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時間・国境を超えて繋がる スクリプカリウ落合安奈 写真家の母・落合由利子と初のコラボ展

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2021年9月29日

時間・国境を超えて繋がる スクリプカリウ落合安奈 写真家の母・落合由利子と初のコラボ展


時間・国境を超えて繋がる スクリプカリウ落合安奈

写真家の母・落合由利子と初のコラボ展

 

国内外各地で土着の祭事や民間信仰などの文化人類学的なフィールドワークを重ね、「見えないつながり」を、作品で視覚化してきたスクリプカリウ落合安奈。現在六本木・ANB Tokyoにて個展「わたしの旅のはじまりは、 あなたの旅のはじまり」が開催中です。

フィールドワークを通して見出した「土地と人との結びつき」を、様々なメディアで表現してきた安奈さんですが、今回は自身初となる写真作品を中心とした展覧会。そして、その写真は彼女のルーツの1つであるルーマニアに焦点を当てたものとなります。

 

 

さらに、である写真家・落合由利子さんとの共同展示ということで、入口には親子で会場のレイアウトを決める手の様子が、2人の対話の字幕とともに映像作品として投影されています。

 

 

母・由利子さんの、旅人ではなく生活をして内側から写真を撮りたいという写真家としての発露はやがて、娘のいのちへと繋がっていきます。会場を歩いていると、鑑賞者である私たちもその歴史の流れをじっくりと味わうことができます。

 

 

安奈さんを出産される前の90年代前半、ルーマニアのとある村で生活をしながら写真を撮り続けていたという由利子さん。山の中で自給自足で暮らす彼らの表情には、たくましさと温かさが共存し、土のにおいがここまで伝わってくるかような生活の息吹を感じます。

 

 

そして現在。何度も訪れた自分のルーツで集めてきたルーマニアならではの品々と、コロナ前に三度自分の意思で訪れた際の写真。これらが並置されることで、両者を繋げる時間の糸を感じることができるでしょう。

 

本来であれば、1年間ルーマニアに滞在予定だったという安奈さん。四季を通しての滞在では、今まで自分を自分たらしめていたアイデンティティも作品制作への向き合い方も間違いなくガラリと変化するだろうという予から、生まれ変わる前の状態で一度個展を開き、自分を見つめ直す機会にしたかったと語っていました。

 

この個展は、安奈さんにとっても、自分のルーツを見つめ直し、記録するアーカイブでもあります。

 

 

訪れたらきっと、個展の表題のように自分の旅のはじまる音が聞こえてくるのではないでしょうか。

 

文=荒幡温子

写真=新井まる

 

 

【プロフィール】

スクリプカリウ落合安奈(AnaScripcariu-Ochiai)

2016年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業(首席・美術学部総代)。現在同大学院博士後期課程在籍。日本とルーマニアの二つの母国に根を下ろす方法の模索をきっかけに、「土地と人の結びつき」という一貫したテーマのもと絵画、写真、映像、インスタレーションなどさまざまな素材・手法を扱う。近年の主な個展に「journey」AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA(東京、2021)、アーティスト・プロジェクト#2.05「Blessing beyond the borders -越境する祝福-」埼玉県立近代美術館(埼玉、2020)、「Imagine opposite shore-対岸を想う」銀座 蔦屋書店・GINZA SIX(東京、2020)など。グループ展に、「ENCOUNTERS」ANB Tokyo(東京、2020)、「Y.A.C. RESULTS 2020」National Museum Contemporary Art 国立現代美術館 (ルーマニア、2020)「Bridge」ホイアン(ベトナム、2019)、都美セレクショングループ展2019「星座を想像するように-過去、現在、未来」東京都美術館(東京、2019)などがある。2020年 Forbes 30 UNDER 30受賞。

 

落合由利子(Yuriko Ochiai)

1986年日本大学芸術学部写真学科卒。私家版写真集「WINDOW’S WISPER」にて日本大学芸術学部賞受賞。人物ドキュメントを中心に仕事を展開。写真展に「日本国ルーマニア人物語」、「働くこと育てること、そして今」他。著書(写真・文)に『絹ばあちゃんと90年の旅―幻の旧満州に生きて』(講談社)、『働くこと育てること』(草土文化)。共著に『ときをためる暮らし』(自然食通信社/文藝春秋)『ふたりからひとり』(自然食通信社)、『若者から若者への手紙1945←2015」(ころから)他。

 

 

【展覧会情報】

スクリプカリウ落合安奈個展「わたしの旅のはじまりは、 あなたの旅のはじまり」

■会期:2021年9月15日(水)- 6月20日(日)

■休館日:月・火曜日(祝日の場合は開館)

■開館時間:12:00~18:00

■会場:ANB Tokyo(港区六本木5丁目2-4 )*六本木駅から徒歩3分

■観覧料:一般/1000円 大学生/500円(全フロア共通チケット)/中・高校生 入場無料 ※価格は全て税込 ※学生は受付にて学生証要提示

■オンライン事前予約制 https://reserva.be/anbtokyo

 

■アーティスト・トーク(オンライン配信)

配信日時:9月25日(土) 18:30〜予定

参加作家:スクリプカリウ落合安奈、NAZE、小林健太

モデレーター:山峰潤也(一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表/ANB Tokyoディレクター)

※本イベントは視聴無料です。

※配信URLは後日ANB Tokyo公式サイトにて公開いたします。