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「出会い、恋に落ち、衝動的に1LDK の部屋で暮らしはじめる」成田久さん&キム・ソンヘさんインタビュー

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2014年12月2日

「出会い、恋に落ち、衝動的に1LDK の部屋で暮らしはじめる」成田久さん&キム・ソンヘさんインタビュ


Interview 

出会い、恋に落ち、衝動的に1LDK の部屋で暮らしはじめる

成田久さん&キム・ソンヘさんインタビュー

 

 

 

 

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えええ!!なにこれ素敵・・・・ッ!!!

鮮やかな空間が光ってまるで金色みたい。

4月25日~5月18日まで代官山ALで開催された「金とQの狂った1LDK」展。「出会い、恋に落ち、衝動的に1LDKの部屋で暮らしはじめる」というかなりインパクトのあるテーマのこの展覧会ですが、その出会ったお二人というのが今回の展覧会を手がけた成田久さんとキム・ソンヘさん。成田さんは某企業でアートディレクターを務める傍ら、雑誌「装苑」で演劇についての連載やNHK「八重の桜」のポスターデザインも手がけていらっしゃいます。キムさんはシャンデリアのデザイナーで、数々のディスプレイデザインやワークショップを開いていらっしゃいます。最前線で活躍されているお二人に貴重なお時間をいただいて、インタビューをして参りました。

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gilrs Artalk(以下G):まず伺います、なぜこのテーマになったのですか?

成田さん(以下N):今回、ALさんからお話をいただき、キムさんとの共通の知り合いであるプロデューサーの吉田愛さんからコラボレーション展の話もいただいて、キムさんも僕もお互いの作品は知ってたんです。じゃあふたりでやりましょう、となって、時期はゴールデンウィークってのもあったんですけど。僕の作品は今回カラフルなんですけど反対にモノクロだったりして、毎回展覧会によってコンセプトを真逆に変えちゃうんですが、キムさんとやるときはぬいぐるみの作品のインパクトだったりキャッチー度と一緒にやるんだったら、その自分のまわりのこと、パパママもたくさんいるし、キッズも多い。キムさんがお母さんだし・・・ということも考えて、ふたりともバラバラでやるとかどっちのポジションでやるとか、そういう考えをやめようって言いました。ふたりとも作りたいものを作ってきて、出したいものを出そうって決めたけど、テイスト自体は似てなくもないから、そのコンセプトとして2人の狂った1LDKっていうのを、空間の完成度を落とさないままに、子供っぽくなるのではなく彼女の作品をより良くどう見せたら面白いかなと考えたんです。

でもストレス無く持ち寄ってみようってなって、その時空間を1個にして、あの中で話を聞いたりワークショップを開いたりして、僕らのお家に新緑の時期に遊びに来てくださいっていうつもりで、作品を置きたいなって思いました。

 

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G:部屋という1LDKというキーワードがとても気になっていたのですが、お2人で合わせる形だったのですね

キムさん(以下K):でも出来上がるまでお互いの作品は見て無かったですよね(笑)

N:うん、全く見てなくて、それも前日まで、この会場では別の展覧会やっていたので、レセプション当日に展示したから、本当に当日引っ越してきた感じで。キムさんのソファに最後このぬいぐるみどこに置こうかなって考えて、自分が赤い人形置いたときに完成度が「しまった!」ってなって、しまったっていうか「フィニッシュ!!」ってなって(笑)。なんかキムさんと僕の作品を置くとこによってどう楽しめるか、っていうふうにしようかなと思ったんです。いつも僕は作品がストイックなので、今回はもっと立体的な展覧会にできたらいいなって思いました。ワークショックとかトークしたりするのも、お家に来る感覚で超著名人を呼ぼう!みたいな、どこにいるの?みたいな人とか、お家で会えるっていうと子供っぽいような、大人っぽい感じもするなと。

 

 

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G:恋人のお家に行くというのはなんだか見てはいけない秘密の空間のような気がしていたのですが、小さい子もお母さんも居られる空間ということで“お家”という感じで楽しめるのだなと感じました 。

 

N:キムさんから入る人もいれば、僕から入る人もいればいいし、ファッションとか舞台から垣根なく、今日の自分たちがあって、大人が遊んでて、キムさんの金とゴールデンウィークというのもあったし、今回はDMやFacebookも作ったんです。そういうのも全部の合わさったものになればいいな、と今日ほっとして言えます!(笑)

 

一同:(笑)

 

N:ほんと今やっと言える感じですよ!正直いろいろ大変でした!(笑)どうなるかなとか、ゲストの方に失礼無いかなとか。見た目は大丈夫だな、とは思っていたんですけど。

K:そうですね、私もそのへんはあんまり気にしてませんでした。会場の感じ、2人の作品の感じとか。

 

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G:入った瞬間の赤色がとても目立ちますね。奥にもあんな空間が広がっているとは思わないですし、ドンとした存在感には見入ってしまいます。

N:そうですね、キムさんの作品を選んで空間をデコラティブしたいなというのがあって。アートディレクターもしているからか、キムさんをどう見せようかなと思っていたところはありました。キムさんの作品をより良く見せるとするとどうしたらいいかなっていうのはわざとやってたので、僕は空間フェチなので、ゲストの位置も考えたりとか、キムさんにはそういった意味では良く遊ばせてもらいました。映像を作ってるメンバーとか、DMつくってくれた人とか、コピーを考えてくれた人とか、他にもいろんな人が関わってくれたんですけど、それはなんだかみんなが自分たちのお家を建ててくれたみたいな感じがしていて。そういう空間をやってみたいなって思ったときに、1人よりは2人の方が空間の広がり的にもいいなってのはあったかな・・・。

 

 

DMのイメージ

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G:構想だけはずっと前にあったというのを少し伺ったのですが

K:去年の9月?8月?ぐらいからですかね…?

 

G:いろいろお話をされましたか?

K:そうですね、たくさん話しましたね。けっこう会って…。

 

G:テーマに関しても相談されたんですね?

N:そうそう、まず作品をどんなかんじで作りたい?みたいな話はしました。僕は二人でやるときは合わせちゃったりするんで。もうなんか“決めないこと”を決めませんか?みたいなところにはなりました。

 

G:作品を再構築するといった、作品を見直すことになったりはしましたか?

N:僕の場合は20歳の頃の作品をわざと出してたりするし、最近のも出すし、こういうことやってたとか、そういうのを見てもらうチャンスかな、っていうのはありましたね。僕はいろんなことをやり過ぎちゃってるから、展覧会をやる時って1個の作風があるので、今回みたいなんじゃないといろんなものを見せられないのでよかったかな。

K:私は、今回は家というものがテーマにあったので、テーブルとかも初めて作って、椅子とかも前から作りたいと思ってたけどなかなか作れなかったものも、今回は作っちゃおう!っていう新しい作品を作れる機会になって。ほとんど新作をこの展覧に向けて作りましたね。こんな機会なかなか無かったので…。

 

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G:お二人でやるのは初めてなんですよね?

K、Q:初めてです。(笑)

K:出会ったのも去年ですし。

 

G:ずばりお聞きしますが、この展示をやってみていかがでしたか?

N:後半になったから言えるんですが、良かったと思います。やってみないと動かないし、展覧会ってやってみてまた次のことが起きるので、いろんな人に関わることとしてもあったし、展覧会としてもヴィジュアルとしても良かったかな!

K:私いろんなの引き出してもらっちゃって…。すごい私ばっかりQさんにディレクションしてもらって得しちゃった感があるんですけど。

N:いやいや!(笑)でもキムさんに今度これやったら?みたいなことがいっぱいあるんですよね。

K:なんか私の気付かなかったヴィジュアルとかああゆうことも一人では絶対やらないことも新しい部分もいっぱい引き出してもらって、私は(この展示を)やってめちゃくちゃ良かった、感謝の気持ちでいっぱいです。

N:いえいえ。吉田さんがいたからマークも作りましょうとか、Fecebook作りましょうとか、ふたりとも作品で精一杯だったけど、メディアにクロスすることや宣伝っていうのをやってくれたから、メディアの表現として広げていこうってなったときに一人だと満杯になっちゃうから、コラボレーションとしてこの機会にはちょうど良かったかな、ってかんじかな…。

 

G:コラボレーションってあんまりされないですよね?

N:しない!好きじゃない!(笑)

一同:えええ!(笑)

N:違うんですよ、普段の仕事がコラボレーションチックだから!ディレションという仕事をしてるので。実は結構、1つやりたいのは、自分じゃないアーティストのディレクション展をやりたいなっていうのはあった。キムさんに「こういう作品作ったら?」とかね。僕は展覧会も個人でやるから、ちょっとこのタイミングに二人展っていうのは半年以上前に決まったときに、自分にプラスになるように“こういうこともチャレンジだ”と思ってやるようにしました。まだわかんないけど、金とQ展というのをまた違う場所でやってみてもいいなっていうのもあるし、ブランディングとしてはFacebookとかマークとか3年後またお引っ越ししますとかゲストを変えるってことがあってもおろしろいかなと思います。

 

G:じゃあまた次回もあるかもしれないってことですね。

N:キムQ今度は金沢に引っ越しましたみたいな(笑)。韓国に引っ越しましたとか(笑)。引っ越しをテーマにやっても面白そうだね。

K:めちゃくちゃおもしろそうですね

N:ただ僕はこういうの考えるのが好きだから、こういうとき一人で考えるよりは広がりがあって、いいかなと思いますね。

 

 

 

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G:少し話題が変わりますが、お二人はたくさんの人がかわいいと感じられるものを作っていらっしゃいますが、“かわいい”とはどういうものでしょう?

 

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K:世の中にかわいいものっていっぱい増えてますよね。自分の作品もかわいいって言ってもらえることが多いんですけど、毒もあるって言われたり。…ってあれ、すいません話脱線してますね…。

N:いや、全然大丈夫だよ!(笑)脱線してないよ!(笑)

K:うーん、純粋にひとがハッピーになれるものだと思います。かわいいって思うことによってみんなが楽しくなったりして、かわいいものって素晴らしいなって思っています。

G:キムさんのぬいぐるみかわいいです!私も思います!まわりからもかわいいの声がたくさん聞こえて来ました。

K:今回の展示を見てて、大人も子供も純粋に普通にカーペットに寝転んだりしてる様子を見ると、かわいいものってみんなを童心に帰らせるんだなって、素晴らしいと思いました。

N:あれさ、超デカイの作った方がいいと思うよ!それでホワイトキューブで絨毯だけ、とか作ったらすごいかっこいいと思う。

K:おお…。

N:持ってきてもらったぬいぐるみをどんどんはぎあわせていったりとかしたらいい感じするよね。

 

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K:それ、いいですね。すごくいいと思う。

N:こういうの考えるのが好き!

K:うん、今回(の展示を)やってみてもっと大きくしたいなって思いました。

G:今回のソファーのカヴァーもぬいぐるみですよね?

 

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K:あれもぬいぐるみをはぎ合わせて作ったものです。

G:なんか上に座っちゃうのがもったいないような気がして…。

K:いやもう全然、また後で座ってみてください。作品だけど座ったりも出来て生活に根付くものが私もいいので、シャンデリアも作品だけど電気としても使えるみたいな。なので気にせず座ってください。

 

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G:ぜひ!座らせていただきます!では成田さん、“かわいい”についていかがですか?

N:かわいい、カワイイ…。なんだろう。いつも言ってるけど。

G:「かわいい」が好きだと伺いました。

N:かわいいって日本語だっけ?(笑)よく言われるのは、男性なのにかわいいがよくわかりますねとはよく言われていて、仕事上、アートディレクターをしているから、みんなのハートをキュンとさせるのが仕事なんだけど。けっこう自分は思ってないけど、自分がやったものがストレートにすごくかわいいと言ってもらえることが多いから、考えてるけど、自分がいいと思ったものがかわいいと言ってもらえてるだけかもしれない。かわいいためにわざとやってるけど、どこがかわいいかなってやるけど中途半端にはやらないかな。これいいでしょ?みたいな感じでやる。でも、かわいいっていいよね?かわいくないよりはかわいい方がいいよ。どっちかというと自分はかわいいで生きていくって決めてる感がある。

 

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K:うん、かわいいものはいいですよね。

N:もうさー国旗もハートにしたいもんね。赤丸じゃなくて(笑)

G:かわいいものを、という直接的な意志ではなく自分がいいと思うものを作っていらっしゃるということですね。

N:かわいくておしゃれかな、と思って作ってはいますね。“努力かわいい”じゃないけど自分のやり方でいろんな要素も入って、ただかわいいじゃないみたいな。

G:かわいいだけじゃないというのは何かお二人とも共通点がありますね。

K:そうですね、あまり意識したことが無かったのですが、出来上がったものは確かにかわいいと言われることが多いので…。ぬいぐるみがもともとかわいいと言われるものなのでしょうがないですかね。

G:ぬいぐるみはどう選んでいらっしゃるんですか?

K:いろんなところを出歩いて、気になったものを常に買うようにしています。

G:それは新しいものですか?

K:いえ、古いものです。新しいものはほとんど買わなくて、誰かが使ったものとか。

G:思い出が入っていますね。

K:そうやって考えると時々怖いんであんまり考えないようにしてます。誰が使ってたとかも、考えないようにしています(笑)

 

 

 

確かに知らない人が使っていたぬいぐるみはかわいいような怖いような…。Qさんのかわいい×キムさんのかわいいが合わさって、夢のような空間が生み出されていました。

次回のお引っ越しの展示はどんなものになるのでしょうか。お楽しみに!

 

 

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【プロフィール】

成田久

アーティスト・資生堂アートディレクター。1970年生まれ。

多摩美術大学卒業・東京藝術大学大学院修了。1999年資生堂入社。宣伝制作部のアートディレクターとして様々なブランド・CMを手掛けている。その他、ボニーピンクのCDジャケットのコスチューム、テキスタイルアーティストとしても活動。作品を定期的に発表している。 

キュキュキュカンパニー http://www.cuecuecuecompany.com/

 

 

 

金聖恵(Kim Songhe)

織田デザイン専門学校卒業後、デザイン活動を開始。

2005年、セレクトショップ「Loveless」にて展示したシャンデリア作品が注目を集める。それ以降、ぬいぐるみやアメリカン・トイなど既成のアイテムをコラージュする手法を用いた制作を中心に、ショップ空間のディスプレイなども数多く手掛ける。

2009年にはサンフランシスコやソウルの美術館などで作品を展示。

最近は、達磨や招き猫、熊手といった縁起物に注目し、多幸感あふれる作品を発表している。

http://www.kimsonghe.com/

 

 

 

 

「金とQの、狂った1LDK」

 https://www.facebook.com/Kimq1ldk

会期:2014年4月26日(土) 〜 2014年5月18日(日)

※展示は終了しています。

取材・撮影場所:AL

〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南3-7-17

http://www.al-tokyo.jp/

 

 

【開催中の展覧会】

187人のクリエイターとハンディキャップのあるつくり手の工房による

東北和綴じ自由帳展

 2014年11月26日(水)~ 12月20日(土)

11:00a.m.-7:00p.m. 日曜・祝日休館 入場無料

主催・会場 

クリエイションギャラリーG8

〒104-8001 東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F

TEL 03-6835-2260 



ガーディアン・ガーデン    

〒104-0061 東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F

TEL 03-5568-8818 



 

 

 

 

 

 

 

 

取材:橋本佳奈

撮影:洲本マサミ・荒田仁史