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写真が物語る、日本の過去と現在「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」

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2017年7月5日


写真が物語る、日本の過去と現在「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」


写真が物語る、日本の過去と現在「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」

 

 

荒木経惟さんは昨年、東洋美術専門の美術館としてヨーロッパ最大規模を誇る、パリのフランス国立ギメ東洋美術館で大規模個展「ARAKI」を開催。大きな話題を呼びました。荒木さんしか撮ることのできない妖艶な花々、緊縛ヌード、空景、東京の街…。70代後半を超えてなお精力的に作品を発表し続ける荒木さんがファインダー越しに見る世界は比類なき輝きを放ち、国内外問わず私たちを魅了し続けています。

 

 

 

 

そんな魅力溢れる荒木さんの写真を求めて今回、6月22日(木)から7月23日(日)までシャネル・ネクサス・ホールで開催している「東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」の取材を敢行しました。

 

【愛ある写真、濃密な被写体との関係性を撮ることができる写真家】は誰かと考えたとき。私はすぐに荒木さんを思い浮かべます。写真の表現の可能性を追求し続け、「いま」を切り取る荒木さんの写真からは、目に見えない圧倒的な生命力を感じます。

 

 

 

 

本展では、パリでの個展で荒木さんが50年間の作家活動を振り返るレトロスペクティブとともに発表した撮り下ろしの新作「東京墓情」を日本初公開。ギメ東洋美術館所蔵の写真コレクションより、荒木さん自身がセレクトした幕末・明治期の写真作品が併せて出展されます。

 

 

1、荒木経惟さんのカラー写真

 

 

 

 

 

 

 

 

2、荒木経惟さんの白黒写真

 

 

 

 

 

 

 

 

内覧会には荒木さんご本人も登場。

 

タイトルの由来について、「タイトルの東京墓情は、あるときから、東京は墓場になってきてると思っていたから。情ってつけたのは、やっぱり情の男だから。ヨーロッパもテロがあったりして、墓場なわけよ。」と語りました。

 

そして、「アタシの写真はおしゃべりだから、よく見てね。」と観覧者へメッセージを送り、写真について、「完璧じゃダメ。この先があると思わせなきゃ。」と写真に対する独自の姿勢を語りました。

 

 

 

 

 

 

今は亡き愛猫・チロちゃん、妻・陽子さんの写真は2枚が対になるよう展示されていました。ふっと荒木さんの言葉を思い出します。

 

 

 

 

「カメラをのぞくと、ファインダーの中が花園、楽園なんだよ。写真は撮った瞬間から別れが始まっていくんだから。」

 

また、主催でもあるシャネル株式会社のリシャール・コラス代表取締役社長は「2つの世界が合流し、観察し合い、評価し合う。不思議にどちらもロマンチックで、エキゾチックで、そしてどこまでも生き生きしている。昔からアラーキー先生の大ファンで、いつかネクサス・ホールで写真展をやりたかった。」と話していました。

 

その言葉通り、荒木さんの撮影された写真と19世紀に日本で撮影された過去の写真の空気が混ざり合い、互いの個性を引き出す画期的な展示方法でした。

 

 

 

 

3、ギメ美術館所蔵の写真

 

 

荒木さんの写真に共通する写真テーマ「人物」「都市の風景」「花」を中心に、ギメ側から60点選びました。そこからさらに荒木さんがセレクションしました。

 

 

作者不詳《手紙を読む少女たち》《花魁》鶏卵紙に手彩色 1870年代

 

 

小川一真《ボタン》鶏卵紙に手彩色 1880-90年代

 

 

作者不詳《東京、吉原》1890年代

 

 

ギメ美術館が所蔵する写真コレクションには幕末から明治・大正期に日本で撮影された貴重な作品が多数含まれますが、同コレクション所蔵の作品が東京で展示されるのは、本展がなんと初になります。

 

 

山茂堂《侍》鶏卵紙に手彩色 1870年代

 

 

ライムント フォン シュティルフリート《刺青をした別当》1877-80年代

 

 

ギメ美術館写真コレクション主任学芸員・ジェローム・ゲスキエールさんもこの日のために来日されました。

 

 

 

 

ジェローム・ゲスキエールさんは、「日本人でも継承される写真の存在が少ないと感じられました。問題点として、写真の修復、写真のアイデンティティーが挙げられます。写真の居所。これは写真が何を物語っているのか、誰が撮影したかについてです。日本での写真研究はここ30年ほどです。日本の写真発祥は1848年にオランダ人によって長崎県出島にもたらされたと言われています。スイス人のフェリーチェ・ベラートが日本の写真家を養成しました。ギメ美術館で荒木経惟さんの写真展を開催するプロジェクトは2015年から始動しました。荒木さんは我々のコレクションしている19世紀の古い日本で撮影された写真を、ある種自分のルーツとして捉えている印象を受けました。」と語られました。

 

今回の展覧会は、視線がクロスオーバーする体験ができます。

 

荒木経惟さんによって撮影された現代写真と19世紀に日本で撮影された古写真を通して、私たちは「歴史の中で残ってきたもの」と「捨てられてきたもの」、また「19世紀に扱われていたテーマ」と「現代に扱われているテーマ」を比較することができるでしょう。物事を見る視線がどのように「技術の進化」によって変貌したかも見どころです。

 

ぜひ、この機会に荒木さんの写真の世界、そしてギメ美術館の価値ある写真コレクションをシャネル・ネクサス・ホールでご堪能ください。

 

 

 

 

 

文:矢内美春
写真:矢内美春/丸山順一郎

 

 

【展覧会概要】
『東京墓情 荒木経惟×ギメ東洋美術館』
会期:2017年6月22日〈木〉―2017年7月23日〈日〉
時間:12:00―20:00
休館日:会期中無休
入場料:無料
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階
会場電話番号:03−3779−4001
会場URL:http://chanelnexushall.jp/
詳細URL:http://chanelnexushall.jp/program/2017/araki/
主催:シャネル株式会社
協力:ギメ美術館/タカ・イシイギャラリー

 

 

【荒木経惟さんに関する記事はこちら!】
夢想写真家の、碧い系譜 「写狂老人」の“Love on the left eye”

 

 

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Writer

矢内 美春

矢内 美春 -  Miharu Yanai  -

東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、渡仏。レンヌ美術学校(École européenne supérieure d’art de Bretagne)のアート科に編入し、写真・絵画・陶芸を用いて作品制作をする。同校にてDNAP(フランス国家造形芸術免状)を取得後は、IESA(Institut d’Études Supérieures des Arts)でアートマネージメントを学ぶ。東京(Misa Shin Gallery)やパリ(Galerie Taménaga)の画廊、アートフェア(ASIA NOW/パリフォト)で研修を受ける。

ガールズアートークを通して、アートに触れた時に感じる、恋するような気持ちをみなさんとシェアしていきたいです。






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