コロナ後の世界を模索したアーティストたちの軌跡「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 “ただ、いま、ここ”」
資生堂ギャラリーでは、2023年10月31日から12月24日まで、特別なアート展「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 “ただ、いま、ここ”」が開催中だ。
椿会は、第二次世界大戦後の1947年に資生堂ギャラリーが再開する際に始まったグループ展。資生堂に長く伝わる花椿マークにちなんで名付けられたこの展覧会は、アートが人々に希望と勇気を与える力を信じ、困難な時代にも開催されてきた。70年以上の歴史を持ち、時代と共に変わるメンバーと共に、資生堂ギャラリーの象徴的なイベントとして続いている。
本展示会は、2021年に始まった「第八次椿会」メンバーによるコロナ後の「あたらしい世界」をテーマとした3年間の活動を昇華させ、披露するもの。
第八次椿会のメンバーは、杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]の6組で、ジャンルを超えた活動やコラボレーションを行う現代を代表するアーティストたちから成る。彼らはコロナ禍を経て、世界やアートに対する新たな視点を模索してきた。
2021年の「触発/Impetus」 では、過去と現在の椿会を結びつける展示が行われた。2022年の「2022探求/Quest」 では、メンバー同士のアイデアを共有し、コレクティブな空間を創出。そして今年は、新たな価値観の探求を続け、「放置」と「無関心」という新しいキーワードを掲げ、常識や経験からの自由な解放、自然の流れに任せることや、意外な事物に関心を持つことで新たな共生や豊かな世界が生まれるということへの期待を表している。
本展では、アーティストたちがお互いを高くリスペクトしながら、近づこうとする3年間の関係性や経験を基に、集大成となる新作を発表。「ただ、いま、ここ」を大切にするというコンセプトのもと、彼らの創造性が昇華された作品を展示している。
いくつか展示作品を紹介すると、中村竜治は2本の柱と椅子を製作している。柱は本物の建物構造かと見紛う設えでつくられ、ホワイトキューブの空間に見事に馴染んでいる。中村は椿会にてこれまで壁やロープといった、同じように空間に馴染む作品を製作しており、「普段意識しないごく当たり前の柱や壁も、実は空間に劇的な変化を与えているのではないか。」「空間への意識を喚起できらたら。」と語っている。
杉戸洋は、緊張感のある展示空間をほっこりさせるようなFRP樹脂で製作されたサツマイモの作品を出展している。3年間の継続した他のアーティストとの共創について、杉戸は「何を出展するかは、プレゼント交換のような緊張感がある。」と語っており、数歩引いた視点から他の出展者を活かした展示となっている。
ミヤギフトシは、「3年間の1年目に発表した小説のフレーズや別プロジェクトで使っていたピンホールカメラ、今回展示している刺繍の作品が穴を通すような感覚で繋がった。」と語り、まさに3年間の集大成と呼べる作品を出展している。
3年間という長期にわたり、6組のアーティストが共に考え、制作するという稀な体験によって生み出された展示空間と作品をぜひこの機会にご覧いただきたい。
文=鈴木隆一
写真=新井まる
【参加アーティスト】
杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]
【展示会概要】
第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 “ただ、いま、ここ”
開催期間|2023年10月31日(火)〜2023年12月24日(日)
開館時間|11:00 〜 19:00(日曜日・祝日は18:00まで)
休館日|月曜日
入館料|無料
住所|〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル B1F
アクセス|東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口より徒歩4分、JR新橋駅銀座口より徒歩5分
電話番号|03-3572-3901