ぶち抜かれた壁を抜けると…?!遊び心満載なNAZEの世界
グラフィティカルチャーをベースに、プリミティブな感情を刺激する作品を制作するアーティスト、NAZE。六本木・ANB Tokyoにて個展「URAGAESHI NO KURIKAESHI」が開催中です。
アーティスト本人が展示会場の壁に直接描いたスプレーアートと展示作品が融合してできた、カラフルでユーモラスな空間。
入口近くにはスケートボードのデッキがぶら下がっています。
ローマ字で大きく「FUTARI MADE」と書かれたこの壁をくぐると…
その内側はドローイングや立体が集められた小部屋になっています。小部屋のなか隅々までいっぱいに置かれた作品は、鑑賞者を飽きさせません。
自由でのびのびとした筆致、ドキッとさせられるローマ字のメッセージ、複雑に蠢く人間の心のような作風など、不気味さとポップさが共存するキッチュな世界が魅力的です。
「WASURETA KOTO WO WASURENAIDE」
「MIENAKUTEMO SUGUSOKONIARU MONO」
会場で度々目に留まるローマ字で表記されたメッセージたち。思わず一文字ずつ心のなかでじっくり読み上げてしまいますが、実はそれこそがNAZEさんの狙いだそう。
「日本語だとスラっと読み易すぎるのですが、ローマ字にすると1音1音、言霊として頭の中にゆっくり入ってくれる。そういうのって大事なんじゃないかなと思ってローマ字で書いてますね。」
会場内に展示されていたのホワイトボードに書かれた本人直筆のメッセージ、「表裏一体は球体だから一体!!」がとても印象的です。
表裏一体とは文字通り、相反するものごとが実は同体で切り離すことができないことを意味します。
「ニュースなどを見ていると、最近はものごとの裏側を暴こうとする傾向があって、その、“裏返していく”という行為を繰り返していく、という印象を受けることが多い。でも実際は、見えている面と見えない面の間には、グラデーションが存在する。極端なオモテとウラではなく、球体として捉えて、グラデーションの存在を大事にしたいと最近は考えています。」
と語るNAZEさん。
アーティストの顔と、1人の人間としての顔。個展では、その両者にまたがるグラデーションにも着目し、1つの球としてNAZEさんの世界を堪能してみるのも面白いかもしれません。
– エピローグ –
ぐるぐるまわる毎日と時間の中。
眠りに着く直前の、夢と現実の間で見たイメージを描き起こした時に、NAZEじゃない自分が描きたいものがある気がした。
次の日、目が覚めてドローイングを見る。良くない、良くないけどいい。
完成の想像が出来る、面白くないけど良い感じ。まるで独り言みたいだ。
と、NAZEが思った。
—–
表の虚像と裏の真実、取り巻くメディアの表と裏、外に居る自分と内に居る自分、NAZEと僕(自分)。
表裏は必ずしも背中合わせじゃない、球体の明るい部分と暗い部分のように物事が面で繋がっている気がする。
真実が虚偽に変わるとき、その間には過程(影のグラデーション)があって完全に区別できるものではないだろう。
善意が悪意に傾くことだってある。
例えば、人の欲とか愛とか心の揺らぎとか。
自分にできるのは身近な人の心を360°、色んな方向から見たいと願うこと。
目にはみえない丸い何かを包み込んで全て受け入れること。
—–
何を描きたいんだろうと考え続けている。
色んなことがマルで説明出来そうな気もする。表裏一体は球体だから一体。
こんなことを考えながら、毎日を繰り返して今日も目が覚めたんだ。(個展公式サイトより抜粋)
なお、ANB Tokyoでは他にも、スクリプカリウ落合安奈、小林健太の計3人の個展が同時にお楽しみいただけます。そちらもお見逃しなく。
文=荒幡温子
写真=新井まる
【プロフィール】
NAZE
1989年茨城県生まれ。グラフィティカルチャーをベースに、触覚的な筆致で描かれるドローイング、スプレーやコラージュを用いたペインティングや、廃棄物を使ったオブジェ、テキスタイルワークなどの作品を制作。Contact Gonzoとしても活動する。近年の主な個展に「KOREKARA NO KOTO」 DERI(大阪、2021)、「KOREMADE TO KOREKARA 」ANGRA GALLERY(東京、2021)、グループ展に「Slow Culture」京都市立芸術大学ギャラリーKCUA(京都、2021)、「minus tempo」PoL gallery(大阪、2020)などがある。Art Fair Tokyo 2021(東京)、ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021(京都)に作品出品。
【展覧会情報】
NAZE個展「URAGAESHI NO KURIKAESHI」
■会期:2021年9月15日(水)- 6月20日(日)
■休館日:月・火曜日(祝日の場合は開館)
■開館時間:12:00~18:00
■会場:ANB Tokyo(港区六本木5丁目2-4 )*六本木駅から徒歩3分
■観覧料:一般/1000円 大学生/500円(全フロア共通チケット)/中・高校生 入場無料 ※価格は全て税込 ※学生は受付にて学生証要提示
■オンライン事前予約制 https://reserva.be/anbtokyo