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話題の『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』〜ゴッホと日本の時を超えた物語〜

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2017年11月13日


話題の『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』〜ゴッホと日本の時を超えた物語〜


 

話題の『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』〜ゴッホと日本の時を超えた物語〜

 

 

現在、東京都美術館で『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』が開催されています。

ゴッホが日本の浮世絵に影響を受けていたことは有名ですが、今回の展覧会では、特に日本との関係性に注目した斬新な構成となっています。さらには、初来日の貴重な作品も数多く展示されています。展覧会の見どころを紹介しながら、ゴッホと日本の時を超えた物語を感じていただきたいと思います。

 

 

 

第1章の「パリ 浮世絵との出逢い」、第2章の「アルル 日本の夢」、第3章の「深まるジャポニスム」、そして第4章「自然の中へ 遠ざかる日本の夢」では、ゴッホの作品だけでなく、ゴッホが影響を受けた浮世絵も展示されています。見どころの1つ目は、ゴッホの作風の移り変わりを感じながら日本美術との関係が紐解く展示でしょう。

 

 

 

 

ゴッホはパリでの画家生活の後に、日本を夢見て南仏アルルに渡り、ゴーガンとの共同生活を送り、そして「耳切り事件」の後にサン=レミの精神病院に入院します。当時のフランスは、雑誌で日本特集号か発行されるなど日本の美しい風景が理想的に取り上げられ、ジャポニズムに湧き上がっていました。ゴッホはパリ生活の中で、浮世絵から独特の構図と色彩感覚、遠近法を学びます。単純に模写をするだけでなく、色の対比を実験的に取り入れ自由にモチーフを組み合わせた浮世絵を描きます。

 

 

 

 

そして、アルルで生活を開始した1888年頃、彼のジャポニスムからの影響はますます深まりを見せていました。

ゴッホがどのように影響を受けたのかが見て取れる作品を紹介します。

 

 

フィンセント・ファン・ゴッホ《冬景色》1888年 油彩・カンヴァス 個人蔵©︎Roy Fox

 

こちらは、日本初公開となる個人蔵の貴重な作品のため、この展覧会の中でも必見です。ゴッホがアルルに到着した時、そこに広がっていたのは意外にも雪景色だったそうです。この作品は、歌川広重や浮世絵版画の作品を参考にして地平線を高くした構成や前景に大きく茂みや板囲いを配置して、雪の白さを引き立たせています。

 

 

フィンセント・ファン・ゴッホ《タラスコンの乗合馬車》1888年 油彩・カンヴァス、ヘンリー&ローズ・パールマン財団蔵(プリンストン大学美術館長期貸与)©︎The Henry and Rose Pearlman Collection/Art Resource,NY

 

 

アルルの時代に描かれたこちらの作品も日本初公開です。輪郭線がはっきりと描かれ、平坦な色面になっていき、絵の具は厚く塗られ、陰影は描きこまずに鮮やかな色のコントラストが印象的です。空間の奥行きと構図を引き締めるために馬車の後方にあるはしごが絶妙に描かれています。

 

ゴッホは、終焉の地となるオーヴェール=シュル=オワーズで生活をすると、主治医のガシェと日本への関心を分かち合いました。1889年、日本は立憲国家となり理想化されていた日本ではなく現実的なものとしてフランスの中で位置付けられてきました。その一方で、浮世絵展がパリで開催され成功を収めていました。その展覧会を訪れたいというゴッホの言葉が手紙の中に残っていましたが、1890年7月、その願いは叶うことなく、彼は息を引き取ります。

 

 

 

 

 

ゴッホは、フランス作家ピエール・ロティの『お菊さん』を読んで日本を夢見たそうです。この小説は、海軍が日本に立ち寄り、日本人女性のお菊さんとひとときの期間同棲するという物語だそうです。彼は、そこに書かれていた日本の風景に強い憧れをもっていました。自身の作品に脚光が当たらぬ中で、日本はフランスよりも明るく太陽の光が多く降り注ぐ国だと夢見ていたゴッホ。彼の作品から光のまばゆさを感じるのはできるのは「夢」の背景があるからかもしれません。

 

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ゴッホの死から時を経て、1910年、日本では様々な文学作品を通して彼の作品が紹介されます。文芸雑誌『スバル』で森鴎外が初めてファン=ゴッホの名前をあげると、『白樺』が刊行され、その後も彼に関する記事や作品が掲載されました。1914年に、オーヴェールに、ゴッホと弟テオの墓が並ぶと、日本人の多くがこの地を訪れ始めました。

 

 

 

 

第5章「日本人のファン・ゴッホ巡礼」では、彼の足跡を求めてオーヴェールに赴いた日本人と、当時、彼の作品を守り伝えていた主治医ガシェの一族との交流が垣間見える写真や芳名録が多く展示されています。ゴッホが亡くなった後、今度は日本人が彼を強く求め、時代を超えた交流の幕開けを感じることができます。これが見どころの2つ目と言えるでしょう。

 

特に熱心に作品を紹介したのは、小説家の武者小路実篤、画家の岸田劉生、美術家の児島喜久雄、白樺派の文学者や美術家たちでした。

 

 

斎藤茂吉《滞歐手帳13》1924年、日記、斎藤茂吉記念館蔵

 

 

精神科医でもあり歌人の斎藤茂吉は、オーヴェール訪問時に短歌を記し、ゴッホの精神疾患について専門的な考察をしながらゴッホを日本人に紹介しました。

 

 

右:前田寛治《ゴッホの墓》1924年、日記、斎藤茂吉記念館蔵

左:佐伯祐三《オーヴェールの教会》1923年、油彩 カンヴァス、個人蔵

 

ゴッホもモチーフにしていたオーヴェールの教会を描いた佐伯祐三は、誰よりも彼を崇拝していたと言われています。洋画家前田寛治と里見勝蔵は、2人でゴッホとテオのお墓を訪れ前田はそのお墓の絵画を作品として残し、里見は道端で摘んだ草花を墓地に植えたそうです。

 

 

 

当時の日本は、自由主義の空気が出始めた大正デモクラシー。作品を通して新たな時代の流れを作ろうとした若き文学者や芸術家たちがどれほどゴッホに熱く焦がれていたのかを想うと強く胸を打ちます。ゴッホが生涯苦しみながらも懸命に貫いた自己への追求は、当時の彼らが直面した苦しみや不自由さや理想への憧れ、個人が模索していた生き方と大きく響き合ったのかもしれません。

 

 

フィンセント・ファン・ゴッホ《画家としての自画像》1887/88年、油彩・カンヴァス、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

 

ゴッホの日本美術からから影響を受けて生まれた作品が、時代を超えて日本人が彼の作品からインスピレーションを受けそして新たな作品へ紡がれていく…。本展覧会では時代のうねりを感じることができるのではないでしょうか。

 

文・写真 Yoshiko

 

 

【概要】

『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』

会場:東京都美術館 
会期:2017年10月24日 – 2018年1月8日

開室時間:9:30~17:30 ※入室は閉室の30分前まで (金曜日は20:00まで)

休室日:月曜日※ただし1月8日(月・祝)は開室

年末年始休館:12月31日(日)、1月1日(月・祝)

観覧料:一般1600円、大高生1300円他
※11月15日(水)、12月20日(水)はシルバーデーにより」65歳以上の方は無料(要証明)
HP:http://gogh-japan.jp

 

 

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Writer

Yoshiko

Yoshiko - Yoshiko -

東京都出身。中高は演劇部に所属。大学、大学院と心理学を専攻し、現在は臨床心理士(カウンセラー)として、「こころ」に向き合い、寄り添っている。専門は、子どもへの心理療法と家族療法、トラウマや発達に関することなど教育相談全般。

子どもの頃から読書や空想、考えることが大好きで、その頃から目に見えない「こころ」に関心があり、アートや哲学にも興味をもつ。

内的エネルギーをアウトプットしているアートと沢山携わりたいとgirlsartalkに参加した。昨年はゴッホ終焉の地であったオーベルシュルオワーズを訪れるため、パリに一人旅をし、様々なアートを見てまわる。






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