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フランスの多様な伝統工芸の過去・現在・未来をつなぐ『フランス人間国宝展』

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2017年10月27日

フランスの多様な伝統工芸の過去・現在・未来をつなぐ『フランス人間国宝展』


 

フランスの多様な伝統工芸の過去・現在・未来をつなぐ『フランス人間国宝展』

 

 

東京国立博物館の表慶館は大正天皇のご成婚を記念して計画され、1909年に開館した日本初の本格的なエメラルドグリーンのドーム屋根が特徴的な美術館です。そんな伝統ある表慶館で、現在『フランス人間国宝展』が開催されています。
本展はメートル・ダールの称号を持つ作家を中心に、伝統を継承しつつ革新的に芸術的工芸の世界を牽引する作家15名の作品、約230件を観ることができます。
”メートル・ダール”(Maître d’Art)とは、1994年にフランスで誕生した日本の重要無形文化財保持者認定にならってフランス文化省が策定した、フランス伝統工芸の最高技能者に与えられる称号のこと。
それでは、早速『フランス人間国宝展』で私が気になった作品をいくつかご紹介します!

 

 

表慶館のエントランスには4つのスクリーンが設置され、作家15名の制作風景が映し出されています。映像は最後の楽しみにとっておいて…。一足先に第一展示室へと向かいます。

 

オススメ 第1展示室:陶器/ジャン・ジレル

 

『フランス人間国宝展』は作品のジャンルごとに展開されており、第一展示室には陶器が展示されています。
ジャン・ジレルさんは2000年にメートル・ダール認定を受け、国内外の博物館で作品が所蔵されるなど、国際的に活躍している陶芸家です。とにかく、大胆な展示方法に驚かされました。101件の茶碗が展示室中央にダイナミックに配置され、広がる光景はまるで小宇宙のよう。幻想的な展示風景は実際に行ってからのお楽しみ!ということであえて引きの写真は載せません!(笑)

 

 

 

 

壁際には水彩で描かれたような繊細な色使いが特徴の作品が展開されています。この風景画のような模様が釜の熱によって生み出されたのだからビックリ!

 


オススメ 第3展示室:壁紙/フランソワ=グザヴィエ・リシャール

 

作家のフランソワ=グザヴィエ・リシャールさんは舞台美術家として活躍した後、手彫り木版による壁紙と出会い、この道に進むことを決意しました。国内外の歴史的建造物の壁紙を手がける一方、各時代の技術を再発見し、道具や技術の再発明に勤め、常に新たな可能性を探求しています。今年の春、4ヵ月間、京都のヴィラ九条山で創作活動をしていたリシャールさん。この展覧会では和紙を用いた壁紙を見ることができます。

 

 

この展示室に来たら少しの間、周囲を観察して下さい。照明が少しずつ変化して、その効果で壁紙の見え方が違って見えます。『フランス人間国宝展』ではキュレーターの他に、空間と照明のデザイナーがそれぞれ一人ずつ付いており、作品の魅せ方を追及しているので、そちらも念頭に入れておくとより本展を楽しめると思います!

 

オススメ 第4展示室:傘/ミシェル・ウルトー

 

 

 

ここでは傘デザイナーのミシェル・ウルトーさんの作品が12点、展示してあります。まるで傘が感情を持ち、嬉しそうに跳ねたり飛んだりしているかのよう。世界の王族から指名を受ける程、抜きでた実力を持つミシェルさんは、子供の頃から傘を分解するほど、傘に魅入られていたそうです。彼の作る傘は上品で洗練され、映画や舞台にも使用されています。

 

オススメ 第4展示室:扇/シルヴァン・ル・グエン

 

同じく第4展示室では25件の扇も見ることができます。作家のシルヴァン・ル・グエンさんは、8歳の頃から扇に興味を持ち、豊かな創造性を隠し持った小さな芸術品の制作を独学で(!)学んだそうです。彼は常に新しい素材を試し、伝統的なものから現代的で革新的なものまで遊び心ある作品を追求・制作しています。

 

 

日本の折り紙に着想を得たというポップアップの作品は、広げると繊細な花や複雑な立体装飾が現れます。

 

 

作品群を見た後は「どうやって作ってるの!?」と疑問を抱くに違いありません。そんな方は冒頭で触れた、エントランスのソファーに座って映像を観賞して下さい。制作方法が理解できると共に、作家たちの情熱と技術に触れられます。

フランスの匠たちが魅せられた美しい伝統と現代、未来の可能性を 『フランス人間国宝展』で是非、体感して下さい!

 

 

 

文:鈴木 萌夏
写真:丸山 順一郎

 

 

『フランス人間国宝展』

会場:東京国立博物館 表慶館

住所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9

期間:開催中〜11月26日(日)

時間:9:30~17:00 金曜、土曜、11月2日(木)は21:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日

展覧会公式サイト:http://www.fr-treasures.jp/

お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 

 

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