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生活都市さいたまで、アート鑑賞 【岩槻エリア・旧民俗文化センター】

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2016年10月16日


生活都市さいたまで、アート鑑賞 【岩槻エリア・旧民俗文化センター】


生活都市さいたまで、アート鑑賞
【岩槻エリア・旧民俗文化センター】

 

今年も待ちに待った芸術の秋がやってきた。全国各地では、「虹のキャラヴァンサライ あいちトリエンナーレ2016」(愛知県 会期:2016/08/11~10/23)に「瀬戸内芸術祭2016」(岡山県・香川県 会期秋:10/08~11/6)とアートイベントが目白押しだ。だけど、「行こうと思っていたらもうすぐ終わっちゃう」「ちょっと遠くて行けない」って方も中にはいるはず。

そんな方にオススメなのは、現在開催中の国際芸術祭「さいたまトリエンナーレ2016」(9/26~12/11)だ。都内からもアクセスしやすい埼玉が舞台の当芸術祭は大きく分けて、①与野本町駅~大宮駅周辺②武蔵浦和駅~中浦和駅周辺③岩槻駅周辺の3つのエリアで展示や映像作品を鑑賞することができる。

 また「さいたまトリエンナーレ2016」では、来場者が国内外34組のアーティストが発見する、多様で多彩な「さいたま」をテーマにしたアート作品を鑑賞できるだけでなく、市民による作品展示やパフォーマンスを披露するなど、共につくり参加していく芸術祭なのが特徴的だ。

今回は岩槻エリアでも14のアート作品が集まっている「旧民俗文化センター」を紹介していく。

 

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先ず、大宮駅から東武アーバンパークライン(東武野田)線に乗り換えて、5つ目の岩槻駅に下車。岩槻駅東口クレセントモールでは、さいたまトリエンナーレ2016 開催記念の「WATSU青空音楽祭」での演奏やさいたま市のゆるキャラ「つるゴン」がお出迎え。岩槻駅から旧民俗文化センターまで出ている無料のシャトルバスで会場の「旧民俗文化センター」へ。

 

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さてさてバスを降りると、「さいたまトリエンナーレ2016」の公式イメージキャラクター「さいたマムアン」がお出迎え。ウィスット・ポンニミット氏(通称:タムくん)の漫画に出てくるキャラクター「マムアンちゃん」(タイ語でマンゴーの意味)の「さいたまトリエンナーレ2016」バージョンだ。

 

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さらに、この旧民俗文化センターでは新作漫画作品の<<未来はプレゼント Future is a gift>>も展示中。取材したこの日は<<タムくん似顔絵ライブドローイング>>を開催していて、運良く私たちの似顔絵も描いてもらうことが出来た。

 

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大きなベニヤ板にマジックだけで、瞬時に来場者の顔の輪郭や髪形の特徴を捉えながら、たった数分で似顔絵を完成させるタムくん。また、素早く仕上げるながらも、一つの一つの似顔絵には靴やバックなど小物や描きこまれた丁寧さにも驚きだ。

 

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次に私たちを驚かせてくれるのは、中庭に敷き詰められた1000個もの枕たち。この<<無題(枕)>>はマテイ・アンドラッシュ・ヴォグリンチッチ氏の作品。今回のさいたまトリエンナーレ2016のテーマで「未来の発見!」から想起したこちらの作品は、枕の一つ一つから、そこに寝ていた人の痕跡を感じさせ未来を夢見る様子を想像させるようだ。あんなに沢山の枕を見ると「ダーーーイブ」と飛び込みたい衝動に駆られたが(ダメダメ作品なんだから)と言い聞かせて作品を後にした。

次に紹介するのは、展示室の至る所に犀(さい)が登場する<<犀の角がもう少し長ければ、歴史は変わっていただろう>>だ。

 

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展示室には巨大な犀の埴輪に、当展示の関連イベント「埴輪発掘キャラバン隊」を撮影したカメラマンさんの服にも犀がプリントされている。

 

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当展示を手掛けたのは美術家・埴輪研究家の川埜龍三氏。彼は、現在私達の存在する「さいたまA」と同時に存在している並行世界(=パラレルワールド)の「さいたまB」で発見された埴輪群や発掘現場を創作し、視覚化している。

今回のさいたまトリエンナーレでは、市民によって結成された「発掘キャラバン隊」によるさいたまBでの調査で出土した、造形物群埴輪群と復元された犀形埴輪が展示されている。

丸いフォルムとどこかユーモラスな表情を浮かべた埴輪たち。右の埴輪の名前は「犀引かない埴輪」と左は「犀引く埴輪」だそうで、(珍しいセット埴輪なのかもしれない)と考えずにはいられなかった。

ちなみに、作品名の意味は「さいたまA」の地中に眠る犀埴輪の角がほんの少し長くて地上(さいたまA)に飛び出していれば、きっと考古学者による「日本で犀埴輪を発見」が日本史の1ページに収められていただろう、という意味だそうだ。つまり、私達が住んでいる世界には絶対的なものは存在しないことと、むしろ些細なことでも世界は変化してしまう可能性について、同氏は私達にメッセージを投げかけている。

また、「さいたまA」で芸術家として活動する一方で、Bでは埴輪研究家の同氏。私は、ふとAとBをどうやって行き来しているのか気になりながら、展示室を出ると出口の真上に「さいたまB」の文字が描かれたヘッドランプが、突然「さいたまA」へと切り替わった!!

こうして考えると、実は今まで気づかなかっただけで、「さいたまA」の日常の風景にBへの入り口が開かれていたのかもしてないと思いながら、さらに廊下の奥へ。

次の展示室は、黒板に沢山の習字とまるで学校の教室のようだが、部屋の真ん中にあるのは…土俵??

 

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こちらは、相撲をこよなく愛する3人(左: 樅山智子氏 中央: 野村誠氏 右: 鶴見幸代氏)による作曲家ユニット「日本相撲聞芸術作曲家協議会」略してJACSHA(ジャクシャ)が主催する「相撲研究室」だ。

 

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彼らが日々研究する相撲聞研究会映像アーカイブや、岩槻に残る古式土俵入の研究資料、そして研究をもとに作曲された音楽や楽譜や資料などを自由に見たり、聴いたりすることができる。

 

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先ず、気になったのは黒板両端の「相撲習字」だ。

「ちゃんこ」や「腰割」などの相撲部屋や稽古にちなんだものから、「どす恋」のダジャレまで、十人十色の相撲習字が並んでいる。ちなみに力士姿の埴輪習字は、芸術家兼埴輪研究家の川埜龍三氏が書かれたそうだ。

 

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こちらは、JACSHAの三人が、身近な場所で見付けた土俵と土俵入りした写真展だ。「丸と線があればどこでも土俵になる」と笑顔で話す樅山氏。確かに、街中で良く見かける丸い木の植え込みにマンホールから、今川焼にウナギ丼まで美味しい土俵まで、種類豊富だ。

 

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私は、普段マンホールや木の植え込みなど、あまり気にしたことはなかったが、ジャクシャの3人からは立派な「土俵」に見えるようだ。ちょっと別の視点で周りを見渡すと、今まで気付かなかった面白さを発見出来るように思った。思わず、私の周りにも土俵がないか探してみたくなった。

また彼らは、近いうち「私の土俵入り展」と題して、身近な場所で見つけた土俵や、丸と二本線で作ったオリジナル土俵の中に入っていく土俵入りの写真の公募と、展示を始めるそうだ。

「実は岩槻は相撲と関わりがある街」だと樅山氏は言う。全国的にも珍しい「古式土俵入り」の伝統が残る岩槻市。子供達の健やかな成長を願って秋祭りに奉納される行事だそうで、現在も幼稚園児から小学校6年生までの男子達が、相撲を取らずに様式化された土俵入りを披露している。

最後に、三人は大相撲の道具の一つ「触れ太鼓」の「トントンストン」のリズムに合わせて柏木や打楽器での合奏を披露してくれた。 

 

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この特徴的な「トントンストン」は、大相撲の「触れ太鼓」で基本的なリズムだそう。元々は大相撲の呼出しさんが、江戸時代から楽譜を使わず口伝するリズムの覚え方が、この「トントンストン」という口唱歌だったそうだ。

また、JACSHAが作った岩槻の特産品や、地名、岩槻出身の人名などを「トントンストン」のリズムにあてはめて歌う、その名も「トントンストン」岩槻バージョンを教えてもらった。

 

人形供養/つかのこし古墳/太田道灌(室町時代の武将・江戸城、岩槻情を築城)/

山吹(地名)/岩槻/たまこち(岩槻区仲町のおうちカフェ)/コスモスのタルト/ネギとクワイ(埼玉市特産品の冬野菜)/アーバン(東武アーバンパークライン=野田線)/健・佐藤(岩槻出身の俳優)

 

歴史的なものから比較的新しいものまで、岩槻の良いところがまるっと入った「トンストトン」を聞いていると、古さと新しさが混じり合った新たな面白さを感じた。

今回さいたまトリエンナーレで思ったことは、参加者とアーティストの距離の近さだ。

私は今まで六本木・横浜・瀬戸内海の芸術祭に行ってきたが、まるでアーティストに近づくようにして作品を見ることができたのはさいたまトリエンナーレが初めてだと思った。それは、里山の大自然と一体となってパブリックアートを楽しむのではなく、127万人を超える「生活都市」の埼玉を舞台にした芸術祭だからこそ出来るのだと思う。

JACSHA三人の「お相撲愛」が溢れる合奏から、さいたまAでの展示室でカメラマンさんが展示の写真を見ながら「このおじさんはね、わざわざ県外から発掘調査にも参加しれくれたんですよ」と発掘調査の裏話を話してくれたのが印象に残っている。

また、タムくんの似顔絵イベントでは、似顔を描いてもらった来場者が「似てるね」や「実際より若く描いてもらったね」と嬉しそうに絵の感想を話しながら、似顔絵と一緒に写真撮影する様子を見ていると、たまたまその場に居合わせた人達までほっこりしていくのを感じられた。  

さらに、毎日の通勤や通学で利用するイメージの埼玉とは一味違った、埼玉と相撲の関係や、埼玉にパラレルワールドがあるなど、新たな埼玉の顔を見ることが出来て面白かった。アーティストの話やアート制作現場を間近で見ると、その作品やアーティストの活動をもっと知りたくなるきっかけにもなると思う。

 また、「アート=難しい」からとアートに苦手意識や関心がなかった人にとっても、こういったアート体験で、アートに対するハードルをぐっと下げてくれるようにも思えた。

最後に、旧民俗センターでの新進気鋭の3人組アーティスト「目」が手掛けたインスタレーションには是非行ってもらいたい。

ただ、こちらの作品は、撮影はもちろん作品情報を人やネットで公開も禁止されている。スマートフォンやPCはもちろん、今後ありとあらゆるものとインターネットを繋げていく「I o T時代」が近く到来すると言われているなか、参加者には作品名、アーティスト名、会場くらいしか事前情報が無いことにむしろ新鮮さを感じた。

作品については触れることが出来ないが、参加した人はきっと「これはどうやって作られているの?!」驚くこと間違いない。また、動きやすい格好と靴で行かれるのがオススメだ。その理由は・・・参加して自分の目で確かめて下さい。

 

文・写真:かしまはるか

 

【情報】

さいたまトリエンナーレ2016

テーマ: 未来の発見!

会期: 2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]

定休日: 水曜※11月23日(水・祝)は開場、翌日の11月24日(木)は閉場

主な開催エリア: ①与野本町駅~大宮駅周辺
         ②武蔵浦和駅~中浦和駅周辺
                               ③岩槻駅周辺

会期中は主要エリアの他、市内各地で各種アートイベントを実施

 

◆参考

RYUZO KAWANO OFFICIAL SITE

http://www.ryuzo3.net/  (2016/10/02)

さいたまトリエンナーレ イベント情報

「JACSHA 『さいたま触れ太鼓隊』音楽ワークショップ Vol.2」

https://saitamatriennale.jp/event/1210  (2016/10/02)

埼玉新聞 <さいたまトリエンナーレ>市民と一緒につくる芸術祭 24日開幕http://www.saitama-np.co.jp/news/2016/09/25/08.html  (2016/10/02)

Facebook「日本相撲聞芸術作曲家協議会」

https://www.facebook.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%9B%B8%E6%92%B2%E8%81%9E%E8%8A%B8%E8%A1%93%E4%BD%9C%E6%9B%B2%E5%AE%B6%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A-532461900207944/  (2016/10/02)

アメーバブログ「癒しの空間おうちカフェタマコチ」

http://ameblo.jp/tamakoti/  (2016/10/02)

さいたま市HP「くわいのご紹介」

http://www.city.saitama.jp/004/001/004/p039572.html  (2016/10/02)

 

 



Writer

かしまはるか

かしまはるか - Harka Kashima -

神奈川県出身。 大学のゼミでは、日常の生活に 「なぜの視点」で切り込む「日常生活の社会学」を専攻。
現在はメーカー勤務。 休日は美術展や古着を探しに、ぷらぷら上野や高円寺を巡るのが楽しみ。
絵を観ることはもちろん、 アートシーンの第一線で何が起きているかを目で見て、人に伝えていきたいと思ったのが、ガールズアートトークに入ったきっかけ。 好きな画家は、ルノワールとシャガールとヒグチユウコ。






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