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60年後の未来を創造する! フランス現代アートフェアFIACにおけるコルベール委員会×東京藝大『2074、夢の世界』

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2017年11月6日

60年後の未来を創造する! フランス現代アートフェアFIACにおけるコルベール委員会×東京藝大『20


 

60年後の未来を創造する!
フランス現代アートフェアFIACにおけるコルベール委員会×東京藝大『2074、夢の世界』

 

 

毎秋、パリでは国際コンテンポラリーアートフェア「FIAC」がグランパレで開催されます。第44回目となる今年は、世界30カ国、193ギャラリーが参加しました。10月19日から22日の4日間、世界中から目の肥えたコレクターや現代アートのプロが、作品の買い付けに訪れます。同時期に、2015年からスタートしたアジアのギャラリーを集めたアートフェア ASIA NOW(アジアナウ)やART ÉLYSÉES(アートエリゼ)といったフェアも開催され、パリが芸術の街へと変貌します。

 

GirlsArtalk編集部では、2017年6月に東京藝術大学美術館B2Fで開催された『2074、夢の世界』の取材とインタビューを行っています。『2074、夢の世界』審査会で選ばれた3名の優秀者の作品がFIACで展示されたので、早速取材をしてきました。

 

 

 

 

 

グランパレは、1900年のパリ万国博覧会のために建てられ、1年に約2億人も訪れる大規模な展示会場です。現状として、主にパリ、ロンドン、ニューヨークの都市に拠点を構えるギャラリーが多く、まだまだ日本、中国、韓国などアジアのギャラリーの参入は目立ちません。そうした状況の中、若く有望な日本人アーティストを支援するコルベール委員会×東京藝大『2074、夢の世界』の約4年の歳月をかけた壮大なプロジェクトの集大成は、国際的な現代アートフェアの舞台で華やかに開花しました。

 

 

 

 

2074、夢の世界(Rêver 2074)』とは?

 

“60年後にそれぞれのクリエーションがどう発展しているか?”、展覧会タイトルにも掲げられている2074年に自己を投影させながら、クリエーションの軌跡とその先の未来に迫ってみるプロジェクトです(2014年からこのプロジェクトが始動したため、その60年後の2074年に設定されています)。60年後の「ユートピア」の世界を具体的に表現する方法として、SF小説家による物語と一人の言語学者による新語が生まれました。コルベール委員会ジャパンは、未来のアーティストを支援するべく、東京藝術大学美術学部の協力を受け、学生を対象に、このユートピア世界を視覚化するコンペティションを開催しました。

 

 

 

 

オープニング式典では、日比野克彦さん(現代美術館/東京藝術大学美術学部長)とギヨーム・ドゥ・セーヌさん(コルベール委員会チェアマン)がテープカットを行いました。

 

 

Pierre Morel © Comité Colbert

 

選ばれた3名のアーティストも顔を揃えました。一列目左から島田 清夏さん、北林 加奈子さん、川人 綾さんです。

 

 

Pierre Morel © Comité Colbert

 

 

 

 

川人 綾さん「織り合い」

モチーフにした作品:サマンサ・ベイリー「ファセット」

木製パネルにアクリル絵具、シルクスクリーン

 

川人さんは1988年奈良に生まれ、京都で育ちました。京都で日本の伝統的な染織を学んだ後、パリ国立高等美術学校(l’école des beaux-arts de Paris)での交換留学を経て、東京藝術大学大学院先端芸術表現科を修了しました。

 

作品タイトルについて
川人さん「『ファセット』を読み、私は人々が異なるものを直面した時、調和を探すことが妥協することよりも重要だと考えるようになった。それは異なる種類の糸で1枚の布を織るようだ。この考えを、伝統とテクノロジーという異なる種類の糸で織られた布のような私の絵画のタイトルに組み入れた。」

 

 

 

 

北林 加奈子さん 「肌」

モチーフにした作品:サマンサ・ベイリー「ファセット」

陶土、磁土、糸、羊毛、木など

 

北林さんは、1990年東京都生まれ。現在、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻に在籍中です。

作品タイトル「肌」にあるように、私たちの感覚器官を表す皮膚膜を、焼き物、糸や木などの異素材を組み合わせて、立体作品を制作されました。

 

作品について

北林さん「自分と外界との壁、境界を形作っている皮膚の上で行われる、小さな交信の一つ一つ、感触の一つ一つは、何より信憑性があり、確かなものだと思う。私はそこに、目に見えないものへの、信仰とも言えるような、尊さを感じている。」

 

 

 

 

島田 清夏さん「Voice of the Void : 4600000000

モチーフにした作品:ジャン=クロード・ドゥニャック「霧のダイヤモンド」

ガラス、ベルチェ素子、冷却ファン、隕石、LED、PC、モニター、カメラ

 

島田 清夏さんは、日本大学藝術学部映画学科卒業後、現在、東京藝術大学大学院美術研究科在籍中です。映像やインスタレーションを中心に作品を発表されています。在学中に花火の持つエネルギーに魅了され、卒業後は花火師として活動されています。

 

作品について

島田さん「46億年の無言の声を聴く・・・鉱物から出る微量の放射線と空中に飛ぶ宇宙船をキャッチし、その値の変化に応じて、LEDライトによってモールス信号のように言葉に変換し、鉱物の発する声を聴く。

『霧のダイヤモンド』で描かれた「人の人生」、「昔の記憶」、「未来に受け継がれていく思い」といった「人間の中心の時間」を、「鉱物の時間」へ還元したい。」

 

 

 

3名のアーティストの作品は、世界中からパリに集まった目の肥えた人々の目に止まり、展示されている空間は、多くの人々で賑わっていました。かけがえのないチャンスと、4日間で得た経験は、アーティストたちにとって、大きな原動力となり、次の階段へと導いていくでしょう。

 

 

 

 

Girls Artalk編集部は、夏から秋にかけて東京からパリへと追いかけてきた『2074、夢の世界』を通して、フランスの若手アーティストへの支援の多様さや、フランスの※リュクスがイマジネーションしたユートピアと日本の若いアーティストたちが想像したクリエーションの間に対話が実現したことの喜びを深く感じました。

※「リュクス」は、豪華や上品、優雅といった意味を持つ言葉。コルベール委員会は、「リュクス」とは経済的な豊かさを表すだけでなく、人々の生活に精神的、文化的な豊かさをもたらすものとして位置づけている。

 

 

 

 

文・写真 :矢内 美春

写真提供:コルベール委員会(Comité Colbert)

 

 

【開催概要】

2074、夢の世界』

ホームページ:http://www.rever2074.jp/

FIAC – Foire Internationale d’Art Contemporain – Paris

会期:2017年10月19日〜22日

会場:Grand Palais

ホームページ:http://www.fiac.com/en/ (英文)

 

 

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Writer

矢内 美春

矢内 美春 -  Miharu Yanai  -

東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、渡仏。レンヌ美術学校(École européenne supérieure d’art de Bretagne)のアート科に編入し、写真・絵画・陶芸を用いて作品制作をする。同校にてDNAP(フランス国家造形芸術免状)を取得後は、IESA(Institut d’Études Supérieures des Arts)でアートマネージメントを学ぶ。東京(Misa Shin Gallery)やパリ(Galerie Taménaga)の画廊、アートフェア(ASIA NOW/パリフォト)で研修を受ける。

ガールズアートークを通して、アートに触れた時に感じる、恋するような気持ちをみなさんとシェアしていきたいです。