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これからのアーティストに会おう!パリ、アートフェアで現代のアーティストに突撃インタビュー

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2017年4月3日


これからのアーティストに会おう!パリ、アートフェアで現代のアーティストに突撃インタビュー


これからのアーティストに会おう!パリ、アートフェアで現代のアーティストに突撃インタビュー

 

 

 

現代アートフェア、「art 3f-salon international d’art contemporain」が1月末に3日間、パリで開催されました。

 

このアートフェアはリヨン、ボルドー、カンヌ、ナントなどフランス7都市の他、ドイツのマルハウス、ベルギーのブリュッセル、スイスのローザンヌ、ルクセンブルグでも開催される国際的な催しです。2015年には15万人の来場者が訪れ、1100の出店者が6500作品を販売したそうです。(公式ホームページのデータ)

 

 

 

 

 

ギャラリストやアーティストと直接話ができ、購入もできるこの機会。東京アートフェアのフランス版と考えていただくと、イメージしやすいかもしれません。

 

 

パリ会場は、Parc de l’exposition。日本の幕張メッセ、東京ビックサイトのような大きな貸し出し型の展示会場でした。200以上のギャラリーが、フランス、ベルギー、ドイツから集まっており、会場は熱気に溢れていました。

 

 

 


 

今回は、「現代らしい」、「何か惹きつけるものがある!」と感じた、5名のアーティストの作品を紹介させていただきます。

 

 

 

1 Jean Carlosの描く、セラピー的な絵画

 

Jean Carlos Puerto(ジャン・カルロス・プエルト)氏はスペイン人とイタリア人の両親を持つ、スペイン・ムルシアで活動するアーティスト。心理学を専攻し、10年間は心に傷を負った子どもをケアする仕事に従事しており、4年前から知人の勧めもあって絵を本格的に描き始めました。既に、数々のスペイン国立の絵画コンクールでも優勝・入賞しています。

 

 

彼の作品で気になったのは、水中でうずくまったり、顔を手で覆う男性を描いた水彩画。どのシーンでも男性はヌード姿で、顔は見えないように描かれています。静かで、ただ、ひたすら美しい青い空間に佇む男性たちは、どこか悩んでいるような、悲しんでいるような雰囲気。「なぜ男性のヌードを描くの?」とカルロス氏に尋ねたところ、「男性像でも、内面の弱さを感じさせる作品があってもいいと思ったんだ」との答えが返ってきました。美術史上、憂いを含んだ女性の肖像は多くとも、男性像はなかなか見られません。

 

 


Hombre Pez (魚男)のシリーズ ©Jean Carlos Puerto

 

大きな油彩画作品では、現代社会への風刺のような作品も。女性の自信満々のセルフィー顔と、鏡の中の怯えた、自信のない表情のコントラストがとても上手いです。さすが心理学に長けているカルロス氏。

 

 


Selfie (セルフィー)©Jean Carlos Puerto

 

「僕は精神科医だから、自分が描く絵が、悩んでいる人たちへの治療にもなればいいと考えている」と、笑顔で語っていました。今回、インタビューしたアーティストの中でも一番若く、Instagramも使いこなして作品をアピールする彼。新世代の注目画家です。

 

 


©Jean Carlos Puerto

 Jean Carlos Puerto ホームページ http://jeancarlospuerto.com

 

 

 

2 Andréの描く、宇宙的な世界

 

 

目の覚めるようなヴィヴィットな色彩の溢れる空間に、グラフィカルなモチーフがキャンバスの上で呼吸をしているようなAndré Bielen氏の絵画。

 

 

「常に視覚的なショックを与える」というギャラリーによる解説は、まさにその通り。
強烈だけれど、不思議とずっと眺めていたくなる心地よさがある画面。

 

 

彼は抽象的な風景画の次世代。内面の奥底に隠れた感情、意識や超越的な直感の神秘を、成熟した油彩のテクニックで描き出します。
「アンドレのアートは、旺盛で、ギャロップのようで、轟く音のようだ。情熱の炎のようで、深紅の土のようだ。オーロラに突然現れた怪我をした鳥の翼のようだ。」(ギャラリーの解説より)

 

LE-BAIN-DES-NAIADES (ナーイアスの水浴)©André Bielen

 

この作品を見ていると、水の中に入ってしまったような気分に。タイトルのナーイアスは泉や川に住むギリシャ神話上の妖精で、その水を飲むと不老不死の効能があるといいます。ラファエル前派の画家は、擬人化された妖精をメインに描いていますが、アンドレ氏の作品では妖精たちはどこかに行ってしまい、彼女たちが戯れていたであろう水中の空間が描かれています。実際に海に潜り、水面に射す光を見ているような、そんな浮遊感を感じさせる画面です。岩肌のような、魚の鱗のような、海藻のような、もしくはステンドグラスの欠片のようなモチーフは多義的で、アンドレ氏特有の世界に誘われた鑑賞者と共に、水中に漂っています。

 

幼少期もお絵描きが大好きで、20歳の頃から本格的に油彩画を描き始めたというアンドレさん。
ストリートアートも思わせるような作品からは、まだ若い画家を想像していましたが、ベルギー生まれの60歳の男性。
描かれているモチーフについて聞くと、「特に具体的なものではなく、想像の形」とのこと。フランスの都市の中でも、スペインにほど近い、地中海沿いのカネのアトリエで普段制作をしているそうです。

 

「パリではこの色は描けない。光が異なるから。マティスだって、南仏の光を求めてニースに住んでいたし、自然光はとっても大事なんだよ!冬のパリの空はグレーで、パリジャンが落ち込んだ気分になるのもわかるね!」と。

 

¥ULTIMES CHIMÈRES(最後の夢想) の前で ©André Bielen

 

 

日本でも一度、表彰されたことがあるという彼。来日したことはまだないそう。作品の前でツーショットまで撮ってくれた気さくなアンドレ氏。近々、彼のダイナミックな作品を日本で見ることができたらいいなと思います。

 

André Bielenのホームページ http://www.bielen.fr

 

 

 

3 Lisaの描く、儚く漂うモデルたち

 

 

Lisa Renberg(リサ・レンバーグ)氏は、実際のヌードモデルを前にデッサンし、その一瞬の動きを捕らえます。
水彩のインクで描かれる彼女の裸体のデッサンは、垂れ流したインクの表現によって、特有の浮遊感、みずみずしさが表れています。

 

 

「私のデッサンは存在の儚さ、落下、自己、私たちから逃げるもの、私たちを追いかけるもの、について問いかけています。」

 

 

ガラスのパネルにデッサンを入れた作品は、屏風のようで、カットされたモデルの肖像が空間に浮いているように見えます。

 

©LisaRenberg

 

 

パリの高等美術学校を卒業してから、しばらくはグラフィックデザイナーや講師として勤め、5年前に「生きたモデルを前にデッサンすることへの最初の情熱」を思い出し、芸術家としての活動を再スタートさせました。現在は、南仏にアトリエを構え制作を行っています。

 

 

以前の展覧会では、これらの作品を裏表に描き、天井から糸で吊るしたインスタレーションを発表しました。シリーズのタイトルは”Nus en suspension”(「吊り下げられた裸体」)。風に揺れることで、リサ氏が表現する「儚い一瞬の動き」がより強調されています。
昨年は、コンテンポラリーダンスのダンサーが踊っているところを、ライブペインティングするというイベントも行いました。どちらもホームページからご覧いただけます。

 

 

芸術活動の傍ら、デッサンのレッスンを行ったり、若いアーティストとの交流も欠かさない彼女の活躍が楽しみです。寡黙な方ですが、優しい微笑みが印象的でした。
なんと、下記のホームページでは、写真を送って彼女に肖像デッサンを注文することもできます。海外発送対応だそうですよ!

 

©LisaRenberg

Lisa Renbergのホームページ http://lisa-renberg.format.com

 

 

 

4 Gaspardが採集した世界各国の思い出

 

 

Gaspard(ギャスパール)氏は、フランスの美術学校で伝統的な教育を受けた後に、少しずつ、デッサンに重きを置かない芸術へと近づいていき、1992年には抽象表現、”Matériography” (直訳すると、原料法)へと辿りついたそうです。
「画面や彫刻の形状や表面に、豊かな表現が抑え付けられている」、つまりは、架空の存在の中に現実を表現する、自然の原料をできるだけ、自然の形に近いように見せることを追求しています。

 

 

使用している素材は、砂、鉄、ガラスで、ギャスパール氏が最終したものを、キャンバスの上に固めて制作しています。表面の線は、特に決められたものではなく手の動きに任せています。特に、素材の「規格」、「厚み」、「光」にはこだわっていて、「素材を、心揺すぶるものへと変化させたい、光は素材の本質を解き明かし、活き活きとさせる力をもたらす」と語っています。

 

 

実際に私が気になった作品は、こちら。(上段の中央)

 

©Gaspard

 

 

これは、モンサンミッシェル、モロッコ、カリブ海の島で採集した砂で制作した作品。私たちは、どこかに行った時に、お土産物を購入したり、写真を撮ったりして思い出とすることができるけれど、その土地そのものの自然を持ち帰ることは到底不可能です。ギャスパール氏の作品は、私たち自身と、その土地の記憶を素材をもって繋げるという面白みがあります。

 

タイトルの横にQRコードがついており、スマートフォンをかざすと、素材を収集した土地の地図が出てくるようになっています。

 

 

最新作は、ガラスの粒を使用したもの。こちらは自然から採集した素材ではありませんが、絵画と彫刻の間をいくような立体的な作品でした。子どもたちに「雪みたい!」と大人気だったそうです。素材を、できるだけ自然に、自然に感じるように表現する点が、どことなく日本人の感性に合う作品だと感じました。

 

Ligne de Verre sur Blanc (白の上のガラスの線) ©Gaspard

Gaspardのホームページ http://www.art-gaspard.com/fr/

 

 

 

5 Balthazarが永遠化した写真

 

 

Balthazar(バルタザール)は、リヨンの美術学校で学び、陶器の絵付けの作品を制作していましたが、2010年より自分で撮影した写真のコラージュをキャンバスに貼り、アクリル絵の具でペイントした作品で、芸術家として再始動しました。

 

 

つやのあるマティエールや、明るい黄色やブルーの色遣いは、太陽の光のまぶしさを思わせます。

 

作品には、フランス語で言葉も彫るように書かれています。それは、彼女自身の過去の思い出だそうです。彼女の個人の記憶、彼女の目の前に、その場所にいた人々の記憶を想像の風景のように描きます。

 

左 Merveilles(感嘆)右 Optimum(最適) ©Balthazar

 

現実と想像、一瞬と、過ぎ去った過去、逃げて行った過去、ノスタルジー、不確かさをコンセプトとしています。そのためか、初めて作品を見た人にとっても、デジャヴ(初めて見るけれど、以前にも見たことがあるように感じる感覚)を引き起こします。

 

 

こちらの作品は、なんと「Esprit Komorebi」(木漏れ日のエスプリ)というタイトル。日本語の、この言葉によって表現される感覚からインスピレーションを得て制作したそうです。私が日本人だと知ると、真っ先に紹介してくれました。

 

Esprit Komorebi(木漏れ日のエスプリ)©Balthazar

 

彼女の作品は、写真という固有の現実を捉えた表象に、彼女の世界観を絵筆で加えることで、多くの人の記憶のどこかにある、過去へのノスタルジーへ導く表現へと昇華させているところに面白みを感じました。

 

初日に見かけた小さめのサイズのキャンバスは、なんともリーズナブルな価格設定で二日目には売り切れていました。明るい画面に、発色の綺麗な彼女の作品は、フランス人好み。バカンス用の別荘に飾る人も多いそうです。

 

©Balthazar

Balthazarのホームページ http://www.balthazar.odexpo.com

 

 

 

 

来場者とアーティストが熱く談義を交わしたり、時にシャンパンを片手に笑いあう姿も多く目撃しました。また、それぞれオリジナリティのある名刺や、パンフレットを用意していて来場者に配っていました。
小さな子ども連れの方もよく見かけ、子どもたちが自由にお絵描きできるスペースもありました。

 

 

 

普段、フランスで美術館には行き慣れていましたが、今回アートフェアに初めて訪問し、アーティストと直接に話すことで、創作への理解が深まり、興味がより沸きました。作品を気に入れば購入もできるので、刺激的な機会です。アーティストたちの今後の活躍も楽しみに会場を後にしました。

 

 

 

 

取材、写真、翻訳、文 Ryoco Foujii

参照・各アーティストホームページ、art 3f-salon international d’art contemporain公式ページ



Writer

Foujii Ryoco

Foujii Ryoco - Foujii Ryoco  -

生まれも育ちも東京。初めて歩いたのはフランスのアヴィニョンの橋。

海外に親戚の多い家系で育つ中で、日本美術に魅了され、 学習院大学文学部哲学科にて、浮世絵、ジャポニスムを研究、学芸員資格を取得。 その後、百貨店にてファッションアドバイザー、マネージャーを経験するも、 芸術の国・フランス留学への道が諦められず渡仏。
レンヌ第2大学大学院にて美術史を専攻、博物館でのインターン、ワークショップの参加、各地方の美術館、ギャラリー訪問、アーティストとの交流を通し、 芸術が日常生活に溶け込んでいる環境に感銘を受ける。

絵画のある空間は、芸術家たちが、私が私自身の心と向き合わせてくれる、大切な場所。 美術館や博物館は、未来のために存在する、なくてはならない場所、温故知新のための場所。

2016年9月よりパリへ。日仏の架け橋になることを目指し、日々精進。 狂乱の時代のパリで成功を収めた画家、藤田嗣治に憧れている。

blog: ryocofoujii.blogspot.jp
instagram: coco.r.f






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