feature

植物への親しみが湧く♪キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展 

NEWS

2015年1月16日

植物への親しみが湧く♪キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展 


 植物への親しみがもっと湧く

キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展 

 

 

 

 

渋谷から徒歩約6分のところにあるBunkamuraの25周年を記念して開かれた、キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集展』に行ってきました。

Bunkamuraは大型の文化複合施設で映画や芸術、音楽など幅広い文化の交流の場としても知られている素敵な場所です。

 

【バンクス花譜集展とは?】

 

「バンクス花譜集」とは、「冒険の時代」とも呼ばれた1770年代に3年間に渡る第一回太平洋航海に同行し、植物の採集を行った“ジョセフ・バンクス”が集めた多くの植物を、銅版画を用いてコレクションにしたものです。「バンクス花譜集展」では、花譜集の中から美しい銅版画を約120点に厳選して、大航海の関連資料などと合わせて展示しています。“ジョセフ・バンクス”は今では自然史の父とも呼ばれる人物で、当時彼は10人ほどの科学班のリーダーとしてこの大航海に同行しました。まだ世界中の植物が発見されていなかったこの時代に、バンクスによって膨大な新種が発見されたのを機に、植物と人間との密接な関わりが盛んに始まったとも言えるでしょう。

 

 

 

     DSC_0707[1] 

【ここが見どころ!】

 

何といっても120点の植物画の精密な描写!ズラリと並んだ植物画は、二次元なのに実物が目の前にあるように思わせるほど、非常に立体感がありました。さらに全て生きた植物を描いていたため、どの植物の絵も非常に生き生きと描かれていました。葉の反り返った部分や葉脈、葉の表面の繊細な毛などの細かい部分なども精密に描かれていて、植物のドローイングを主に担当していた画家、“シドニー・パーキンソン”の技術の高さにも驚かされました。

 

 DSC_0702[1]

image[1]

image_(4)[1]

 

 image_(7)[1]

image_(1)[1]

 

image_(3)[1]

 

 

サツマイモやワラビ、パッションフルーツなど、普段は食べられる部分しか目にする機会がないですが、ここでは花や葉などの全体像を見ることができます。自分にとって身近な植物を探してみるのも楽しみの一つかもしれませんね。

 

進んだ先にあった映像コーナーでは、分かりやすい解説と一緒に、展示されている植物の実物の映像を見ることもできました。植物画に描かれていた絵と実物を見比べてみると、よりその植物のイメージが湧きやすくなりました。

 

バンクスの乗った船や航海地図、植物の採集を通して交流した現地の民族の記録など、現代ではあまり親しみのないものも数多く展示しているので、冒険心が掻き立てられます。

 

 

 

【印象に残った作品】

 

バンクス花譜集展では、無料で解説をしてもらうこともできるのですが、今回解説をして下さったピーター・マシウスさんのお話で特に印象に残った作品を3つご紹介します。

 

 image_(2)[1]

最初に“バンクシア・デンタータ”というバンクスの名前にちなんだ植物。木がよく育つ場所では火事が起きやすい地域もある、とのことだったのですが、この植物はその「火事」を利用して種を蒔く植物なのです。皮肉ですね。種を覆った固い殻が火事によって開かれ、新しい種が落ちる仕組みになっている、というのです。こんな面白い植物があるなんて驚きでした。

 

 image_(6)[1]

 

次にイボモエア・アクアティーカという植物。別名“タンコン”という名前で呼ばれ、茎の部分をスープにしているので人々によく親しまれている植物ですが、実はこの植物は濁った比較的汚い水の中でよく育つようです。汚水が付いたこの植物を食べたことで船員の全員が病気にかかり、ここに展示されている植物画のほとんどを描いた重要な人物であるパーキンソンも病気で亡くなってしまいました。現在私たちが安全に食べているものは、命懸けで植物を採集し研究してくれた人々の犠牲の上にあるのだと、改めて感じました。

 

そして最後にバンクスの肖像画です。植物の採集に使われる道具や、採集を通して交流したアボリジニの人々の使っていた斧などを肖像画と同じ空間に描いてもらっているところやニュージーランドの布作りに使用されていた植物の繊維で丁寧に作られたマントを誇らしげに身につけている様子から、彼の植物への情熱が伝わってきました。

 

他の植物画も興味深い内容はたくさんあったのですが、全体を通して感じたのは、植物の多様性でした。私たちが普段使っているものには植物が原料や材料になっているものが想像以上に多いのです。例えばトイレットペーパーや避妊薬、ボディオイルなどが挙げられました。

 

 

【最後に】

 

 

「バンクス花譜集展」を通して、植物の美しい描写を楽しむだけでなく、その時代背景や植物の知識なども得ることができました。また、私たちが何気なく使っているものには植物があらゆる場面で役立っていることを実感し、植物をより身近に感じるようになりました。植物は鑑賞用としても昔から長く愛されてきたものですが、今では薬や洋服、紙などの日用品の原料としても欠かせないものになってきています。18世紀の時点で植物の可能性を信じ、「有用性」を重視したバンクスとそれを支えた人々の命懸けの冒険と植物の採集は、人間と植物を結ぶ進歩に確かな影響を与えたと言えるでしょう。全体を一体として見ることでこの美術展の魅力がより大きなものになる、と感じました。

 

 

 

【ショップ】

 

美術展を楽しんだ後には、家でも植物を楽しめるショップに行ってみてはいかがでしょうか。植物の香りをたっぷり混ぜたボディソープやオイルはお試しができ、色鮮やかなお花が埋め込まれた可愛らしいアロマフラワーキャンドル、そしてバンクス一行が植物採集のために滞在したニュージーランドのアボリジニやオーストラリアのグッズなど様々なものも売っていますよ。

 

 DSC_0726[1]

 

DSC_0719[1]DSC_07131-700x464DSC_0728[1]

 

DSC_07081-700x464

 

「バンクス花譜集展」は3月1日まで開催されているので、皆さんもぜひ足を運んでみてください♪

 

 

 

 

 

 

「バンクス花譜集展」詳細

会期:2014/12/23(火・祝)-2015/3/1(日)

会場:Bunkamuraザ・ミュージアム

http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_banks/about.html

 

 

 

 

 

文:今出 真由

撮影:チバヒデトシ