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圧倒的な規模で日本現代美術を体感「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」

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2024年8月21日

圧倒的な規模で日本現代美術を体感「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」


圧倒的な規模で日本現代美術を体感「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」

タイトル画像:展示風景1
左:小谷元彦《サーフ・エンジェル(仮設のモニュメント2)》2022
右:鴻池朋子《皮緞帳》2015-2016

 

 

日本の現代美術の最重要コレクター・高橋龍太郎氏。その3500点を超える世界最大級のコレクションから、なんと239点の作品と、東京都現代美術館から3点の所蔵作品、総勢115組の作家を一堂に会した展覧会「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」が東京都現代美術館で開催中だ。一人のコレクターの視点から、圧倒的な規模で日本の現代美術を体感できる、またとない機会となっている。

 

 

日本現代美術を概観

本展の最大の魅力は、高橋氏が日本の戦後に生まれ、コレクションを本格化させる1990年代半ば以降の作品を中心に、非常に多様な日本の現代美術が東京都現代美術館のキュレーションによって展示されている点だ。時代、ジャンル共に幅広い作品群に、日本の現代美術がどのように時代を捉え、変化してきたかを知ることができる。

これは、高橋氏の目を通した日本の現代美術の定点観測と言えるだろう。

あなたのお気に入りの作家や作品と同じ時代に、他の作家はどのような作品を作っていただろうか?

あなたの想い出のあの頃には、どんな作品が作られていただろうか?

時代と共に多岐にわたって展開してきた日本の現代美術の流れを体感できる。

 

 

重要作家の貴重な作品群

展示風景より 草間彌生作品 © YAYOI KUSAMA ※画像転載禁止

 

コレクションには、草間彌生、村上隆、会田誠、奈良美智、名和晃平といった、日本の現代美術を代表するアーティストの作品が多数含まれている。特に、若かりし頃の高橋氏に多大な影響を与え、後にコレクターとなるきっかけともなった草間彌生作品だけで1つの展示室を埋め尽くすほどの充実ぶり。

また、村上隆や会田誠らの初期作品も多く展示されており、日本の現代美術史におけるキーパーソンたちの重要な作品を一度に見ることができる。

 


展示風景より 村上隆作品

 

 

時代を反映した作家の視点

展示風景4
左:涌井智仁《夢の隙間》2023
右:Chim↑Pom《May, 2020, Tokyo(へいらっしゃい)―青写真を描く―》2020

 

90年代半ばから継続的に作品を増やし続けている高橋コレクションは、当時から今に至るまでの日本社会の変遷を映し出すものとなっている。

バブル崩壊後の平成不況や阪神淡路大震災、オウム真理教事件、東日本大震災、新型コロナウイルスといった、日本社会が直面した危機や不安に対して、作家はどのように反応し、作品に表してきたのだろうか。作品を通して、日本がたどってきた困難な時代の道のりを振り返り、その中でアートだからこそできることは何か、私たちはアートから何を学べるのか、考えるきっかけになるだろう。

 

 

日本の現代美術の未来へ

展示風景5
右:大山エンリコイサム《FFIGURATI #162》2017

 

 

高橋コレクションは、日本を代表するようなビッグネームの作家だけでなく、90年代生まれ以降の作家も含め、これからの時代を担っていく若手の作品も数多く収蔵している。例えば、水戸部七絵、川内理香子、ob、BIEN、友沢こたお、名もなき実昌といった新進気鋭の作家たちだ。

先述した村上隆、会田誠、奈良美智など今では世界的に著名な作家たちも、高橋コレクションに加わった当時は若手作家だった。ここに展示されている今の若手作家たちの中からも、世界に羽ばたいていく者が出てくるだろう。躍動する若手作家の作品から、日本美術、ひいては日本の未来を想像できるのも高橋コレクションの醍醐味である。

 

 

美術館で展示する意味

展示風景6

 

実は、高橋氏のコレクションが本格化した時期と東京都現代美術館が開館したのはほぼ同時期。担当学芸員の藪前知子氏の言葉を借りれば、互いのコレクションは「双子のような関係」なのだ。

だからこそ、高橋龍太郎コレクションを展示することで、「東京都現代美術館のコレクションに、一つ違う視点を加えられるのではないか」と藪前氏は言う。驚きの規模と、新たな視点から日本現代美術を体感できる本展を、是非現地で存分に体感してみて欲しい。

 

 

ARTalk的見どころ

コレクター気分を楽しもう!

注目すべきは、一人のコレクターがここにある膨大な数の作品を集めたということだ。

あなたは普段作品を購入するだろうか?もし購入したことがなかったとしても、ここにある作品に何かしらの共通点を見出したり、好きな作品を見つけたり、もし自分だったらこんなコレクションにしてみたい……などと想像を膨らませてみるとまた違った楽しみ方ができそうだ。

 

コレクションの意味ってなんだろう?

高橋氏は「芸術というのは所有できない、蹴鞠(けまり)のようなもの」だと言う。

つまり、作品はずっと誰かの元にあり続けるものではなく、鞠が次の人に渡されるかのように、次の所有者へと受け継がれていくもの、ということだ。コレクションは、そんな作品が散逸したり失われたりすることを防ぎ、次世代へと受け継いでいく役割を果たしているのだと、高橋龍太郎コレクションは教えてくれる。

過去から未来へと受け継がれていく作品たちの尊い今を体感し、未来に思いを馳せてみるのはいかがだろうか。

 


展示風景7
中央:西尾康之《Crash セイラ・マス》2005

 

 

文=山下港

写真=新井まる

 

 

【展覧会概要】

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F、ホワイエ

会期:2024年8月3日(土)~ 11月10日(日)

開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

*8月9日、16日、23日、30日の金曜日は21:00まで開館

休館日:月曜日(8/12、9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、8/13、9/17、9/24、10/15、11/5

観覧料:一般2,100円(1,680円)/ 大学生・専門学校生・65 歳以上1,350円(1,080円)/ 中高生840円(670円)/小学生以下無料

※(  ) 内は20名様以上の団体料金

※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。

※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。

※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。

※ 毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)

※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。

 

[サマーナイトミュージアム2024]

8月9日・16日・23日・30日の金曜日は17:00以降のご入場で、観覧料が2割引、学生は無料です。(要証明)

[学生無料デー Supported by Bloomberg]

9月7日(土)・ 8日(日)の2日間、中高生・専門学校生・大学生は無料です。(チケットカウンターで学生証を提示)

 

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

特別協力:高橋龍太郎コレクション

協力:医療法人社団こころの会

 

展覧会サイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TRC/