【おすすめアート】陶芸の今を知る「陶芸の進行形」
「陶芸の進行形」展に出展している30-40代のアーティスト25名は、いずれも公募展「菊池ビエンナーレ」で受賞・入選してきた作家たちだ。
この世代は日本の陶芸界において層が厚く、意欲的に作品を発表し存在感を示しているアーティストが多い。本展もそれぞれの作家の個性が光り陶芸界を担っていく次世代の「現在」をたっぷり堪能できる。
〜注目のアーティスト〜
素材や技法、制作工程がそれぞれ独自の要素を持ち、陶芸の歴史や伝統に縛られない現代美術の発想や多様なカルチャーからの影響を反映させ、“現在の美意識”で陶芸作品を制作している。その中でも特に注目のアーティストを3名ピックアップしたい。
●新里明士
この世代のトップランナーの一人。
磁器のうつわにドリルで穴を空け、釉薬で埋めることでまるで陶器が透けているように光を通す。“光器”という20代から取り組んでいるシリーズが展示されている。近作では、更に光器をひび割れたり欠けた新シリーズを展開し、今後のどのような変化があるのか見逃せない。
Podcast番組「アーティストと〇〇してみたいっ!」では新里さんの岐阜のアトリエにお邪魔してたっぷりお話を聴きました。あわせてお楽しみください。
【フルバージョンの音声はこちらからお聴きください】
#8 陶芸界のトップランナー・新里明士さんと、穴あけ体験をしてみたいっ!
【連動コンテンツ】
アーティストと◯◯してみたいっ!をより楽しみたいっ#8(ARTalk内連載企画)
アートテラー・とに〜さんの連載コラム。新里明士さんとの幻の共作となった盃の写真も見られます
●津守愛香
菊池ビエンナーレでは優秀賞を2回とっており、他の方に比べると具象的な作風の方。
仏像や天女など様々なものをモチーフにして「女の子」(童女)を制作してきた。
必ずしもかわいいだけの世界ではなく、物語性があったり今を生きる女性ならではのメッセージも受け取れる。今回は娘さんの絵を元にして作品を制作した作品もあり、母となり新たなライフステージに移ったことを感じさせる。
●五味謙二
土の重力を感じる膨らみが面白い作品を多く手掛ける、アワード受賞常連作家。
土の性質と“焼く”ということを考えぬいて制作しており、本展では土台の上に直接土を乗せて上のパーツを作ることで、その自重によって上下のパーツをかみ合わせるという、土の性質をうまく活かした作品が存在感を放つ。
匣(さや)
その他「特別展示」として第9回展までの大賞作品を一堂に展示し、併せて「菊池ビエンナーレ」の歴史を振り返れるコーナーもあるので第10回「菊池ビエンナーレ」展開開催前の予習にもぴったりだ。
作家が個人の表現として発表する場が拡がり身近になる昨今。アイデンティティや産業、伝統的手法の打破など様々なメッセージを考えることのできる本展をお見逃しなく。
文: 山口 智子
写真: 新井 まる
【展覧会概要】
「陶芸の進行形 TOGEI IN THE PROGRESSIVE FORM」
会期 2023年9月30日(土)~2023年11月26日(日)
会場 菊池寛実記念 智美術館
住所 東京都港区虎ノ門4-1-35 西久保ビル
時間 11:00~18:00 (最終入場時間 17:30)
休館日 月曜日
観覧料 一般 1,100円
大学生 800円
小中高生 500円
※未就学児は無料
※障害者手帳提示の方(介護者の必要な方は1名迄)は通常観覧料の半額となります
※リピート割引:会期中2回目以降の鑑賞の方は半券の提示で300円割引となります
(他の割引と併用はできません)
TEL 03-5733-5131(代表)