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色彩への飽くなき探求心にドキリ! 『オットー・ネーベル展  シャガール、カンディンスキー、クレーの時代』

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2017年10月23日

色彩への飽くなき探求心にドキリ! 『オットー・ネーベル展  シャガール、カンディンスキー、クレーの時


 

色彩への飽くなき探求心にドキリ!
『オットー・ネーベル展  シャガール、カンディンスキー、クレーの時代』

 

 

ドイツ・スイスで活躍した画家「オットー・ネーベル」をご存知でしょうか?

 

彼の作品をパッと見たとき、クレーやカンディンスキーに似ていると感じるかも知れません。しかし、その創作の過程を知ったとき、他の画家とは全く異なるアプローチから作品を作っている画家だと分かるはず。

 

本展では、クレーやカンディンスキー、シャガールなど同時代の画家たちの作品も併せて紹介すると共に、ネーベルが実験を繰り返すように様々な画風に挑戦し、独自のスタイルを確立していく過程に迫ります。

 

 

 

 

 

 

1892年、ドイツのベルリンに生まれ育ったオットー・ネーベル。建築を専門に学び、のちに演劇学校にも通ったことから、美術だけでなく、建築、演劇、詩作など他分野にも精通していました。そうしたバックグラウンドが、その後の創作にポジティヴな影響を与えるのです。

 

やがてネーベルが過ごした時代は戦争の時代へ。ナチスが台頭したドイツで弾圧を受け、スイスのベルンへの移住を余儀なくされます。苦難を偲びながら芸術への情熱を失うことなく彼は真摯に制作活動を続けました。

 

 

左から) オットー・ネーベル 《避難民》1935年、グアッシュ、インク・紙、オットー・ネーベル財団 /パウル・クレー 《移住していく》1933年、チョーク・紙、厚紙に貼付、パウル・クレー・センター © Zentrum Paul Klee c/o DNPartcom /パウル・クレー 《恥辱》1933年、筆・紙、厚紙に貼付、パウル・クレー・センター © Zentrum Paul Klee c/o DNPartcom /パウル・クレー 《腰かける子ども》1933年、水彩・紙、厚紙に貼付、宇都宮美術館」

 

 

オットー・ネーベル 《避難民》1935年、グアッシュ、インク・紙、オットー・ネーベル財団

 

 

 

 

建築を学んでいたネーベルは、町の建築物の形と色を独自に捉えようと、都市の「建築シリーズ」を描きました。

顔を近づけてみると、細かな線が幾重にも重なって描かれていることに気づきます。

 

赤や青、緑の細かな線の重なりは、11本の糸が1つの生地を織りなす布のよう

 

「聖母の月とともに」では、色の異なる建物同士が風景のように溶け合っています。月の明かりは町に静かに映り込み、静かで厳かな情景として描かれています。

 

 

オットー・ネーベル 《聖母の月とともに》1931年、グアッシュ・紙、ベルン美術館

 

線を重ねる技法を「ハッチング」といいます。ネーベルは、線を重ねることで建物の重厚感をなくし、風景にふわりとした軽やかさを与えることに成功しました。

 

 

 

 

ネーベルのスケッチブックを見ると、線は緻密な計算のもとに描かれていることが分かります。

執拗なまでに描いた緻密な線は展覧会で間近に見ることをお薦めしたいです。線や色に対する並外れたネーベルの意識の高さを感じて頂けることでしょう。

 

 

オットー・ネーベル 《スケッチブック》1931年、インク・紙、一部に濃淡付け(28ページ)、オットー・ネーベル財団

 

生前のネーベルを知るクレーの孫、アレクサンダー・クレーさんが語ったというネーベルの性格をよく表すエピソードがあります。

 

ネーベルは彼のとある作品を見た友人から「全てが点とは…。変わった絵だね」と言われたそうです。即座にネーベルは「2872」と答えました。

 

彼は作品の中に描いた点の数を、正確に覚えていたのです。

妥協を許さず、作品に向き合っていたネーベルの姿勢が伺えますね。

 

 

 

 

1931年に3ヶ月滞在したイタリアは、ネーベルの心を惹きつけて止みませんでした。ネーベルは、イタリアの各都市の色や光、ニュアンスを記した「カラーアトラス(色彩地図帳)」を制作します。

 

 


オットー・ネーベル 《ナポリ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、 オットー・ネーベル財団

 

 

オットー・ネーベル 《ナポリ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、 オットー・ネーベル財団

 

ネーベルのカラーアトラスを見ると、町を構成する色や光はこんなにも多彩なものかと驚くはずです。

『シエナIII』では、レンガの赤土色が全体を支配し、部分的に赤錆色やオリーブ色がアクセントとなっています。ネーベルはこの作品にカラーアトラスを制作した体験を生かしています。

 

1935年、友人であるクレーがネーベルの作品群を見たときに、『とても価値のある作品集だ!』と話したそうです。

ネーベルは、色を体系的に採集し、色を中心に作品へ昇華させたのです。

 

 

 

 

オットー・ネーベル 《輝く黄色の出来事》1937年、油彩・キャンヴァス、オットー・ネーベル財団

 

本展はオットー・ネーベルの日本初の回顧展となります。

妥協を一切許すことなく芸術に向き合うネーベルの姿勢に、きっとあなたも心を打たれるはず。

是非、足を運んでみて頂きたいおすすめの展覧会です。

 

 

文:堀 有希子

写真:新井 まる、丸山 順一郎

 

 

 

開催概要
展覧会タイトル

『オットー・ネーベル展
シャガール、カンディンスキー、クレーの時代』

会期:2017年10月7日〜12月17日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜18:00(金、土〜21:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:11月14日
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学・小学生 700円

公式HP:http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel
巡回展:京都文化博物館 2018年4月28日(土)~6月24日(日)
In cooperation with Otto Nebel Foundation, Bern

 

 

〈参考文献〉

図録《オットー・ネーベル展》



Writer

堀 有希子

堀 有希子 - Yukiko Hori -

1985年、東京都出身。

企画の仕事の傍ら、2015年より水彩画を制作。

 

いつも見過ごしてしまうような日常の中から、瑞々しい大切な気持ちを表現したい、そんな気持ちを込めて水彩画を描いています。

 

Yukiko Hori insta https://www.instagram.com/yukko_96/

Yukiko Hori web site http://hapticart.net/