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オープン・アトリエというエスパス ルイ・ヴィトンの新たな試み 「IN SITU-1」ソ・ミンジョン

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2014年12月2日


オープン・アトリエというエスパス ルイ・ヴィトンの新たな試み  「IN SITU-1」ソ・ミンジョン


オープン・アトリエというエスパス ルイ・ヴィトンの新たな試み

「IN SITU-1」ソ・ミンジョン

 

 

 

 

毎回、新鮮な最先端の現代美術を見せてくれるエスパス ルイ・ヴィトンですが、現在、パリ、東京そしてミュンヘンの3館共同のエキシビジョン『IN-SITU-1(イン・シトゥ=その場所で)』を開催しています。ルイ・ヴィトン本社で選考した、3人の若手女性アーティストがそれぞれギャラリーをアトリエとして、その場(in situ)で制作公開するという新しい試みです。

 

パリにはアンドレア・パワーズさん、ミュンヘンはシムリン・ギルさん、そして東京には韓国人アーティストのソ・ミンジョンさん。エスパス ルイ・ヴィトン東京では、9月より2ヶ月半に渡るオープンアトリエでの制作で完成させたミンジョンさんの新作と空間が11月28日に公開されました。

 

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以前、多摩美術大学にも通っていたというソ・ミンジョンさんは、現在はベルリンを中心に活躍しています。母国・韓国をはじめ、日本やドイツでの学びや経験を通して多文化的で普遍的な視点を併せ持ったアーティストです。本展におけるテーマは『創造と破壊』。ポリスチレン(発泡スチロール)や陶器などの脆いものを使って、それらを彫刻したり、砕いたり、傷つけることにより、生の儚さや不確実性、瞬間や時の概念を思い浮かばせる作品となっています。本展は2015年1月4日まで開催しています。

 

girlsArtalkでは二人のレポーターがレセプションに参加して、完成した作品を鑑賞してきました。

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◯裏作品は自分で作る図録!

藁科早紀

 

私は本展がはじまって一週目から、表参道に行く度にここに通って見てきましたが、なにより面白いと感じたのが私たちは見続けるだけではなく、自分たちでもこの作品を通して作品をつくれるということでした。

 

エスパス ルイ・ヴィトンでは、毎回、展覧会の図録を無償で配布してくれるのですが、今回の図録はなんと白紙! ここに通い、自分のスマホなどで写真を撮って、会場に用意されているプリンタで出力してそれをノートに貼ったり、自分の感想なり、時にはアーティストさんとお話したことを書いたりして、オリジナルの図録をつくれるというもの。これこそ本展で制作できる、まさに裏の作品といえます。

 

作品の制作過程を最初から見られ、その模様をギャラリーで記録したものを置いておくことだってできるのに、あえて自分が目にしたもののみで作成していくというのは、もの作りのプロフェッショナルである “ルイヴィトンらしい” 趣向だなと思い、ブランドに対する好感度が確実にあがりました。また自分たちで写真を撮ることにより、それをInstagramなどのSNSで共有しやすくなることから、ルイ・ヴィトンのギャラリーのイメージアップや、アートに興味はないけどがおしゃれなところは好き!という方も今回の展覧会に足を運ぶきっかけになると思いました。

 

残りおよそ1ヶ月のこの展示。今回の完成で終わり、ではなく、さまざまな方は足を運ぶことで、どんなフィナーレを迎えるのか、今後も期待して楽しみに見にいきたいです。

 

 

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◯破壊を通じて感じた、一瞬の儚さ

今出真由

 

今回、はじめてエスパス ルイ・ヴィトン東京でのレセプションに参加しました。このエスパス ルイ・ヴィトン東京は、ルイ・ヴィトンが展開するアートスペースとしては、パリの「Espace Culturel Louis Vuitton」に続いて世界で2番目にオープンした場所だそうです。

 

1階のショップフロアから直通エレベータで7階に上がると、そこは床も壁も白い空間。目の前には見上げるほどの大きな白い建造物がありました。ガラス張りの窓の先には青山の街が見下ろせて、真っ黒な夜景にその作品がとても映えていました。

 

韓国のアーティスト、ソ・ミンジョンさんが「創造と破壊」というテーマで制作したもので、あちこちが破壊されていて、しかしその破壊されたものは宙に舞っていて、どこか時間が止まってしまったような感覚を覚えました。都市の夜景は明るく輝いているのに、手前に置かれた建造物は今にも崩れ落ちそう。見下ろす景色は輝きを増し続けるように見えるのに対し、この作品は、その一瞬一瞬を精一杯生きる人々の不安定さを表している気がして、何だか儚く感じられました。

 

近くに寄って見てみると、それは発泡スチロールで出来ていて余計に脆さを感じました。発泡スチロールで出来ているなんて、全く想像が付きませんでした!

 

本展の「IN SITU-1」というのはラテン語で「その場で」という意味で、その名の通り、アーティストさんが作品を「その場で」一から作り始める、というものです。このような展示のしかたは通常の展覧会と異なり、作品の準備段階から、完成までの制作風景まで全部を見ることができるというもの。私たちは完成された作品を見ることはあっても、制作過程を見ることが出来る機会はめったに無いことなのでとても感激しました。

 

ソ・ミンジョンさんが大事にされているテーマが“時”というもので、この作品には“時”の中でも“瞬間” というものの儚さや脆さといったものが伝わってきたように感じられました。彼女がその作品に手を触れて破壊する瞬間、その前と後では全く違った作品になっていたと思うのです。同じように、人が何か決断をする“瞬間”の人の心はとても不完全で脆いものなのではないかと、ふと感じました。

 

“作品ができる過程”に目を向けた本展で、自分もアートを体験しているような気分にさせられました。

 

ソ・ミンジョンさんは展示会のインタビュー動画で、9月からの約3か月間は、作品のイメージやプラモデルの設計に始まり、破壊された建物のイメージ、本物の制作など様々な試行錯誤があったとお話しされていました。

 

一つのものに情熱をもって向き合い、新たな作品を創り出す、そのアーティストの姿や過程を見れば、みなさんの作品への思い入れなどもより深くなるのではないか、と感じたのでした。

 

 

 

 

 

 

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「IN SITU-1」

2015年1月4日まで開催中

ESPACE LOUIS VUITTON TOKYO

 

東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル 7F

 

 

<アーティスト>

ソ・ミンジョン

1972年、韓国釜山生まれ。現在はベルリンを拠点に創作活動を行っている。
母国である韓国に加え、日本、ドイツでの学びや経験を通して多文化的で普遍的な視点を併せ持ち、版画や陶芸、ファインアートの分野における豊富な知識を活かし、多様な素材を用いて、ドローイング、映像、写真や彫刻から立体作品、インスタレーションにいたる様々な媒体の作品制作を行っている。
あいちトリエンナーレ2013にて発表された、ポリスチレン製の巨大なインスタレーション作品『Sum in a Point of Time-III (ある時点の総体III)』は、いまだに記憶に新しいが、2010年、ドイツにて発表された『Summe im Augenblick(ある時点の総体)』(Bellevue-Saal, ヴィースバーデン)の流れに位置づけられ、吹き飛ばされた廃墟のような白い建物が、シンプルながらもドラマティックかつ詩的な雰囲気を醸し出し、作家の創作活動において最も重要なテーマである、時(瞬間、過去、あるいは未来)の概念や、生の儚さと不確定性を詩的に表現している。
これまでの個展でも、数々の作品を発表している: Perron1で『Porous Hands』(オランダ、2010年)、インサ アートスペースで『Fired White』(韓国、2012年)等。また、『Home Works 6』(総合文化フォーラム、べイルート、レバノン、2013年)、『Another Chain Bridge』(駐ハンガリー韓国文化院、ブダペスト、2013年)等、国際的に幅広くグループ展にも参加している。

アーティスト関連リンク:
http://www.seo-minjeong.de/

 

 

 

 

 

文:藁科早紀、今出真由

監修:チバヒデトシ

撮影:チバヒデトシ