街が伸びる・歪む・飛び出す!小林健太の創る「東京」の世界
「ダンヒル」とのコラボや「ルイ・ヴィトン」のキャンペーンイメージを手掛けるなど、独特のブラシストロークで写真作品で世界を魅了するアーティスト、小林健太。〜10月3日まで、六本木・ANB Tokyoにて個展「#smudge」が開催中です。
会場は、壁一面に交錯する光線と、3次元の物体としての光線が織りなすドラマティックな世界。
画面のなかに独特な線を生み出すのは、展覧会タイトルにもなっているPhotoshopの指先ツール「smudge」。東京の光が、彼の作品では一つの絵具となって写真の中を自由に動き回ります。抽象的なグラフィックの中にどこか見覚えのある景色が覗く、そんな違和感が心地いい作品が目白押しです。
まず、目を引くのはドンッと壁一面にわたるこちらの作品。
オーストラリアはメルボルンの地下鉄前に設置された壁画作品と同じものだそう。メルボルンに突如現れた東京の街。そう思うとこの歪みも、なんだかSFのようなロマンを感じます。
そしてこの黄色いうねうね。とある東京の風景写真からsmudgeツールで描いたものを立体化した作品ですが、どこの風景かわかるでしょうか。
正解は、渋谷のドン・キホーテです。あの黄色はドンキの光だとわかると、また違って見えてきます。
他にもいくつか展示されている立体オブジェは今年の新作。重いスチール素材でできており、看板職人とロールベンダーで折り曲げて制作するのだそう。色合いは全て平面の作品から抽出しています。
主に都市の夜景をメインのモチーフとして扱ってきましたが、最近は自然をモチーフにした写真に指先ツールで描くことにも挑戦しているそうです。
こちらは焚き火の映像から制作された動画作品。空間が歪められたことで、自然界では見られないような独特のリズムを刻んでいます。
指先ツールに始まり、常に写真表現を拡張してきた彼のさらなる挑戦を是非会場でお楽しみください。
なお、ANB Tokyoでは他にも、スクリプカリウ落合安奈、NAZEの計3人の個展が同時開催中。そちらもお見逃しなく。
文=荒幡温子
写真=新井まる
【プロフィール】
小林健太(Kenta Cobayashi)
1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動。主な個展に「Live in Fluctuations」Little Big Man
Gallery(ロサンゼルス、2020年)、「The Magician’s Nephew」rin art association(高崎、2019年)、「自動車昆虫論/美とはなにか」G/P gallery(東京、2017年)、主なグループ展に、「ハロー・ワールドポスト・ヒューマン時代に向けて」水戸芸術館(茨城、2018)、「GIVE ME YESTERDAY」プラダ財団 Osservatorio(イタリア、2016年)など。2019年には、マーク・ウェストン率いるdunhillの2020春夏コレクションとのコラボレーション、またヴァージル・アブロー率いるLouis Vuitton、メンズ2019秋冬コレクションのキャンペーンイメージを手がける。主なコレクションに、サンフランシスコアジア美術館(アメリカ)などがある。2016年に写真集『Everything_1』、2020年に『Everything_2』がNewfaveより発行。
【展覧会情報】
小林健太 個展「#smudge」
■会期:2021年9月15日(水)- 10月3日(日)
■休館日:月・火曜日(祝日の場合は開館)
■開館時間:12:00~18:00
■会場:ANB Tokyo(港区六本木5丁目2-4 )*六本木駅から徒歩3分
■観覧料:一般/1000円 大学生/500円(全フロア共通チケット)/中・高校生 入場無料 ※価格は全て税込 ※学生は受付にて学生証要提示
■オンライン事前予約制 https://reserva.be/anbtokyo
■アーティスト・トーク(オンライン配信)
配信日時:9月25日(土) 18:30〜予定
参加作家:スクリプカリウ落合安奈、NAZE、小林健太
モデレーター:山峰潤也(一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表/ANB Tokyoディレクター)
※本イベントは視聴無料です。
※配信URLは後日ANB Tokyo公式サイトにて公開いたします。