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アーティスト達から、ドラえもんへのラブレター「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」

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2017年12月13日

アーティスト達から、ドラえもんへのラブレター「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」


アーティスト達から、ドラえもんへのラブレター「THE ドラえもん展 TOKYO 2017

 

 

ドラえもんがもし、この世にいたら…。今まで本気で考えたことがある人も多いのではないだろうか?

 

「ロボット」が登場する作品は、今まで数多く生み出されている。

「アトム」のような優等生キャラクターのもの、「ガンダム」のように操縦するタイプのもの…。

 

ドラえもんはどうだろう。

完璧ではないし、ちょっとどんくさかったり、たまにズルをしたりもする。

なんだか”人間臭い”のだ。恐らくドラえもんを単なる「ロボット」と捉ている人は少ないだろう。

 

ドラえもんが、藤子・F・不二雄氏の手によって生み出されてから早48年。

時代が変わっても、世代や性別、時には国籍を超えて誰からも愛される人気者である。

そんなドラえもんに今を時めく現代アーティストたちがラブコールを送る展覧会が始まっている。

六本木ヒルズ内にある森アーツセンターギャラリーで開催中の「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」だ。

 

1.日本を代表するアーティストが改めて向き合った「ドラえもん」

 

一部は「あなたのドラえもんをつくってください。」という問いかけに対し、日本を代表する現代アーティスト28組が、改めてドラえもんを見つめ、それぞれの解釈で再構築している。

 

 

 

 

村上隆氏、奈良美智氏という世界中のアートファンが”日本人アーティスト”と聞いて一番に浮かぶ大御所を始め、写真やアニメーション、日本画と様々なジャンルを牽引しているアーティストの作品が集結。

 

中でも気になった作品を二つ紹介したい。

 

一作品目は鴻池朋子氏の『しずかちゃんの洞窟(へや)』。

 

 

 

鴻池氏は近年、皮に絵を描く作品を手掛けている。その理由を以下のように語る。

 

「キャンパスや白い画用紙は、絵を描くのにすごく便利。でも、ある日興味がなくなったんです。手が喜んでいなかった。(中略)皮に絵を描いてみたら、ふかふかとしていて、しわも寄るし日焼けもするし、こちらの思うようにいかない。そこに傷をつけてえぐっているような感覚が面白かったのと、こちらがコントロールできない、変化する素材とやり取りするなかで、ものをつくる実感が湧いてきた。」(HILS LIFEより引用)

 

皮をつなぎ合わせて描いた作品が天井から壁にかかり、洞窟の中を探検していたところに、しずかちゃんが描かれた壁画を発見したような感覚に陥る。

その迫力を目前にすると、迷いのない溌剌とした線や全体的に丸みを帯びたフォルムに心惹かれるだろう。これは、鴻池氏がドラえもんに対して抱く思いに通ずる。

 

「ドラえもんの一番の魅力は「線」と「かたち」なんだと思いました。(中略)物語やひみつ道具というよりは、藤子先生のはつらつとした線やかたちに生命力があって、そこに惹かれたのと、あのドラえもんの丸々としたかたち、それが世界を救っている感じがしました。」(THE ドラえもん展 図録)

 

 

ドラえもんの中で印象に残ったセリフをコラージュして紙のドレスを作り上げたのは、森村泰昌氏×コイケジュンコ氏のコラボレーション作品だ。

遠くから見ても作品の大胆さに圧倒されるが、近づいてセリフを見ても楽しい。

ドラえもんは元々、二次元の漫画からスタートし、時に毒気を持った奥深いセリフがあることを改めて思い出す。

 

 

画家の山口晃氏による短編漫画風作品も必見だ。

 

 

 

 

2.次世代の現代アーティストは「ドラえもん」と育ってきた

 

一部のアーティストたちは世代的にドラえもんを”少し下の世代の子たちが熱狂していた”というイメージが多かったようだ。一方、二部のアーティストたちは”物心ついたころにはもうドラえもんは人気者だった”と振り返る。

 

二部ではこれからの現代アート界を担う12組のアーティストに、過去37作品ある”映画ドラえもんシリーズ”から一つのタイトルを選び作品を制作することを依頼。映画ドラえもんシリーズは、テレビの短編アニメと異なり神話や歴史をヒントに壮大な冒険が繰り広げられる。

 

二部で特に見入ってしまったのは、後藤映則さんの『超時空間』だ。是非、生で見て、空間に入り込んで欲しいのでここではあえて説明しないとしよう。

 

今年の流行語大賞になった”インスタ映え”。ほぼ全ての鑑賞者に撮影され”インスタ映え”していたのは増田セバスチャン氏の『さいごのウエポン』だ。

 

 

 

きゃりーぱみゅぱみゅ氏のPV美術で一躍有名になり、”Kawaiiの伝術師”との呼び声も高い増田氏が作ドラえもんは、一見すると「カラフルでカワイイ!」。思わず写真を撮りたくなるのも納得である。

しかし、作品をしばらく見ていると、違和感を覚えるだろう。砂埃をかぶり、機能が停止しているようにのびきった舌からは、ドラえもんの溌剌(はつらつ)とした印象を感じられない。『のび太のドラビアンナイト』に着想を得て”取り残されて、時が経って発見された”という設定なのだ。

 

増田氏の作品だけではなく、本展では多くの作品が写真撮影OKなこともあり、既に多くの投稿がSNSに載せられている。

 

視点、得意な技法、年齢の異なる様々なアーティストが、同じ”ドラえもん”というキャラクターを描いている本展覧会。

「自分の心のドラえもん」に近い作品を撮影してみるのも面白いかも知れない。

 

日本を代表するアイドル「ドラえもん」。大人になった今だからこそ、もっともっと好きになれるはずだ。

 

 

 

ちなみに会期中、隣接するカフェ「THE SUN」ではなんと8種類もの「ドラえもん」をイメージしたメニューが登場!行列必須だが、是非ご賞味あれ。

 

 

文: 山口 智子

写真:丸山 順一郎

 

【詳細】

THE ドラえもん展 TOKYO 2017

開催期間:2017年11月1日(水)〜2018年1月8日(月・祝) ※会期中無休

場所:森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)

住所:東京都港区六本木6-10-1

 

■参加アーティスト

蜷川実花、福田美蘭、村上隆、森村泰昌(コイケジュンコと共同制作)、会田誠、梅佳代、小谷元彦、鴻池朋子、佐藤雅晴、しりあがり寿、西尾康之、町田久美、Mr.、山口晃、渡邊希、クワクボリョウタ、後藤映則、近藤智美、坂本友由、シシヤマザキ、篠原愛、中里勇太、中塚翠涛、山口英紀+伊藤航、山本竜基、れなれな、奈良美智、増田セバスチャン

 

【問い合わせ先】

ハローダイヤル

TEL:03-5777-8600 (8:00〜22:00)

 

 

【森アーツセンターギャラリーの展示の過去の記事はこちら♪】

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Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?

幼いころから書道・生け花を始めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

現在、外資系IT企業に勤めながらもアートとの接点は持ち続けたいと考えています。

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走り続けています。

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