わずか37年の人生で芸術史を変えた!天才画家ゴッホの生涯~Archive vol.2~
ゴッホ 「画家の自画像」 1887-88 65 x 50.5 cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム
girlsArtalk読者の皆様、こんにちは。編集部の鈴木です。
アートの話をしていると出てくる様々なアーティストの名前。有名な作品なら記憶にあるけれども、実は良く知らない方も多いのでは。歴史的な芸術家をもっと理解することによって、作品や作家自身をより身近に感じてもらえたら、と今後アーカイブ記事を定期的に作成していきたいと思います。
今回はファン・ゴッホをご紹介します。
ポストモダン派の代表格としてゴーギャンやセザンヌと共に名前が挙がる、フィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホ。近代美術の父と呼び声高く、広告や文芸作品にも扱われ世界的に知名度の高い画家です。
彼に対しての世間のイメージは、「自死を遂げた画家」「生前、売れなかった」「孤独」といった悲観的なものが多数を占めると思います。
彼がどのような人生を歩み、それを作品に反映させたのか一緒に探っていきましょう。
繊細な感性と、画家としての才能は幼い頃から片鱗を見せていた
ファン・ゴッホは1853年、オランダ南部・ズンデルトで牧師の長男として産まれました。子供の頃から感受性が強く、癇癪を起こしては周囲を困惑させたと言われています。一人、無断で出掛けては、草木や昆虫といった自然を眺めていたのです。この頃の原体験がのちに自然や農家をモチーフに選ぶきっかけとなったのかも知れません。また11歳の頃に父への誕生日プレゼントとして描いた素描『農場の家と屋根』では、すでに類いまれなる絵の才能が見て取れます。
ゴッホ 「森の中の少女」1882 39x59cm クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー、オランダ
画商としての活躍・失恋・宗教への傾倒
ファン・ゴッホは1866年に国立高等市民学校に入学しますが、卒業まであと1年というところで自主的に退学してしまいました。その後、叔父の助けもあり画商グーピル商会の店員として働き始めます。弟、テオ(生涯に渡り、兄であるファン・ゴッホを支え続けました。)には書簡で「2年間は割と面白くなかったが、最後の年はとても楽しかった」と伝えています。しかし、宿屋の娘への大失恋(娘ではなく、他の人物だったという諸説もあり。)で重いうつ状態になり、最終的にはグーピル商会をクビになってしまいます。ファン・ゴッホは元々興味があったキリスト教を更に学び、聖職者になりたいと奮闘しますがこれも失敗に終わってしまいます。実家に戻っても、家族からは働かないものとして冷たい眼差しを受け、またも女性関係でも揉めてしまいます。その間も絵だけは描き続けました。
ゴッホ 「タンギー爺さん」 1887-88 92 x 75 cm ロダン美術館 パリ
ゴーギャンとの運命的な出会い、変化する画風
オランダのデン・ハーグやハーン地方、ベルギーのアントウェルペンを転々とし、生活苦にあえぎながらも自身の作風を見出したファン・ゴッホ。1886年パリでポール・ゴーギャンやジョルジュ・スーラ、ポール・シャニックに出会い交流を深めることで、静物画や貧しい農民といったおとなしめの作風から、これでもか、とまでにキャンバスに自身の感情を荒々しい筆致で現し、内面の情熱を鮮烈な色使いに託した作品へと変化します。
ゴーギャンもファン・ゴッホ同様に貧しい暮らしを強いられていました。彼らは同居することで貧困を解消しようとします。しかし、我の強い画家同士。激しい喧嘩が絶えず、遂に激高したファン・ゴッホは衝動的に左耳を切り落とす行為に及んでしまいます。
ゴッホ 「アルルのゴッホの部屋」 1888 72 X 90 cm アムステルダム、ファン・ゴッホ国立美術館
ゴッホ 「耳を切った自画像」 1889 60 x 49 cm 、ロンドン、コートールド美術研究所
うつ病の悪化、疾患からくる妄想、遂に自死へ…
ファン・ゴッホは精神病院へ入院しますが、うつはもう回復の見込みがないほどに重症化していました。アルコール中毒にも陥り、妄想に悩まされるようになってしまいます。1890年7月27日、遂に拳銃で自殺をはかり、その2日後に永眠。わずか37年という生涯でした。(自死については、他殺という説もあり。)
家族との軋轢、理解者の不足…。確かに彼の人生は悲しい出来事が多かったようです。彼の生きることへの渇望や、飢餓的なまでの愛情を欲する気持ちが数々の名作を残し、美術に貢献したのだから皮肉です。
病と闘いながらも自然や貧しい農民を愛する心を持っていた優しいファン・ゴッホ。私達に出来ることといえば、彼の作品を愛し、彼を忘れぬことでしょう。
ゴッホ 「星月夜」 1889 73 x 92 cm 、ニューヨーク近代美術館
ゴッホ 「種まく人」 1888、 64×80.5cm オッテルロー、クレラー・ミュラー美術館
今後も引き続き、さまざまなアーティストの知識をお届けしたいと思います!
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