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『不思議の国のアリス』のナゾナゾ 【前編】

NEWS

2016年2月28日


『不思議の国のアリス』のナゾナゾ 【前編】


「金いろのひる下がり、わたくしたちは

そろってゆったりと川をのぼっていった。

二つのオールをぶきっちょに、

幼いうでがこいでいたから、

曲がりがちなボートを、幼い手が、

まっすぐに向けようとつとめても、無駄だった。」

(『不思議の国のアリス』の一説より)

 

ゆるりと光り輝く時が流れゆく中、少女アリスはボートの上でどのように物語の中に飛び込み、

どんな世界と夢を心と頭の中で描いたのでしょうか。

 

今回は151年前にイギリス・マクミラン社から出版された、児童文学『不思議の国のアリス』について

ご紹介いたします。

タイトル通り、『不思議の国のアリス』の中の「不思議な世界」は、読み手がちゃんと理解して章が進む

どころか、理解する間も無く物語が進んでいく、気がついたらアリスが夢から覚め、お話が終わるという

少し奇妙なお話となっています。

夢から醒めた夢のような不思議で奇天烈なファンタジーの世界。

アリスのように少し首を長くして、不思議の国の歴史と謎解きをお楽しみ下さい。

 

「絵もなければ会話もないないんて? こうしてアリスは思案にふけり、ヒナ菊の首飾りを作るのは

楽しいけれど、わざわざ立ち上がってヒナ菊を摘みに行くほどのことがあるかしらと思っていました。

その時、にわかにピンクの目をした白いウサギがアリスのすぐそばを走ってゆきました。」…

ウサギが「ああ、たいへんだ、たいへんだ、遅れてしまうぞ!」とひとりごとを言ったのも、それほど

並外れたこととも思いませんでした。

(『不思議の国のアリス』より)

 

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(https://uk.pinterest.com/pin/566890671821891554/)

 

ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』で広く知られているアリス。

実は、映画の原作はイギリス人数学学者であるルイス・キャロル

(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンによって書かれた物語なのです。

それが今回ご紹介する原作『不思議の国のアリス』。

 

アリス出版150年を記念して、イギリスでは多くのイベントが去年から開催されています。オックスフォード

では町中で盛大に7月4日に「アリス祭り」が催されました。ケンブリッジ大学ホマートンカレッジでは

アリスを研究する学者が集まって「ワンダーランドウィーク」という会議が3日間に渡って行われ、私も

児童文学を研究する者として参加し、素晴らしい才能ある研究者たちと出会うことが出来ました。

この物語は建築、心理学、ビジネス、芸術、デザイン、英語学、言語学など多岐にわたる分野で研究が

行われているのです。

また、去年の11月から今年の4月まで、イギリスの大英図書館では「アリス生誕150周年記念展示会」が

開かれています。

アリスというとディスニーのアリス!を思い浮かべる方には、オリジナルのアリスを知るためのとても

興味深い展示会かもしれません。

 

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(http://www.homerton.cam.ac.uk/news/wonderlandweek2015)

12045435_10150846529779945_3016315190854519512_oアフタヌーンティーの様子(https://www.facebook.com/HomertonCollegeCambridge/photos/a.466363264944.60501.38635419944/10150846529779945/?type=3&theater)

 

ケンブリッジ大学ホマートンカレッジで行われたアリス会議「ワンダーランドウィーク」。

様々な研究者が様々な視点からアリスを研究しておりとても有意義な時間を過ごしました。

 

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「ワンダーランドウィーク」

 

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南カリフォルニア大学のスタッフたちと

 

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ロンドンのサンダーソンホテルにて。アリスのアフタヌーンティー

 

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オックスフォードの紅茶屋さん。

150年を記念して、様々なカップが発売されました。

 

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ヴィッタールドから発売されたカップ
(https://www.whittard.co.uk/articles/new_additions_to_our_alice_in_wonderland_range.htm)

 

『不思議の国のアリス』が誕生したきっかけは、時計の針を144年前のオックスフォードへとグルグルと

巻き戻した1862年7月4日。

「黄金の午後」と呼ばれた日の午後、当時オックスフォードの数学学者であったルイス・キャロル

(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)は、彼がオックスフォードで所属していたカレッジ

「クラストチャーチカレッジ」の学寮長の娘であるアリス・リデルと、彼女の兄弟たちとともにボートの旅に

出かけたことが契機となりました。

アリス・リデルは『不思議の国のアリス』の物語のアリスのモデルとなった少女です。

 

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リデル・アリス(https://uk.pinterest.com/pin/161003755405382019/)

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チャールズ・ドジソン(http://www.bl.uk/romantics-and-victorians/authors)

 

話す時に吃る癖があるドジソンは「どーどー」と鳴く、絶滅種の珍しいドードーを自分のようだと自らを

この動物に例えたように、お話の中でも登場するドードーもドジソン身代わりの登場人物だったようです。

少し人見知りのドジソンでしたが、アリスや子どもたちともすぐに打ち解けたようで、即興で作った

作り話をよく聞かせていたようです。

その「黄金の午後」のボートの旅で、ドジソンがオールを漕ぎながら即興でアリスのために作ったお話が、

後に『不思議の国のアリス』として世界に出版されることとなります。

ボートの旅からオックスフォードに戻ってきた際、アリスはそのお話があまりにも面白いので

「私のために書いて下さい」とドジソンにせがんだそうです。

早速ドジソンは徹夜で幾つかのお話を書き加え、自らのイラストも描き加え『不思議の国のアリス』を

書き上げました。

そのお話を元に、プロのイラストレータージョン・テニエルによって書き換えられたイラストで

マクミラン社によって151年前に出版されました。

 

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ドジソンによるイラスト
A drawing of Alice from Lewis Carroll’s manuscript of Alice’s Adventures Under Ground, written between 1862-64 (c) The British Library Board – See more
at:http://www.bl.uk/press-releases/2015/november/alice-in-wonderland-exhibition-opens-at-the-british-library-to-mark-150th-anniversary-of-publication?inViewer=imgID27e033b0-3346-4add-b85f-e98433e6318b#sthash.62oxiErT.dpuf

 

今回、大英図書館に展示されている作品は徹夜で書き上げ、アリスに贈られた『不思議の国のアリス』

オリジナルの本を含め、様々な著名のイラストレーターが手がけた挿絵などが展示されています。

ロンドンにいらっしゃる方はどうぞ足を御運び下さい。

 

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テニエルによるイラスト
Sir John Tenniel’s illustration of Alice and the Cheshire Cat from the 1866 edition of Alice’s Adventures in Wonderland by Lewis Carroll (c) The British Library Board – See more at: http://www.bl.uk/press-releases/2015/november/alice-in-wonderland-exhibition-opens-at-the-british-library-to-mark-150th-anniversary-of-publication?inViewer=imgIDcb00bea7-73f5-4587-b71b-f0c7df54219d#sthash.62oxiErT.dpuf

 

オックスフォード大学クラストチャーチカレッジはハリーポッターが撮影された場所、そして

『指輪物語』の著者が所属していた場所としても大変有名です。

ドジソンは数学学者でもありながら、さらに図書館の図書員の仕事もしていたドジソンは、彼の図書館の

専用の部屋から学寮長の自宅の庭を眺めて、よくアリスが外で遊ぶ様子を見ていたそうです。

オックスフォードに尋ねてみると、地理的にアリスが誕生したきっかけが分かるような気がします。

『不思議の国のアリス』が誕生したヴィクトリア時代はイギリスが産業革命をきっかけに、様々な産業と

文化芸術が発展した時代でした。瞬間を刻むカメラの発明により、「時」に対する人々の関心がより高まり、

さらには電気鉄道の発明により、より「スピード感覚」を持って生活し始めた時代でもありました。

 

一方、オックスフォードは世界一歴史のある大学として知られているように、とても伝統と歴史と格式を

持ち合わせながらも、工業化が進む世の中でも厳しい仕来りと慣習がある大学です。

ドジソンは地理的に外部の世界から閉ざされたキャンパスに、「流れゆく時代」と「伝統を重んじる大学」の

狭間にいました。

アメリカの西海岸の道を車で駆け巡るどころか、その「閉ざされた空間と共同体」の中で、いかにして

子どもたちが喜びと楽しみと成長を見出すことができるかを考えていたのです。

そこで、思いついたのが「想像力を用いて冒険できるナンセンスの国」だったのでしょう。

物語の登場人物たちも当時のオックスフォードにいた同僚たちを風刺して書かれたと言われています。

なんだか時代のパイプを作り出すエンジニアのようですね!

ちなみに、この物語が誕生するまでのヴィクトリア朝の児童文学というと)子どものしつけをするために

ユーモアとウィットではなく、教訓を意味したお話ばかり。

今では考えられませんね、それほど社会が子どもに「しつけと規律」を求めていたようなのです。

 

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クライストチャーチカレッジ図書館  ドジソン専用の部屋からの眺めです。

 

昨今、アリスはお茶会のテーマとしてよく用いられ、一般の人々はもちろん、多くの科学研究者や

現代芸術家にも親しまれています。

私も一ファンとしてアリスグッツを集め続けています!

日本からは草間彌生さんがイラスト・装丁を手がけた、『不思議の国のアリス』を日本とイギリスで

出版されています。

私が在学している大学出身のファッションデザイナーであるヴィヴィアン・ウエストウッドは、

アリスの表紙を手がけて出版されました。

流れゆく時代の中、伝統と格式ある大学、つまり「閉ざされた地図の中」にいたドジソンが、

子どもの喜びと成長のために書いた『不思議の国のアリス』。

このお話の主人公が変わると、宮沢賢治の『注文の多い料理店』だと思いました。

 

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ヴィヴィアン・ウェストウッドが手がけた表紙
(http://www.viviennewestwood.com/blog/alices-adventures-wonderland-150th-anniversary-edition)

 

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草間彌生がイラストをデザインした作品
http://blogs.artinfo.com/artintheair/2012/08/14/check-out-yayoi-kusamas-trippy-illustrations-for-alice-in-wonderland/

 

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草間彌生がイラストをデザインした作品
http://blogs.artinfo.com/artintheair/2012/08/14/check-out-yayoi-kusamas-trippy-illustrations-for-alice-in-wonderland/

そうそう、私の大ファンである松岡正剛先生もお正月にアリスの記事を書かれています。

こちらも御覧ください。宮沢賢治がアリスを読んでいたなんて感激です!

http://1000ya.isis.ne.jp/1598.html

 

アリスのお話についてもっと知りたい方は、「『不思議の国のアリス』のナゾナゾ」【後編】をお読み下さい。

 

2016/02/25

文・Yuria Yoshida

 

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ジョンテニエルによるイラスト
(https://uk.pinterest.com/pin/447193437974356402/)

 

『アリスを愛する全ての子供たちにイースターのご挨拶』 ルイスキャロル作(抜粋)

 

アリスをテーマにしたお茶会
(https://uk.pinterest.com/pin/359936195197937843/)

 

【リンク】

大英図書館『不思議の国のアリス展』

http://www.bl.uk/events/alice-in-wonderland-exhibition?ns_campaign=alice&ns_mchannel=ppc&ns_source=google&ns_linkname=British%20library%20alice&ns_fee=0

ケンブリッジ大学ホマートンカレッジ「ワンダーランドウィーク」

http://www.homerton.cam.ac.uk/news/wonderlandweek2015

オックスフォード アリスデイ 2015

http://www.dailyinfo.co.uk/alicesday2015

 

【参考文献】

『不思議の国のアリス』ルイスキャロル作 生野幸吉訳 福音館書店出版 2004年

『「不思議の国のアリス」の誕生』ステファニー・ラヴェット・ストッフル著 創元社出版 1998年

『アリス狩り』高山宏作 青土社 2008年

『不思議の国の”アリス”ルイス・キャロルとふたりのアリス』文:舟崎克彦 写真:山口高志 監修:笠井勝子 求龍堂グラフィックス出版 1991年

Lewis,C., 2015. ‘Alice’s Adventures in Wonderland 150th Anniversary Edition with Through the looking –Glass and What Alice Found There’. London: Vintage Graphics Publisher.

(With an Introduction and Cover Art by Vivienne Westwood)

Lewis,C., 2012. ‘Lewis Carroll’s Alice’s Adventures in Wonderland with Artwork by Yayoi Kusama’. London: Penguin Classics.

 

 

アリス「ここからどの道を行けばいいのか、教えていただけません?」

ネコ「そりゃ、全くあんたの行きたい次第だよ」とネコは言いました。

アリス「私、とくべつにどこへということもー」とアリスは申しました。

ネコ「それじゃあ、あんたがどの道を行こうと、構わんじゃないか」とネコは言います。

アリス「どこかに出られるものなら」とアリスは説明をつけ足しました。

ネコ「なあにどこかに出られるに決まっているさ」とネコは言いました。とネコは言いました。「たっぷり歩きさえすればね!」

『不思議の国のアリス』より抜粋

 



Writer

Yuria Yoshida

Yuria Yoshida - よしだ ゆりあ -

青山学院大学文学部卒。在学中より音楽演奏奉仕活動や、NYでの美術館巡りなどを通して、日本と西洋のつながりを模索する。卒業後、The Art Students League of New York、Denison UniversityでのArt留学や日本語・日本文化教師をしたことをきっかけに、芸術教育に興味を持つ。現在は幼児芸術教育を勉強しつつ、バイリンガル幼児園にて英語を教える。

英国大学院留学を控えており、ルイスキャロルを中心に英国児童文学や教育等を研究予定。パリにある国連ユネスコ本部のお庭でコンテンポラリーなお茶会を開くことが夢。






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