きます。彼らは日本文化を紹介するために日本の絵本から画像を引用しました。絵の作者である北斎の名前を記さずに掲載したり、「オクサイ」「ホッフクサイ」などと奇妙に呼んだりしました。

 

北斎の絵本とそれに影響を受けたヨーロッパ絵画

 

1870年代から80年代にかけて、日本美術のコレクターが登場し研究が行われるようになり、ジャポニスムが盛り上がりました。

 

フランスでは政治的な背景もあって、民衆の生活を生き生きと描いた北斎は日本で最も素晴らしい画家だと言われました。

 

ジャポニスム全盛期は、ちょうど印象派が台頭した時代と重なります。今までとは違う芸術を生み出そうとしていた若き画家たちは、北斎らによる浮世絵や絵本に出会ってヒントを得ます。模写をしたり引用したりすることで、型破りな画風を作り上げました。

 

展覧会では、ありのままの人物、かわいらしい生き物、自然の中にある植物、斬新な風景画、波と富士山という5つのモチーフに分けて作品を展示しています。

西洋の芸術家たちが北斎から何を学び、どのように生かしたのか追体験できます。

 

左から:メアリー・カサット《母と子ども》1889年頃 シンシナティ美術館

葛飾北斎『北斎画鏡』1818(文政元)年 個人蔵

メアリー・カサット《青い肘掛け椅子に座る少女》1878年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

葛飾北斎『北斎漫画』初編 1814(文化11)年 浦上蒼穹堂

 

メアリー・カサットの描くちょっと生意気な子供たちがかわいくてたまりません!

 

右 オーギュスト・ロダン《女》制作年不詳 国立西洋美術館(松方コレクション)

左上 同《二人の裸婦》1900年頃 ロダン美術館、パリ

左下 同《座る二人の裸婦》1896〜98年頃 ロダン美術館、パリ

 

北斎は春画も手がけました。

春画を研究した芸術家たちによるセクシーなスケッチを展示するコーナーもあります。

 

エミール・ガレ《ランプ:朝顔》1904年頃、ヤマザキマザック美術館 ほか

 

身の回りにいる小さな生物を主役にするということも西洋では新しい試みの一つでした。

エミール・ガレ(1846〜1904)の工芸品は、思わず家で飾りたくなってしまいます。

 

3.新しい美術の広がり

 

フランスの芸術家たちは、北斎の浮世絵や絵本からモチーフの選び方や描き方、極端な遠近法を用いたり空間を突然切ったりした斬新な構図、誇張したポーズを学びました。

 

フランスで生まれた新しい運動はスペインやドイツなど国外にも伝わりました。

 

展覧会では、スペインの画家サンティアゴ・ルシニョール(1861〜1931)による北斎の風景画に影響を受けた作品も展示されています。

 

美術から見える世界の交流

 

北斎の絵はよく見ると、遠近法や陰影法、人物や生き物の描き方などに西洋絵画技法の影響がうかがえます。

 

和漢洋の画風をミックスさせて独自の画風を生み出した北斎の作品をフランスの画家たちが取り入れ、その動きが国外にも波及しました。

 

新しい様式は海を渡って明治の日本にも伝わりました。

 

全く異なるように見える東西世界の美術が、お互いに時差や誤解を含みながらも楽しまれ、斬新な美術を生み出す起爆剤となったのは面白いなあと思います。

 

今ほどスピーディーではないですが、一見遠く離れた文化もどこかでつながっているということがよく分かる展覧会です。

 

左から

葛飾北斎『北斎漫画』六編 1817(文化14)年 浦上蒼穹堂

エドガー・ドガ《競馬場にて》1866-68年 オルセー美術館、パリ

葛飾北斎『三体画譜』1816(文化13)年 浦上蒼穹堂

テオフィール・アレクサンドル・スランタン ポスター「スランタンの素描と油彩画展」1894年 サントリーポスターコレクション(大阪新美術館建設準備室寄託)

 

ツンツン顔のネコちゃんもかわいいですね。

 

作品についてより詳しく知りたい!

 

展示されている作品の作者や成り立ちについて知りたい方は、音声ガイドを借りるのがオススメです。

映画『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』(2015年)で葛飾北斎を演じた松重豊さんが、19世紀のパリにいたダンディーな美術店店主として展覧会のナビゲートをしてくれます。

 

展覧会カタログは公式図録のほかに、ミニ図録もあります。サイズも価格もお手ごろで、

自分用にもアート好きな友達へのプレゼントにもぴったりです。

北斎の浮世絵も西洋美術も楽しめる、一石二鳥の『北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』から帰った後も繰り返し満喫できます!

 

 

文:耳塚里沙

写真:石水典子、丸山順一郎

 

 

【展覧会情報】

 会期:2017年10月21日(土)〜2018年1月28日(日)

 会場:国立西洋美術館

    東京都台東区上野公園7番7号

 開館時間:午前9時30分〜午後5時30分

      金、土曜日は午後8時まで。ただし11月18日(土)は午後5時30分まで

      入館は閉館の30分前まで

 休館日:月曜日、12月28日〜1月1日、1月9日

     ただし1月8日は開館

 料金:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料

    20名以上の団体は200円引き

    2018年1月2日(火)〜8日(月)は高校生無料観覧日(学生証提示)

 アクセス:JR上野駅公園口から徒歩1分、京成電鉄京成上野駅から徒歩7分、

      東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅から徒歩8分

      美術館に駐車場はありません。周辺の駐車場の数に限りがあるため公共交通

      機関をご利用ください。

 公式ホームページ:http://hokusai-japonisme.jp 

 ツイッター公式アカウント:@hoku_japonisme

 問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 

「浮世絵に関する過去の記事はこちらから!」

138年の時を経た”歴史的再会”を見逃すな!―歌麿大作「深川の雪」と「吉原の花」

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参考文献:

国立西洋美術館『北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』展カタログ、

読売新聞東京本社・国立西洋美術館、2017年



Writer

耳塚 里沙

耳塚 里沙 - mimizuka risa -

学生ライター。

大学では日本美術史を専攻中。

明治時代の洋画について勉強している。

美術館に行くことが好き。

将来は学芸員として美術館で働きたいと考えている。