みどころは始祖鳥だけじゃない!-大英自然史博物館展
イギリスにある大英自然史博物館は、8000万点もの博物学標本のコレクションを持つ世界有数の博物館です。子どもから大人まで満足できる施設で、ロンドンの人気観光スポットの1つでもあります。
国立科学博物館で実施中の大英自然史博物館展では、遠いイギリスまで旅行せずに貴重な所蔵品の数々を見ることができます。
《テラコッタ製ライオン》 1980年代にもっと頑丈なレプリカに代えられるまで、大英自然史博物館の屋根に飾られていたライオン像。
大英自然史博物館は、増え続ける大英博物館の自然史関連収蔵品を窮屈なスペースから救うべく、1881年に大英博物館分館として開館しました。
1963年に自然史部門独自の評議会が設立され、大英博物館から独立します。
1992年には正式名称が「The Natural History Museum」となりました。
自然史博物館というと、動物の標本や貝殻、虫を並べたケースを思い浮かべるかもしれません。実際、多く展示されています。
《始祖鳥》ドイツ ジュラ紀後期、1億4700万年前
例えば、「始祖鳥」と言われたらこの化石が教科書に載っていたことを覚えている方も多いでしょう。
レプリカではありません。本物です。
隣には、この始祖鳥が夜の博物館を飛び回る映像があります。
化石を見るだけでも面白いですが、一緒に ”ナイト ミュージアム” まで楽しめるのはうれしい!
始祖鳥の他にも、動き出す生き物がいますよ。
《サーベルタイガー》アメリカ更新世、1万2000年前
華やかな鉱石の展示もあります。
特に好きになった宝石を2つ紹介します。
《サファイアのターバン用ボタン》おそらくインド
こちらは、大英自然史博物館コレクションの基礎となったハンス・スローン(1660−1753)のプライベートコレクションで最高の宝石の1つ。
主役は中央にある31.5カラットのサファイアですが、周りのエメラルドとルビーで装飾された水晶の彫刻がとてもキュート。
スローンは17〜18世紀のロンドンで上流階級専門の医師をしていました。生涯をかけてあちこちを旅行して集めた膨大なコレクションは、92歳で逝去したあと国に遺贈されました。もともとスローンのコレクションだった7万1000点を超える収蔵品は、大英博物館自然史部門の基礎となったのです。
一体、彼の家の中はどうなっていたのでしょうか。
《呪われたアメジスト》
こちらは所有者を不幸にしてきたという”呪われた” ジュエリー。 キラキラと光って綺麗です。
美しいバラにはトゲがある、の実例。
展覧会では、モノだけではなくヒトにも焦点を当てています。
イギリスの自然科学の発展に寄与した人物たちが、肖像と共に紹介されています。
進化論を発表したダーウィンを始め、多くの研究者を関係のある収蔵品と一緒に分かりやすく解説。
近代科学の担い手は、男性ばかりではありません。
19世紀後半から20世紀初めにおいて、科学の歴史上で重要な発見をした女性研究者が何人もいたことが分かります。
元祖、リケジョ。
《メアリー・アニングの肖像画 グレイによる》1842年頃
こちらはプロの化石ハンター、化石商のメアリー・アニング。
世界初、イギリス初の化石を次々と発見しました。
傍にいるのは、彼女の愛犬トレイ。採掘現場で居眠りする無邪気なペットのように見えますが、実際はとても優秀な助手だったそうです。
肖像画の中の彼女は、ヴィクトリア時代の女性らしい、自然の中を歩くには不便そうな服装です。どうやって化石を発掘していたのでしょうか?
《小型化したヤギ類化石》マヨルカ島 更新世、500万〜4000年前
小型化したヤギ類化石を新種として報告する論文を発表したのは、大英博物館初の女性研究者であり動物考古学のパイオニアの一人として有名なドロシア・ベイト(1878−1951)。
展示されていたヤギの化石は、小さくて可愛らしいガイコツです。
他にも様々な分野の女性科学者が紹介されています。
化石、動物の剥製、石、ガイコツといった自然史博物館らしい収蔵品だけでなく、研究者同士の友情を示す手作りのプレゼントも展示されています。
《微化石のクリスマスカード》
これは、顕微鏡を使うときに、プレパラートを上手く作ることができずに付いてしまったホコリではありません。
非常に手の込んだクリスマスカードです!
アーサー・アーランドが同僚のエドワード・アレンに向けて、微化石から作成しました。
よくよく見ると、微化石でしっかりクリスマスの挨拶が書かれています。
ぜひ実物をじっくりご覧ください。
アーランドとエドワードは大英自然史博物館の古生物学者で、25年間共に働きました。
こんなに苦労して制作したクリスマスカードを贈られたら、とてもうれしいですね。
《ピルトダウン人の頭骨片と下顎骨》イギリス
実は、ピルトダウン人の発見は、科学の歴史の中で悪質な捏造の例として有名な出来事です。類人猿からヒトへ進化するには、まず知性が発達したはずだという推測に合わせてニセモノの化石を作り、地中に埋めたのです。
この化石は、大英自然史博物館の研究員ケネス・オークリーによってニセモノだと立証された後も廃棄されず、保存されました。しつこく研究が続いた結果、捏造工程も解明されました。
過去の失敗に正面から向き合って、学ぶ。
科学への真摯な態度が実感できます。
俳優の山田孝之さんがトレジャーハンターに扮してナレーションを務める音声ガイドで、展示をもっと楽しめます。出題されたクイズに正解すると、褒めてもらえます。
鑑賞後の楽しみのひとつであるミュージアムショップも充実しています。
始祖鳥がお出迎え。
量・質共に充実した展覧会カタログと一緒に、始祖鳥のマスコットが並んでいます。
思わず抱きしめたくなるいとおしさを実現しつつ、口にはしっかり歯がついています。
カワイイとリアルの両方を備えたアイテムです。
くまのパディントンのグッズコーナーもあります。2016年に公開された映画『パディントン』(2014年/イギリス)で、大英自然史博物館が重要な舞台となったからです。
映画と違ってリアルすぎない、可愛らしいぬいぐるみもあります。
大英自然史博物館展は、子どもから大人まで様々な方が楽しめる展覧会です。
一人で、友達と、家族と、イギリスへ行った気分になってみませんか。
文・写真:耳塚 里沙
【インフォメーション】
大英自然史博物館展
会場:国立科学博物館
〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
JR上野駅(公園口)から徒歩5分/東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅(7番出口)から徒歩10分/京成線京成上野駅(正面口)から徒歩10分
Google マップ https://goo.gl/maps/qMzM4d5FL1C2
会期:2017年3月18日(土)~6月11日(日)
開館時間:午前9時~午後5時
金・土曜日は午後8時まで。
4月28日(金)、29日(土)、30日(日)、5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)、7日(日)は午後9時まで
5月1日(月)、5月2日(火)は午後6時まで
※春休み中、GW中の日中および会期末は混雑が予想されます。
会期前半の平日のご来場もご検討いただければ幸いです。
休館日:3月21日(火)、 4月10日(月)、 4月17日(月)、 4月24日(月)、5月8日(月)、5月15日(月)、 5月22日(月)、 5月29日(月)
3月22日(水)より整理券での対応を開始しています。
※混雑時はお受け取りの整理券に記載の時間での入場となります。
待ち時間無しの場合も渡されますが、そのまま入場できます。
この整理券の導入により、混雑時に入場まで列で並ぶのではなく、
整理券に記載された入場時間までは、常設展を見たり、
館内のカフェ・レストランで休憩することができます。
整理券の詳細については、公式HPをご覧ください。
※開館時間、休館日等が変更される場合がありますので、最新の情報について
公式サイト等でご確認ください。
主催:国立科学博物館、読売新聞社、BS日テレ
共催:大英自然史博物館
後援:文部科学省、外務省、駐日英国大使館
公式サイト:http://treasures2017.jp