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Interview 中ザワヒデキ『アンチアンチエイリアシング』

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2014年7月2日

Interview 中ザワヒデキ『アンチアンチエイリアシング』


中ザワヒデキ『アンチアンチエイリアシング』

 

 

 

 

「バカCG」などで知られる美術家の中ザワヒデキさんが個展『アンチアンチエイリアシング』を東京・京橋のギャラリーセラーで開催しています。

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イラストレーター時代に制作し話題となった「バカCG」。このバカCGを再び、“ニューバカCG”としてTwitter上で展開してきた作品群が「アンチアンチエイリアシング」です。まさにバカCGリバイバルと言える「アンチアンチエイリアシング」ですが、今回は “美術” として取り組んでいるとのこと。アンチエイリアスにこだわる理由を中ザワさんは「ピクセルのジャギこそがデータに忠実なフェティッシュだと思うんです」と言います。

 

元眼科医という経歴を持つ中ザワさんは、明晰な思考をお持ちで、加えて仕事やふるまいがとても繊細でスマート。医大に進学して眼科を選択した理由として、「眼はいろいろなものを映し狂気的だから」と芸術的な発想からきていること、その発想のきっかけになった映画「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル監督と画家サルバドール・ダリによる1928年のフランス名作映画)を見たことだ、と中ザワさんは言います。

 

中ザワさんの作品には過去の様々な経験が影響しているようです。例えば、医師としての経験がにじみ出た作品には「灰色絵画」、「脳波ドローイング」などがあり、また幼い頃から長く油絵を描いていたことが身体に染みついていて、デジタル機器で絵を描くときには油絵を描いていた感覚がよみがえるとのこと。

 

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今回の個展のフライヤー(ギャラリー内で配布のあるもの)には、作品の写真とタイトルに加え、どんな機種での作成か、などの詳細も記されています。

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「パソコンでのマウス描き以外に、スマホで指描きした作品も出品されています。後者については、「風邪をひいていて本を風邪をひいていて本を読む元気はないけど、手を動かしたい…と思った時にiPhone 4でふと描いて遊んだのが一番最初かな」と中ザワさん。

 

<Photoshop>のような、画像専用の高機能アプリケーションではなく、携帯電話という生活用品というところが重要とのこと。

 

「時にPhotoshopのような、絵を描くための機能が十分に用意された機器は、機器そのものに備わった制御がかえって自由な選択の妨げになり、わかりにくくもなります」と中ザワさん。

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確かに! オートマの自動車のように安全に運転するためというはっきりとした目的があるものは違いますが、人の手による純度の高いものを伝える時に、機械の自動制御によって齟齬を生じるのですね。今回の個展では、デジタル本来の特性と戯れる「人の自由な感性」が、近年の機器に備わる「アンチエイリアシング」に負けずに展開されています。

 

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「デジタル画面に備わるピクセルは点描的ですが、顔や輪郭は線描的に認知されます。キャンバスに描く点描画では点を連ねていくことで線が表現されますが、デジタル絵画でもピクセルを連ねて線を描きます」と語る中ザワさん。2006年以降は色彩も多様に使用し、排他的で禁欲的だった「方法絵画」の活動(1997年~2005年)から変化し、ものごとを広く受け入れ、自由な発想をそのまま表現されるようになったそうです。

 

 

「美術」というものが何なのか中ザワさん自らが考察し、過去の歴史を解体・実験を繰り返した経験と、独自の方法論により作曲、演奏される音楽作品も含め、それらのプロセスひとつひとつが見る人に伝わるものになるに違いない、とワクワクすると同時に、現在の中ザワさんの自由な発想による作品が、作品も見る人も更に幅を広げていく期待に溢れた個展でした。

 

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取材中に、どんな感じで作品を創作されたのか、実際にiPhone5で描いてくださいました。「iPhoneでの作品群はアンチエイリアスが自動でかかってしまいますが、敢えて嫌いなものをやる、敢えて最悪なものをやる、という楽しみを肯定しています」と中ザワさん。

 

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なんと、仕上がった作品のタイトルが「さむかわさん」!

 

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中ザワさん、ほんとにありがとうございます!!

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中ザワヒデキ 

1963年新潟県生まれ神奈川県に育つ。

千葉大学医学部入学。大学在学時から公募展の入選や個展を開き美術家としてデビュー。

これまでの活動期は本人の区分で5つに分類されている。

「プレ期」1963~1982年 幼少時から高校卒業の、美術家デビュー前まで

「第一期 アクリル画」1983年~1989年 大学入学から病院の勤務を行いながらの活動

「第二期 バカCG」1990年~1996年 イラストレーターとして独立してから7年間

「第三期 方法絵画」1997年~2005年 純粋芸術へ転身、「方法主義宣言」を発表し方法主義者を名乗り、色彩の快楽を否定

「第四期 本格絵画」2006年~ 同人「方法」の解散後から再び実際の色彩を扱い始める

http://aloalo.co.jp/nakazawa/

http://aloalo.co.jp/nakazawa/201111/a.html

 

 

 

 

 

Anti-Anti-Aliasing

中ザワヒデキ展【アンチアンチエイリアシング】

 

2014年6月15日(日)-7月5日(土)

12:00-18:00

日月祝休[6月15日(日)のみ開廊 15:00-18:00]

GALLERY CELLAR

104-0031東京都中央区京橋3-3-4 B1

03-6225-2466

http://gallerycellar.jp

 

 

 



Writer

寒川 晶子

寒川 晶子 - Akiko Samukawa -

ピアニスト

フェリス女学院大学音楽学部器楽学科を卒業。
神奈川県民ホール主催「アート・コンプレックス (塩田千春〜沈黙から〜展) 」でデビュー。
エルメス特別エキシビジョン「レザー・フォーエバー」(東京国立博物館表慶館) レセプションやファッションショー、美術館、プラネタリウム、寺院、イルフ童画館などでコラボレーションや記念演奏会に多数出演。
ピアノを中心とした作曲や即興演奏も行う。

オフィシャルホームページ http://akiko-samukawa.com