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会期終了間近!アートって何?が、きっと分かるーマルセル・デュシャンと日本美術【おすすめアート】

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2018年11月29日

会期終了間近!アートって何?が、きっと分かるーマルセル・デュシャンと日本美術【おすすめアート】


会期終了間近!アートって何?が、きっと分かるーマルセル・デュシャンと日本美術【おすすめアート】

 

 

 

 

マルセル・デュシャンとは誰か? レディメイドとは何か?

 

「現代アートの父」と呼ばれるマルセル・デュシャン(1887〜1968)。

 

便器に《泉》とタイトルをつけてアート作品にした出来事は有名ですね。

 

マルセル・デュシャンは、アートの新しい概念をつくった、美術史上においてとても重要な人物です。彼はどのような芸術家で、《泉》をはじめとするレディメイドとは何だったのでしょうか。

 

現在、東京国立博物館で開催中の「マルセル・デュシャンと日本美術」 では、

 

デュシャンの作品約150点がフィラデルフィア美術館から出展されています。

 

初期から《遺作》までの作品を通して、マルセル・デュシャンという人物や彼の作品の意味について考える展覧会です。

展覧会の様子を、ギュッとダイジェストでお伝えします。

 

 

 

第1部 デュシャン 人と作品

 

 展示室に入ると、さっそく「レディメイド」が出迎えてくれます。

 

マルセル・デュシャン《自転車の車輪》1964年(レプリカ/オリジナル1913年)フィラデルフィア美術館

 

 

 

第1章 画家としてのデュシャン

 

第1章は、デュシャンが少年時代に描いた可愛らしい絵から、彼が手がけた油彩画作品の中で有名な《階段を降りる裸体 No.2》(1912年)まで、初期の絵画から始まります。

 

マルセル・デュシャン《叢》1910−11年、フィラデルフィア美術館

左からマルセル・デュシャン《急速な裸体たちに囲まれるキングとクイーン》1912年 

同《急速な裸体たちに横切られるキングとクイーン》1912年 同《チェス・プレーヤーの肖像》1911年  全てフィラデルフィア美術館蔵

 

マルセル・デュシャン《階段を降りる裸体 No.2》1912年、フィラデルフィア美術館

 

 

 

第2章 「芸術」でないような作品をつくることができようか

 

「画家」を経て、デュシャンは絵画以外の「芸術」作品の創作をはじめます。

 

第2章では、《泉》(1950年レプリカ/オリジナル1917年)や、《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版》(1980年複製/オリジナル1915−23年)

 

といった見応えのある作品たちがズラリと並んでいます。

 

大ガラス東京版はデュシャンの死後にレプリカが制作され、デュシャン夫人が

 

制作中の複製作品を鑑賞しました。※1

 

 

 

第3章 ローズ・セラヴィ

 

ローズ・セラヴィとは、デュシャンの分身である女性です。

 

マン・レイが撮影した作品には、このローズ・セラヴィの他に、奇抜な髪型にした

 

デュシャンの姿もあります。

 

マルセル・デュシャン《マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による

(トランクの中の箱)》1935−41年、1963−65年(中身)フィラデルフィア美術館

 

 

 

第4章 《遺作》 欲望の女

 

第4章には、晩年のデュシャンの作品や、本人が写った写真などが展示されています。

ここでは、実際にデュシャンの最期の制作物となった《遺作》に関連した作品や、フィラデルフィア美術館での展示を撮影した映像を見ることができます。

 

マルセル・デュシャンによる「恋人たち」をテーマにした9枚のエッチング付アルトゥーロ・

シュヴァルツ著『《大ガラス》と関連作品』第2巻 1968年、ミラノ・シュヴァルツ画廊刊行物  フィラデルフィア美術館

 

第一部の展示は、最期まで鑑賞者を驚かせたデュシャンの初期から晩年までの作品を楽しむことができる内容になっていました。

 

 

 

第2部 デュシャンの向こうに日本が見える。

 

第2部では、東京国立博物館が所蔵する日本美術が展示されています。

 

デュシャンによって揺さぶられた鑑賞眼で日本美術と対面すると、新鮮な気持ちで作品を鑑賞することができることでしょう。

 

前代未聞の利休とデュシャンのコラボレーション、茶碗と便器の共演も見どころです。

 

 

 

第1章 400年前のレディメイド

伝利休作《竹一重切花入 銘 園城寺》安土桃山時代・天正18(1590)年 東京国立博物館

 

竹で花入を作ったといわれる千利休。

 

ありふれたものに美を見出した千利休の審美眼が、大量生産された製品に少し手を加えるだけで唯一無二の作品にしたデュシャンのレディメイドにつながることを示した展示です。

 

 

 

第2章 日本のリアリズム

 

遠近法・陰影法を駆使した写実絵画と、描かれる対象が記号化された絵画。

 

観念を重視したデュシャンの作品と、絵画に幸せや祝いの意味を込めた日本絵画など…。

 

第2部には、東京国立博物館の名作があります。

 

屏風、絵巻、掛け軸、浮世絵、工芸品など様々な日本美術作品が並んでいます。

 

デュシャンのように斬新な視点で美術品を見られる展示空間ですが、日本美術が好きな人が東京国立博物館の所持する至宝を純粋に楽しむことができる機会でもあります。

ぜひ、最後までお楽しみください。

左から 喜多川歌麿《歌撰恋之部・深く忍恋》江戸時代・18世紀 東京国立博物館 

    東洲斎写楽《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》江戸時代・寛永6(1794)年 東京国立博物館

 

企画特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」は、現代アートの先駆けとなったデュシャンの作品と、中世から近世の日本美術とのつながりを示した展示です。

 

この展覧会を楽しむ方法の一つは、「芸術」に対し肩に力を入れて臨むのではなく、「芸術」を気ままに味わうことです。

 

デュシャン自身も、「芸術」という概念を揺さぶろうと意気込んで作品を制作したというよりも、「芸術」を楽しんで幸福な晩年を過ごしたことがうかがえる彼の言葉が残っています。

 

  ーあるインタヴューで、(略)ひとが決して聞かないのだが、聞いて欲しいと思う

  問いがある、とおっしゃっています。それは「お元気でいらっしゃいますか」という

  のですが?

 

   大変元気です。健康はまったく悪くありません。(略)

   私はとても幸せです。

  

       (マルセル・デュシャン、聞き手ピエール・カバンヌ『デュシャンは語る』より)※2

 

 

 

 

※1三浦篤「『大ガラス』東京ヴァージョンについて」 松嶋雅人他著『東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展 マルセル・デュシャンと日本美術 デュシャンの向こうに日本が見える。』東京国立博物館、2018年、pp.75-78

※2マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ著、岩佐鉄男、小林康夫訳『デュシャンは語る』筑摩書房、2008年、p.228

 

 

参考文献

マシュー・アフロン他著『デュシャン 人と作品』フィラデルフィア美術館、2018年

松嶋雅人他著『東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展 マルセル・デュシャンと日本美術 デュシャンの向こうに日本が見える。』東京国立博物館、2018年

マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ著、岩佐鉄男、小林康夫訳『デュシャンは語る』筑摩書房、2008年

 

写真・文 耳塚里沙

 

 

 

【開催概要】
東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展

マルセル・デュシャンと日本美術
会期:2018年10月2日(火)~12月9日(日)
開館時間:9時30分~17時

ただし、金・土曜日、10月31日、11月1日は21時まで(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1,200(1,000/900)円、大学生900(700/600)円、高校生700(500/400)円
中学生以下無料
*( )内は前売り/ 20名以上の団体料金
*障がい者とその介護者一名は無料。

休館日:月曜日   10月8日(月・祝)は開館、翌9日(火)は休館
会場:東京国立博物館(平成館 特別展示室 第1室・第2室)
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9

アクセス:JR上野駅「公園口」より徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩15分、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
展覧会ホームページ:http://www.duchamp2018.jp/
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)



Writer

耳塚 里沙

耳塚 里沙 - mimizuka risa -

学生ライター。

大学では日本美術史を専攻中。

明治時代の洋画について勉強している。

美術館に行くことが好き。

将来は学芸員として美術館で働きたいと考えている。