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作品持ち帰りOK!な話題の展示「Take Me (I’m Yours)」がミラノで開催

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2018年1月22日

作品持ち帰りOK!な話題の展示「Take Me (I’m Yours)」がミラノで開催


 

作品持ち帰りOK!な話題の展示Take Me (I’m Yours)」がミラノで開催

 

 

 

 

 

超有名キュレーターHans Ulrich Obrist(ハンス・ウルリッヒ・オブリスト)と大御所アーティストChristian Boltanski(クリスチャン・ボルタンスキー )がキュレーションした展示「Take Me (I’m Yours)」がミラノのPirelli HangarBicoccaで行われた。参加アーティストはその数、50組以上に及ぶ。

 

この展示の何が面白いか?ずばり「作品を持って帰れる」ことだろう。持って帰れるだけにとどまらず、作品を作ったり、触ったり、食べたり、インスタグラムに載せたり、会場で叫んだり、私物を置いていったりできるのである。

 

そう、通常の美術館ではNGなことがここでは可能なのだ。参加アーティストも著名人から若手まで勢揃い。来場者参加型の展示なので、会場はちょっとしたお祭り状態だった。

 

 

 

Christian Boltanski
「Dispersion, 1991-2017」/Used clothing, bags/Courtesy Christian Boltanski

本企画の顔とも言える作品。参加者は古着を自由に持ち帰ることができる。使い方は自分次第。山積みにされた衣類も徐々に姿を消していく…。筆者が訪れた時は実際に服を持ち帰っている人々は少なかった。

 

 

 

この展覧会は入場無料だが、実際に作品を持ち帰るためにはクリスチャン・ボルタンスキーがデザインした紙袋(10ユーロ)購入が必要だ。紙袋は、ミラノのメトロホームに何気なく置いてもインスタ映えする!

 

 

 

でも、正直どうだろう?この展示に関して私達はもう「斬新!新しい!」という気持ちにはならないかも知れない。 それもそのはず、この展示は1995年に既に行われているのだ。

 

1995年に二人は初めて同展示のコンセプトを企画し、ロンドンのthe Serpentine Galleryで実際に展示を行った。元々のこのプロジェクトのコンセプトはボルタンスキーによる「Quai de la Gare (1991)」から始まった。「Quai de la Gare」はボルタンスキーが集めた古着を来場者が“Dispersion”(分散)とプリントされたバックに詰めて持ち帰れるというものだった。

 

もちろん、1995年にはエッジの効いた展示だったに違いないだろうが、20年の時がもたらす変化は大きいもので、その後こうしたインタラクティブな展示は多く行われてきた。

 

今ではこうしたコンセプトはどちらかと言うとキッチュに感じるの方が多いのではないだろうか?

 

 

 

Jonathan Horowitz
「Free Store」/ 2009-2017/Jonathan Horowitz

来場者同士が物々交換ができる作品。自分のものを置いていって、誰かが置いていったものを取っていく。参加者個人でマーケットの価値を決めていく。筆者が訪れた際に置いてあったのは、正直ゴミみたいなものばかり…。いや、これをゴミと見るかはその人それぞれというところが「肝心」なのだ。

 

 

 

Gilbert & George
「THE BANNERS」/ 2015/Gilbert & George and White Cube, London

展示されているスローガンをプリントした缶バッジを持ち帰ることができる。

 

 

 

Douglas GordonやFrancesco Vezzoli等のように直接的に人と繋がる作品が多く展示されている。Pierre Huygheの 「Name Announcer」はスーツを着た男女が展示会場入り口で来場者の名前を大声で叫んだり、(無論、筆者も叫んでもらった)現場でしか感じれないリアルなやりとりが会場では繰り広げられている。

 

「TAKE」という行為を通して、展示という枠を超え、参加者それぞれの物語を紡いでいくのだ。

 

 

 

Douglas Gordon
「Take Me(I’m yours)」/2017

ダグラス・ゴードンとディナーができる権利がもらえるコンペティション!名前とアドレスを紙に書いて応募する。もちろん筆者も応募。ドキドキ…。

 

 

 

Francesco Vezzoli
「Take my Tears」 /2017

タイトル「Take my Tears」の通り、涙を流した似顔絵を描いてくれるコーナー。イタリア人のストリートアーティストが来場者の似顔絵を描いてくれる。

 

 

 

15年、Hans Ulrich Obrist 自身は「この展示はグローバルになるようにデザインされていて、訪れた人々によってその持ち帰られた作品は今後、世界中で見つけることができるだろう」と語っている。

 

グローバル化を「国境をなくして、世界をフラットにする」という意味で捉えるならば、作品の拡散はグローバル化の可視化とも言えるかも知れない。しかし、作品を通して人々のグローバル化を可視化する行為はインターネットが普及した現在、一見すると意味が無いようにも思える。

これこそが、彼らが投げかけているテーマ「グローバル化による均一化への疑問と懸念」だ。

 

実際にグローバル化による繋がりが深まっているように見えて、その繋がりはインターネットというフィルターが無いと感じれない、あくまで儚い繋がりに過ぎないことを私達は忘れがちだ。本展が見せてくれたリアルなグローバル化は現代の社会のバーチャルなグローバル化には無い大切なことを教えてくれる

 

 

 

Gustav Metzger
「Mass Media:Today and Yesterday」/1972/2017

山済みになった新聞の中から鑑賞者自身が好きな記事を切り抜き、“credit,” “extinction” and “our modern lifestyle”(おそらく意訳すると、信頼・消滅・新しいライフスタイル)のカテゴリーの中に記事を貼っていく。

 

 

 

Take Me (I’m Yours)」は、その年によって異なる意味をもたらす展示だと思う。今後、世界が変化していくに従い、このコンセプトがどのような意味を成すのか。また、アートが人々の手に渡り、どこまで繋がっていくか。何十年後にどのような形で人々の手によって価値がつけられ、ストーリーを持つのか。この先もずっと枝分かれし、更新されていく展覧会だ。

 

この展覧会を後にする時、なんだかとてもドキドキしていた。それはDouglas Gordonのディナーに当たるかもしれないとか、Francesco Vezzoliの似顔絵を描いてくれたアーティストとの会話が面白かったとか、それだけではない。自分が美術館に置いてきたものから、他の誰かによって新しい何かが生まれていくのかも知れないという可能性に胸が高鳴っていた。普段、鑑賞者として作品を一方的に見るだけでは決して生まれない感覚だ。

 

世の中はこんなにも面白い出来事がたくさんあって、結局は人間ほど面白いものはないということ。私達が動き出すことで新しい「何か」が生まれ、全ては自分次第なのだということを再認識させてくれた展示だった。

 

 

 

Take Me (I’m Yours)でTakeしてきたものたちの一部。

 

 

 

Take Me (I’m Yours)
期間:1 November 2017 – 14 January 2018
From an exhibition idea originally conceived by Hans Ulrich Obrist and Christian Boltanski in 1995. Curated by Christian Boltanski, Hans Ulrich Obrist, Chiara Parisi, Roberta Tenconi
Home: http://www.hangarbicocca.org/en/exhibition/take-me-im-yours/

 

 

 

テキスト・写真:たなお

 

 

 

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Writer

たなお

たなお - TANAKA NAOKO -

女子美術大学大学院在学中。
ドイツ留学中に出会った「日独伊親善図画」という1938年の児童画コンクールについて研究中。
学外ではライター、アートプロデュースアシスタントとして活動中。 

もし、良かったらだけど…インスタとかのURLとかも載せられるけど?