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写真で社会とつながる『ミュルーズ写真ビエンナーレ』

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2018年7月7日


写真で社会とつながる『ミュルーズ写真ビエンナーレ』


 

写真で社会とつながる『ミュルーズ写真ビエンナーレ』

 

 

フランス東部のドイツとスイスとの国境に近いフランス東部の町、ミュルーズ(Mulhouse)で、2018年6月2日から9月2日の期間、今年で3回目を迎える『ミュルーズ写真ビエンナーレ(Biennale de la photographie de Mulhouse)』が開催されます。

 

このビエンナーレは、国境を超えたフォトフェスティバルです。公共スペースでの展示は、フランスの5つの市町村と、ドイツ・フライブルクの街の12の展示会場によって形成されています。

 

今回のテーマは「Attraction(s)」。「アトラクション、ショー、遊戯、娯楽。引力。(人を引きつける)名物、名所、呼び物」という意味を持ちます。

 

 

 

ミュルーズってどんなところ?

 

 

 


ミュルーズの中心部にあるサン・テチエンヌ寺院。

 

 

 

 


街は絵本の中に迷い込んだと錯覚するような、可愛らしい雰囲気。

 

 

 

本記事では、ビエンナーレで企画された展覧会を紹介していきます。

 

 

 

①「POINT CARDINAL」展

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュルーズ駅の近くには、2枚組の写真で構成されたインスタレーションがあります。2017年から2018年の間に、フランスのランス、メッス、ナンシー、ストラスブールとミュルーズにある美術大学の学生らが、「アトラクション」の概念を考察、制作しました。アトラクションの概念を映画監督で知られるセルゲイ・エイゼンシュテインの様式と同様、地球の深刻さの宿命を指すと学生らは結論しています。

 

 

 

②「45 DEGRÉS」展

 

 

 

 

 

 

ミュルーズの聖ヨハネ教会では、遊び心あるインスタレーションが企画されています。バートランド・キャバリア(Bertrand Cavalier)、ファビアン・シルベスター・スーゾー(Fabien Sylvestre Suzor)、マサオ・マースカーロー(Massao Mascaro)による、3名のアーティストによる共同作品です。

 

 

 

 

 

 

社会の中でのステータスや知覚、画像の反射を主題にしたインスタレーションには、訪れた人々の偏見を、再解釈させるための仕掛けがあります。45度の角度で設置された作品は、私たちが普段スマートフォンの画面を見る角度のようです。

 

 

 

 

 

 

アーティストたちは、自身や第三者を含めた1000枚以上に及ぶスマートフォンの中に眠っている写真をセレクトしました。写真を通した「自己表現価値」を作る今のセルフィーの時代を批評するようでした。

 

バートランド・キャバリアは「この展示では、写真の撮影者が誰かが重要でではない」と語りました。

 

 

 

 

 

 

教会の外で、写真家が作品をプレゼンテーションしたり、写真を通したコミュニケーションを大切にしている姿が目に留まります。日本と比較すると、作家と、鑑賞者の距離感が近いと感じました。

 

 

 

③「AND ALL THAT IS LEFT ARE FRAGMENTS WHICH HAUNT YOU LIKE HALF-FORGOTTEN DREAMS」展

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーマス・ハウザー(Thomas Hauser)は、19世紀の工業用建物の内で展示を行っています。建物で起こった過去の出来事を反映して作成されたインスタレーションで注目されていました。

 

 

 

 

 

 

写真家はアーカイブの概念を解体し、画像を劣化と抽象化のプロセスにかけることで、イメージに定着された物語の識別を遠ざけようとしています。

 

石やコンクリート、鏡、ガラスなどの上に写真が無造作に重なるように展示されています。もし写真が造形に結びつくなら、彼の作品は彫刻とも呼べるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

④「ZONE」展

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ZONE展はロシア出身の映画監督アンドレイ・タルコフスキー(Andrei Tarkovski)の映画『ストーカー(Stalker)』から始まります。 映画内では1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故と同時期に発生した「ゾーン(Zone)」と呼ばれる謎の立入禁止区域が登場します。「ゾーン(Zone)」は危険な場所ですが、人々の関心を集める場所でもあります。

 

 

 

 

 

 

タルコフスキーの映像美学により影響を与えられた不可視を書き換える探求は、ミシェル・マッツォーニー(Michel Mazzoni) エスター・ヴォンブロン(Ester Vonplon)に引き継がれています。彼らは、光の力や形を探したいという欲求により、撮影された写真の点在を私たちに展観します。

 

この展示には、小原一真さんが参加しています。小原さんはチェルノブイリ原発事故に関するシリーズ「Exposure 2015-2016」を発表しました。

 

 

 

 

 

 

展示のオープニングでは、作家から作品への思いや説明を聞くことができました。

 

 

 

 

 

 

ビエンナーレは、野外での展示も積極的に行っていました。現地の人も写真を通したメッセージに引かれ、足を止めていました。

 

 

 

 

 

 

 

オープニングパーティーでは、フランス北部の名物菓子「クグロフ」が振舞われました。

 

 

 

 

 

 

今後の発展が期待される『ミュルーズ写真ビエンナーレ』。「Attraction(s)」というテーマの通り、写真を通して過去の出来事と対峙しながら、今までと異なったビジョンで歴史について考えるきっかけになりました。撮影された場所と展示された場所の関係性や、写真を通して日常を観察し可視化できる写真の持つ媒体としての特性を改めて感じます。次回の開催が、今から楽しみです。

 

 

 

写真・文 : 矢内美春

 

 

 

【開催概要】
Biennale de la Photographie de Mulhouse
会期: 6月2日〜9月2日
会場: Mulhouse, Hombourg, Chalampé, Hégenheim, Freiburg
ホームページ(仏語): http://www.biennale-photo-mulhouse.com/2018/

 

 

 

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Writer

矢内 美春

矢内 美春 -  Miharu Yanai  -

東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、渡仏。レンヌ美術学校(École européenne supérieure d’art de Bretagne)のアート科に編入し、写真・絵画・陶芸を用いて作品制作をする。同校にてDNAP(フランス国家造形芸術免状)を取得後は、IESA(Institut d’Études Supérieures des Arts)でアートマネージメントを学ぶ。東京(Misa Shin Gallery)やパリ(Galerie Taménaga)の画廊、アートフェア(ASIA NOW/パリフォト)で研修を受ける。

ガールズアートークを通して、アートに触れた時に感じる、恋するような気持ちをみなさんとシェアしていきたいです。






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