両国駅の路地裏に一つのギャラリーがオープンした。
ひとと、ひとの結び目(=knot)になりたい、そんな願いが込められた「knotギャラリー」。
長方形の大きな窓がギャラリーの様子を一つの作品の様に切り取っていた。
2/14(日)まで当ギャラリーでは、イラストレーター/アーティスト遠山敦さんの「STRANGE LINES」を開催中。
テーマは「瞬殺画」!!
「鳥」、「帆船」、「騎士」、「狛犬」から「ニュートリノ」までと、時代や地域を越えた作品が壁一面に
ズラリと並ぶ。
作品に近寄ってみると、丸や螺旋、三角など伸びやかで、どこか丸みを帯びた形が可愛いらしい印象。
一方で、部分的に引かれた太い線からは力強さが感じられた。
展示方法もユニーク。
線画を丸や四角、三角、又はモチーフに沿って大胆に切り抜かれ、イエロー、パープル、グリーン、ピンクなど
色紙にテープでペタリと貼られていた。
白を基調としたギャラリーの壁と、色紙の鮮やかなコントラストに思わず心が躍った。
のびのびとした形と強弱の効いた線で構成される遠山さんの線画。一見するとシンプルな印象。
例えば、こちらの作品を観てほしい。
「帆船に乗る3羽の鳥」の様子を描いた作品。
しかし、この船はどこへ向かっているのかも、場所や時代は中世頃の西洋か、など具体的な情報までは
読み取りにくい。
つまり、観ている側は作品を分かっているようで、実はあまり分からないのだ。
「シンプルでいて抽象的」な遠山さんの作品。
どんな想いで作品を作られているか尋ねてみると、「あまり深い想いはない」と意外な答えが返ってきた。
「(作品の)想いが深いと、受け入れる/受け入れない が人によって出てくる。
あまりそういうのがない。感情がある絵だと、受け入れられる人はいいけど、
ちょっと余り苦手な人は受け入れにくい。
…それより、形が面白い、面白い丸が描ける…とか意識している。
ストーリーがどうのとは、深く意識しない。」
そうだ。
つまり、描く側の遠山さんはあくまで形にこだわり、出来あがった作品は自由に観てほしい、といった印象を受けた。
遠山さんのお話から、美術館やギャラリーでよく目にする「作品のタイトル」や「解説(キャプション)」が、
当展覧会では見当たらなかったことに繋がっている気がした。
逆に作品に良い意味で「余白」があるからこそ、観る側はまるでぬり絵のように「この絵はこうなんじゃないか」と自由な発想で色を塗っていく。
何色を塗るかは観る人によって、違ってくる分、新たな遠山さんの作品たちが作り出されていくようだ。
また、あんなにも伸びやかな線画が自然に描けるのは、遠山さんが柔軟な発想を持った方だからだと思った話が
こちらである。
「いっぱい描いて、でも失敗したとこは見せたくないじゃないですか」
つまり、失敗個所を切り取っているうちに、作品として見せたい線画を色紙に貼ってテープで仮止めする展示方法を
ふと思いついたそうだ。
では、線画が色紙に対して小さめのこちらの作品。
一体、切り取られた個所にどんな絵が描かれていただろう・・・と気になって仕方なかった。
両国の新しいギャラリーで訪れる人の数だけ生まれる、新たな遠山さんの作品たち。
ふたつの「新しさ」をこの目で確かめてほしい。
文・写真/ かしまはるか
【情報】
遠山敦 個展「STRANGE LINES」
会場:Knot Gallery[両国]
〒130-0026 東京都墨田区両国3-16-11
会期:2016/1/30(土)〜2/14(日)
時間:12:00~19:00 (火・水曜日定休日)
お問い合わせ先: knot.ryogoku@gmail.com
◉お気に入りの展示作品の中からオリジナルTシャツを作れます。
1枚4000円(税抜き)※一部作品は除く
遠山敦
HP:http://atsushi-toyama.tumblr.com