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貫け、己を。ステイ・パンク!写真家ハービー・山口 インタビュー

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2018年3月9日

貫け、己を。ステイ・パンク!写真家ハービー・山口 インタビュー


 

 

貫け、己を。ステイ・パンク!写真家ハービー・山口 インタビュー

 

 

伝説的パンクバンド・ザ・クラッシュ、ビジュアル系の草分け的存在であるカルチャークラブのボーカル、ボーイ・ジョージ、最近ではバレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンなど様々な大物アーティストに密着しその素顔に迫り続けてきた写真家ハービー・山口。今年に入って写真集『LAYERED』を刊行するなど、その勢いは留まることを知らない。

 

 

3月8日(水)に開幕した『アートフェア東京2018』は、日本のアートシーンの「今」を凝縮したアートのプラットフォーム的存在だ。今回、ハービー・山口の作品が『Photo Project~curated by Toshio Shimizu. MITSUKOSHI』(ブース番号「N56」三越日本橋本店からの出展)で展示・販売されている。girlsArtalkはハービー・山口のインタビューを敢行することに成功した。ロンドンにフィーチャーした本展を、ハービー・山口の人間的魅力を交えながらお伝えしたい。

 

 

 

何故、写真家という道を選んだのか?人間を撮り続けるのか

 

 

 


メイン写真の前で微笑むハービー・山口。

 

 

 

girlsArtalk(以下、gA):そもそも、何故、写真家という道を選択されたのでしょうか?

 

ハービー・山口(以下、ハービー):小学校4年生のときに出身地の東京都大田区で、ブラスバンドの演奏を駅前で偶然、聴いたんです。勇ましいマーチでした。小学生の頃、僕は脊髄カリエスという病気を患って、夢も希望もなかった。でも、そのマーチを聴いて「ああ、なんて生きるエネルギーを感じるのだろう」と。音楽って凄いな、音楽家になろうって思ったんですよ。

 

gA:当初は音楽家を目指していらっしゃったのですね。

 

 

 

 

 

 

ハービー:ええ。なので中学に入りブラスバンドをやりました。でも、好きだけれど音楽の才能はなく…。それで写真部に入ったら向いていたんです。人を元気にできるなら、音楽でも写真でも手段は選ばなくてよいと思いました。何よりカメラは性に合っていたし、中学校2年生でカメラを手にしてから半年でプロになりたいと思い至りました。

 

gA:ハービーさんは一貫して人間を被写体に選んでいらっしゃいます。人間をテーマにしている理由をお聞かせ下さい。

 

ハービー:前述した通り、僕は病気を患っていました。幼稚園の頃から、中学校、それこそ高校まで一人ぼっちの孤独な生活でした。その頃の自分が欲しかったのは、人の「優しさ」や「笑顔」や「友達」。人恋しさが今でも心の中にあるのだと思います。だから、人との繋がりを求めて「人」に引き寄せられ「人」を被写体にしているのだと自身では考えています。

 

 

 

イギリスへの滞在は当初半年の予定だった!スター達との華麗な交流歴

 

 

 


Punk Night at 100Club 1986 Ⓒハービー山口

 

 

 


Viv 1981 Ⓒハービー山口
スリッツのヴィヴ・アルバータイン。ハービー・山口は一時期、彼女に淡い恋心を抱いていたという。

 

 

 

ハービー:大学4年生になり就職活動をしたのですが、写真ばかり撮っていたので試験結果は散々なものでした。「日本では僕は必要とされていない」と追い詰められ、大学時代の友達とイギリスへ渡りました。結論から言うと、半年で帰ってくると言って約10年は帰りませんでした(笑)

 

gA:イギリス時代、カルチャークラブのボーイ・ジョージとルームシェアしていたことはあまりに有名ですが、今でも連絡を取られていますか?

 

ハービー:ありますね!一昨年、ジョージが30年ぶりに来日したんですよ。楽屋に行ってガッチリとハグをしました。

 

 

 

一切、妥協をせず、己を生きるパンク精神は未だ健在

 

 

 

 

 

 

gA:バレエダンサーのセルゲイ・ポルーニンも撮られていますよね。映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』を観賞して大変繊細な方だと感じましたが、ハービーさんのセルゲイの印象はいかがでしたか?

 

ハービー:セルゲイには「自身の踊りで人々を幸せにしたい」という強い意思があります。ダンサーの地位を高める活動も精力的に行っていますね。そういった意味ではパンクの精神に通じるところがあります。既存の価値観に全て従うのではなく、自分に妥協しない生き方のことです。パンク精神の最たるものが、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーの写真(以下)です。

 

 

 


Joe on the Tube 1981 Ⓒハービー山口

 

 

 

ハービー:偶然、電車内で見かけて写真を撮らせてもらったんです。彼は僕のことを知らないですけれど、撮っていいよと。ジョーは電車を降りるときに、僕を振り返ってこう言ったんです。「君ね、撮りたいものは全部撮れよ。それがパンクだぞ」って言ったんです。それがパンクの精神なんですね。妥協しないで生きていきましょうって。今でも深く心に残っています。

 

gA:では、ハービーさんにとって、魅力的な被写体というのは妥協しない人間でしょうか?

 

ハービー:それもあるけれど、優しさを湛えている人がやはり好きです。思わずシャッターを押してしまいますね。

 

 

 


Autumn Sunshine 1973 Ⓒハービー山口

ロンドンにいた頃、いつも公園にいたという兄妹。彼らの笑顔にハービー・山口は元気を貰ったという。

 

 

 

gA:最後に、girlsArtalk読者にメッセージをお願いします。

 

ハービー:美人ではなくて、麗人になって欲しいですね。見た目が綺麗なだけじゃなくて、考え方も物腰も所作も上品な人。そして女性でも若者でもステイ・パンク。妥協しない生き方。それを追い求めるのが良いと思います。

 

 

 

 

 

 


girlsArtalk編集部員たちを撮影するお茶目な一面も。

 

 

 

終わりに

 

 

 

あまりにも写真が普及した今、忘れてしまいがちだが、写真とは撮る側、カメラマンの思想を通過し、対象を映すという大前提が存在している。更にいうなれば、印刷技術といった次元も加わる。 私たちがハービー・山口の写真に惹かれて止まないのは、彼の人間に対する真摯な姿勢や率直な人柄に写真を媒体として触れているからだろう。ハービー・山口の写真は、応援歌ならぬ、応援写真と言っても良いのではないだろうか。ハービー・山口の大いなる人間賛歌とパンクの精神を是非とも『アートフェア東京2018』の『Photo Project~curated by Toshio Shimizu. MITSUKOSHI』で感じて頂きたい。

 

 

 

インタビュー/テキスト:鈴木 佳恵
写真:新井 まる

 

 

 

【アートフェア東京2018】
会期:パブリックビュー3月9日(金)11:00 〜 20:00、3月10日(土)11:00 〜 20:00、3月11日(日)11:00 〜 17:00
会場:東京国際フォーラム  ホールE & ロビーギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内3-5-1
チケット:1DAYパスポート 当日券 3,500円(税込)
ホームページ:https://artfairtokyo.com/2018

 

 

 

【プロフィール】


ハービー・山口 (Herbie Yamaguchi)

 

 

1950年、東京都出身。中学2年生で写真部に入る。大学卒業後の1973年にロンドンに渡り10年間を過ごす。
一時期、劇団に所属し役者をする一方、折からのパンクロックやニューウエーブのムーブメントに遭遇し、デビュー前のボーイ・ジョージとルームシェアをするなど、ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験する。そうした中で撮影された、生きたロンドンの写真が高く評価された。帰国後も福山雅治など、国内アーティストとのコラボレーションをしながら、常に市井の人々にカメラを向け続けている。多くの作品をモノクロームの、スナップ・ポートレイトというスタイルで残している。 その優しく清楚な作風を好むファンは多く、「人間の希望を撮りたい」「人が人を好きになる様な写真を撮りたい」というテーマは、中学時代から現在に至るまでぶれることなく現在も進行中である。写真発表の傍ら、エッセイ執筆、ラジオ、テレビのパーソナリティー、さらには布袋寅泰のプロジェクト「ギタリズム」では作詞家として参加している。



Writer

鈴木 佳恵

鈴木 佳恵 - Yoshie Suzuki -

フリーランスの編集者。
広告代理店に勤務後、フリーランスに。
得意分野は映画と純文学。
タルコフスキーとベルイマンを敬愛し
谷崎潤一郎と駆け落ちすることが夢。

 

暇があれば名画座をハシゴしています。