現在、六本木の21_21 DESING SIGHTでは”動き”の仕組みを理解し、
ものづくりの楽しさに触れられる『動きカガク展』が開催されています。
アートとデザインの境界線を横断する様々な作品を紹介してくださるのは
クリエイティブディレクターの菱川勢一さん。
企業CMや大河ドラマなどのオープニング映像などで国内外から注目を集めているアーティストです。
ー 「つくることを決してブラックボックスにしてはなりません。」 ー
ものをつくるということは一人の仕事ではなく、いろんな人がチームとして参加することで流れ出し、
ひとつの大きな”動き”だということを認識してほしい。という菱川さんのメッセージにもあるように…
展示は作品を鑑賞するだけでなくどのように作られているか、どのような仕組みになっているかを模索できるように、
工作室をイメージしたクリップボードには、使用材料、製作工程、菱川さんのメモなど…
未来のデザイナーやアーティストを志す者にとっては大変貴重な情報がオープンにされています。
それでは、展示されている日本初公開となる、海外メディアアーティストや新進気鋭の作家による、
多彩な”動く”作品をピックアップして紹介しましょう!
◎『ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン (レプリカ) 』
こちらは1階ブースに展示されているメルセデスベンツのパテンドカー (レプリカ) です。
今や自動車技術の原点となった4サイクルエンジンを搭載しており、
そちらをアニメーションで分かりやすく解説してくれています。
制作から130周年を迎えた世界で初めてのガソリン車…
会期中には近代社会を象徴する”動き”を実際に体験出来る試乗会も催されたそうです。
◎『ロスト♯13』
こちらはクワクボリョウタさんが手がけた、鉄道模型、LED、日用雑貨を用いた
光と影のインスタレーション作品です。
暗い部屋の中を走る鉄道模型の先頭には小さなLED照明が点灯しており、
線路に従って様々な日用雑貨が配置された室内をゆっくりと移動します。
それに伴って影が室内の壁や天井に投影されて、光源の動きから映像として動きだします。
それはまるでロードムービーが上映されているかのように、列車の動きによって日用品からは想像もつかない風景が、
目の前を静かに移り変わっていきます。
ものの”動き”が会場の情景を変え、観ている人の心も動かす。そんな素敵な作品です。
◎『統治の丘』
こちらは佐藤雅彦さんと桐山孝司さんによるアートユニット『ユークリッド』による体験型作品です。
黒い絨毯を歩いて円形の台に立つとセンサーがはたらき、白い円錐の先が一斉に自分の方を向いてくれます。
自分が指をさした方向にも素直に従い、指示通りに向いてくれる動きは、まさに王様(自分)と民衆(円錐)です。
しかし、一定の時間が経つとその指示も聞かなくなり、自分の影響力が失われた瞬間も体験することから、
全能感と喪失感を味わうことのできる不思議な作品でした。
◎『メトログラム3D』
私たちが日々暮らしの中で利用する電車。
こちらは東京の電車、地下鉄のデータをもとに、その運行状況を可視化した作品です。
時刻表通りに動く各路線の電車を、カラフルな光と点で表現しているので、
幻想的な路線の動きを楽しむことができます。
それはまるで東京という大きな体に巡る毛細血管のようにでした。
◎『森のゾートロープ』
◎『ストロボの雨をあるく』
本展会期と同時期に、六本木の各美術館で開催されている展覧会の内容を読み解くと…
アニメやマンガにフォーカスを当てられていることがわかります。
森をモチーフにした回転する白いオブジェを、付属のスリットが入った回る虫眼鏡でのぞくと、
森の中のアニメーションが動き出す『森のゾートロープ』。
ストロボライトの中で傘をくるくる回すと、絵柄が動きだして動画が楽しめる『ストロボの雨をあるく』。
パンタグラフによる『森のゾートロープ』と『ストロボの雨をあるく』は、
そんなアニメーションの仕組みが理解できる体験型作品です。
ショップにもこちらの作品をモチーフにした可愛い商品がいくつか販売されていました。
◎『水玉であそぶ』
私たちにとって身近な存在である水。
光源のついた布越しから、そこに溜まった水を指で突いたり押し上げたりすると、
まるで生き物のように分離したり合体しながら、様々な変化を見せてくれる楽しい作品です。
◎『アトムズ』
作品を眺めていると幼少期にふきあげ玉のおもちゃで遊んだ記憶が思い起こされました。
(パイプの形をした、”あれ”です!)
“気体の流速が上がると圧力が下がる”というベルヌーイの定理を表現しています。
不思議な空気の動き方をインスタレーションを用いて分かりやすく説明してくれています。
ボールはパイプが斜めになっても重力に負けずに浮遊していました。
◎『セミセンスレス・ドローイング・モジュールズ #2』(SDM2)-レターズ
壁に沿って左右に往き来する複数のモジュールが、吊り下げたペンを上下させながら文字を書いていきます。
観客がノートに文字を書くと、文字の形象を人工知能が学習し、
その文字の形状を機械が壁に書いていくというインスタレーション作品です。
人工知能はデータベースが貯まればたまるほど学習し、開催期間中にどんどん成長していくので、
線画の最終形態が誰にも予測できません。
機械なのに非常にユニークな動きを見せるので、まるで想像性を有しているかのようでした。
その他にも数々の展示作品に魅せられ、気づくと私は童心に帰っていました…
“動き”がもたらす表現力に触れ、その仕組みを理解し、体験することで、ものづくりの楽しさを感じられる本展。
子どもだけではなく大人も一緒になって楽しめる一方で、ただ「面白い」だけで終わらないように!
作品からインスピレーションを受けたら、直ぐにでもものづくりがはじめられるように!
工作に関する書籍も多数閲覧できるようになっていたり、何度でも足を運びたくなる工夫がされています。
会期中にはワークショップなどのイベントなども多数予定されているので参加してみるのもオススメです。
きっと、ものづくりの楽しさや喜びに直接触れられる貴重な経験ができることでしょう。
【情報】
企画展『動きカガク展』
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:2015年6月19日(金)- 9月27日(日)
休館日:火曜日(9月22日は開館)
閉館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
*15名以上は各料金から200円割引
*障害者手帳をお持ちの方と、その付き添いの方1名は無料
その他各種割引についてはご利用案内をご覧ください
【関連プログラム】
「動く!ワークショップ」
開催日:2015年8月8日(土)
時間:14:00-15:30
場所:21_21 DESIGN SIGHT
講師:パンタグラフ
参加費:1,000円(ただし別途、当日の入場券が必要です)
「機械の素ワークショップ」
開催日:2015年8月9日(日)
時間:14:00-16:00
場所:21_21 DESIGN SIGHT
講師:桐山孝司
参加費:1,000円(ただし別途、当日の入場券が必要です)
「プロジェクト・モーション ワークショップ」
開催日:2015年9月12日(土)
場所:21_21 DESIGN SIGHT
講師:鹿野 護(WOW)、東北工業大学
・上記プログラムは、特に記載のない限り参加費無料です。(要当日の入場券)
・この他にも会期中はさまざまなプログラムを開催します。参加方法・詳細は決定次第本ページにてお知らせします。
文 / 新 麻記子 写真 / 荒田 仁史