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【リアル版】アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾REAL! 【レポート】

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2017年8月17日

【リアル版】アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾REAL! 【レポート】


 

【リアル版】アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾REAL!
〜2017年ヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクト編〜

 

 

 

 

アートオタクなぷさ天使のスパルタ塾が8月4日(金)の夜、リアル版でついに開講!会場は、表参道の路地裏に佇む一軒家ギャラリーCOCONANI左←→右。

 

 

アートのことになるといつも厳しいぷさ天使、リアル版は一体どれだけビシバシしごかれるのか…。不安顔のガールズアートーク代表・まる。
一方、そんなことはお構いなしのぷさ天使。観客の皆様が揃ったところで、アクセル全開の公開スパルタ塾がスタートしました。

 

 

 

 

2017年はヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクトという現代アートの3大国際展が同時に開催される10年に一度のスペシャルイヤー。
ぷさ天使のアドバイスを受けながら、まるもヨーロッパを周遊して、はじめて海外の国際展を実見してきました。

 

ヴェネチア・ビエンナーレに行ってきました!フォトレポート

 

 

ぷさ
ヴェネチア・ビエンナーレは2年に一度、ドクメンタは5年に一度、ミュンスター彫刻プロジェクトは10年に1度開催されていて、今年は3つ重なっているんだよね。
まる
私は6月の終わりから2週間、初めて海外の国際展に行ってきました!
ぷさ
じゃ、さっそく問題ね。3つの国際展の中で、1番歴史が長いのは?
まる
えっと、ドクメンタかな…?
ぷさ
ぶー!おい、そんなこともわかんないで行ったのかよ!
まる
(うぅ、今日はいっぱい怒られそう….。)

 

 

 

 

ぷさ
ヴェネチア・ビエンナーレがダントツで長く続いている。1895年から120年以上もの歴史を誇ってるんだ。2番目に長いのがドクメンタで第二次世界大戦後の1955年から始まった。そして、ミュンスター彫刻プロジェクトは1977年から。比較的新しいんだよ。
まる
そうだったんだ!
ぷさ
じゃ次の問題ね。この中で『美術のオリンピック』と呼ばれているものがあるんだけど、それはどれでしょう?
まる
それはわかる、ヴェネチア・ビエンナーレ!各国のパビリオンがあって競っているから。
ぷさ
よし、正解!
ヴェネチアの中にジャルディーニっていう広大な公園があったでしょ。そこに30国くらいのパビリオンがあって各国の代表選手のアーティストが選ばれて行くわけだよね。
まる
そうですよね!それではまずヴェネチア・ビエンナーレから見ていきましょう!

 

 

 

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ヴェネチア・ビエンナーレ2017
VIVA ARTE VIVA アート最高!芸術万歳!

 

イタリアのヴェネツィアで1895年から開催されている現代美術の国際美術展覧会。2年に1度、奇数年の6月頃から11月頃まで開催されている。オリンピックのように国が出展単位となっており、参加各国はヴェネツィア市内のメイン会場となる公園やその周囲にパビリオンを構えて国家代表アーティストの展示を行う。  

 

2017年の総合キュレーターはクリスティーヌ・マセル。テーマはVIVA ARTE VIVA(芸術万歳!)

 

まるが注目したのは、ベストパビリオン賞(金獅子賞)を獲得したドイツ館のパフォーマンス作品、アンネ・イムホフ《ファウスト》。

 

 

 

 

 

ドイツ館のドアの前にはドーベルマンが2匹檻に入れられている。パビリオンの床はガラス張りで、パフォーマーは音響に合わせて奇妙に絡み合いながらその上を這いずり回る。観客の間近で、歌ったり火を燃やしたり水を撒いたりと様々なパフォーマンスをしながら、作品の世界観へ巻き込んでいく。

 

 

Anne Imhof《Faust》2017

 

 

ぷさ
リレーショナルアート(関係性の美学)の発展バージョンだね。外観は牢獄を思わせる。ドーベルマンやシャッター、ガラス張りの部屋は牢獄や政治的暴力のメタファーといえるだろうね。そして、パフォーマーがそれらに抗う肉体を表現しているという政治的なコンセプトの作品だ。

 

 

続いて派手な外観の韓国館。

 

 

 

 

比較的小さな館ながらもコンセプチュアルな展示内容で魅力的だった韓国館は、ぷさ天使のおすすめ。

 

 

https://theculturetrip.com/asia/south-korea/articles/south-korean-pavilion-explores-national-identity-at-2017-venice-biennale/

 

 

Lee Wan《Proper Time》Through the revolution from the moon, 2017 ©arts council Korea and Lee wan

 

 

様々な職業の人の体感時間を時計の針の速さで表現している《プロパータイム》。中央には顔のない象徴的な人民像。

 

 

 

 

『考える人』の台座にあけられた穴に鑑賞者がお尻を入れて、自らが考える人をやる装置。ウィットに富む作品はぷさ天使のお気に入り。

 

 

強烈なインパクトと臭いを放っていたイタリア館。
展示室の中にはドーム型のビニールハウスのような部屋があり、キリストのミイラを模した作品が数十体並ぶ。展示室の中ではマシーンでカビを培養しており、会場全体に強烈な臭いが満ちている。

 

 

 
Roberto Cuoghi 《Il Mondo Magico(The Magic World)》The Imitation of Crist 2017

 

 

ぷさ
くせーな!こいつのせいか!みたいな。
まる
臭いだけじゃなく展示内容も強烈でした。キリストのミイラが何十体もあって。
ぷさ
これは、キリストがカビてるんじゃないんだ。
まる
え、どういうこと?
ぷさ
これは「カビという生物によってキリストを再生させるプロジェクト」なわけ。つまり「キリスト再誕」なんだ。生物的なエネルギーを使って生き返る。
まる
なるほど。
ぷさ
これは不快なリレーショナルアートだよね。カビは空気を伝ってオレらの体に入ってくる。
まる
うん、そうですね。
ぷさ
やっぱり不快になるっていいよね。
まる
え?うん…。まあ何も感じないよりは良いですよね。
ぷさ
(俺の説明分かってんのかな、こいつ…!)

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ファインアート研究の最先端!
ドクメンタ14

 

まずは、ドクメンタが開催されるまでの歴史的な背景をレクチャー。

 

ぷさ
ドクメンタは、ナチ独裁体制下で退廃芸術として弾圧された20世紀の前衛芸術運動の作家たちの名誉を回復させる展覧会として、1955年にスタートしたんだ。
まる
退廃芸術って?
ぷさ
ナチスが当時の前衛芸術を自由で危険な思想として弾圧したんだ。作品は退廃的なものとして蔑まれたり壊されたりして、芸術家たちは迫害されたんだよ。そういう歴史的背景があるから、ドクメンタは政治的な要素がいまでも強いんだ。
まる
そんなにつらい歴史があったんだね。

 

 

 

 

 

 

メッセージ性の強い作品が多く、コアなアートファンはドクメンタ好きが多いのだそう。まるもその一人。たくさんの写真の中からお気に入りの作品を選りすぐって紹介した。

 

 

 

 

 

 

2017年のアーティスティックディレクターのアダム・シムジックが掲げたテーマはLearning from Athens(アテネから学ぶ)。2017年は、ドイツ・カッセルとギリシャ・アテネでの異例の2都市開催となった。

このテーマが示す意味とは?

 

 

ぷさ
アテネはギリシャの首都。古代ギリシャは西洋美術のルーツで壮大な歴史があるよね。でも、ギリシャ危機で経済が破綻して大きな問題を抱えている。政治経済とアート、両面からアテネに学ぶという意味合いであると考えると、そもそもテーマからして政治的であることがわかるでしょ。
まる
ふむふむ、勉強になります。

 

 


Marta Minujín《The Parthenon of Books》

 

 

約10万冊の発禁本のパルテノン神殿。象徴的な作品だ。

 

 

 

 

興味深かったのは、1970年代からポルノ女優として活躍し、性をテーマとした数々のアート作品を手がけてきたアニー・スプリンクル。

 

 

 

知識人とポルノスターのパンツがテレコになって飾ってある。

 

 

 

 

ぷさ
これは自分の性器を覗かせるというデュシャンの《遺作》へのオマージュだね。

 

 

 

まるとぷさ天使が一番面白かった!すごく笑った!と口をそろえた映像作品 ローイ・ローゼン《ダストチャンネル》。「ロシア系ユダヤ人の架空の詩人コマー・ミシキンに捧ぐ作品 3部作の最終章」だという。イスラエルの富裕層の家庭を舞台に物語が不可思議なオペラで展開していく。

 

https://vimeo.com/172709053

 

 


Piotr Uklanski 《Real Nazis》

 

 

ピョートル・ウクランスキーのナチス将校や幹部の写真を並べている作品。ブロマイドのようにキメて撮ってあり、一人一人名前が書かれている。

しかし、その中で「Unknown(氏名不明)」が多いことに驚かされる。

 

ぷさ
ナチスの非人道的な殺戮は名もなき人々によって実行されたということだね。それはつまり、人間は誰でもナチスになる可能性があるということを示しているんだよね。

 

命令のままに殺人を行う凡人が一番恐ろしいという悪の本質を書いたハンナ・アーレント著『エルサレムのアイヒマン』を引用しながら説明。「悪は名指しできない」または「悪は私の中にもありえる」というリアリティが表現されていると解説した。

 

 

 

 

 


ぷさ
ドクメンタの全体的な感想はどう?
まる
やっぱり政治色が強かったですね。でも、クスッと笑えるような作品も多かった。そういうのが好きだったな〜。
ぷさ
今年はドクメンタらしかったね。派手な展示はないし、全体的には地味地味なんだけど良作だけを集めてる、そういうところがさすがのドクメンタでした。

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ミュンスター彫刻プロジェクト2017

 

 

 

 

 

ドイツ北西部の都市ミュンスターで、10年に一度夏の間だけ開催されるアートイベント。市街地や公園など町全体を活用した屋外彫刻展で、アートと公共空間、芸術家と市民、生活との関係がテーマとなっている。芸術家が事前に町に滞在し、町や住民のことをよく調査した上で作品と設置場所のアイデアを出し、滞在制作し作品を設置するというやり方を1970年代から取り入れていたことが特徴。

 

町中に設置される作品を通して、芸術家も市民も芸術と公共性の関係について考えさせられる。

 

作品が盗まれてた!

 

 

 

 

 

 

オルデンバーグの巨大貯金箱。中身が貯まったら壊して寄付するそう。

 

 

 

 

鑑賞者が水の中を渡る参加型の作品。

 

 

 

 

シカゴ生まれのアーティスト、マイケル・スミス。前回と今回の参加アーティストによるデザインの中から、ミュンスターの高齢者たちに選んでもらい入れ墨をする。

 

 

ぷさ
さて、初めての海外の国際展を巡る旅はどうだった?
まる
すごく楽しかった!それに勉強になりました。本当に世界中の作品が見れたし、何日も連続してアートに触れて、インプットが増えたことで自分の目が肥えていくのが実感できた。
ぷさ
そうだね、高揚感があるよね。世界はすごいなって思う。
まる
また行きたい!
ぷさ
ヴェネチア・ビエンナーレをアートのお祭りとすると、ドクメンタはファインアートの研究や勉強。で、ミュンスターは地域アートなわけ。
まる
なるほど。
ぷさ
今回は全部に共通していたことがあると思うんだよ。それはなんだと思う?
まる
う〜ん、世界平和!かな。
ぷさ
そう言ってもいいね。言い換えれば、みんながアートやアーティストに期待している。アートには力があることをどの展覧会も前面に押し出してたね。
まる
うん。

ぷさ
でも、それは時代や社会状況が非常に悪いからだと思う。アートに期待していただくのは、アート業界の我々にとってはありがたいことだしチャンスだけどね。だけど、アートには世界を変えることはできないからね。
まる
そうかな?

ぷさ
アートに頼らざるを得ないような世界は非常に悪いと俺は思うね。「アートには何かできるに違いない(と信じたい)」っていうギリギリの期待感が出ていたと思う。すごく難しい時代だなってことを全体のテーマとして感じたね。

 

 

 

 

リアル版のスパルタ鑑賞塾、いかがだったでしょうか?

 

会場には、これから渡欧して3大国際展を回ろうと計画中の方も。おすすめポイントやアドバイスをする場面もありました。

 

今後のスパルタ鑑賞塾にも乞うご期待!

 

文 :五十嵐絵里子
出演:花房太一、新井まる

 

 

【過去のスパルタ鑑賞塾はこちら♪】
第1話:国立博物館編
第2話:東京国立近代美術館編
第3話:横浜美術館編

 

 

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花房太一 HANAFUSA Taichi

美術批評家、キュレーター。1983年岡山県生まれ、慶応義塾大学総合政策学部卒業、東京大学大学院(文化資源学)修了。牛窓・亜細亜藝術交流祭・総合ディレクター、S-HOUSEミュージアム・アートディレクター。その他、108回の連続展示企画「失敗工房」、ネット番組「hanapusaTV」、飯盛希との批評家ユニット「東京不道徳批評」など、従来の美術批評家の枠にとどまらない多様な活動を展開。 ウェブサイト:hanpausa.com



Writer

五十嵐 絵里子

五十嵐 絵里子 - Eriko Igarashi -

大阪藝術大学芸術学部文芸学科卒業。
2015年に美術検定1級取得。都内で会社員をしながら、現在アートナビゲーターとして活動中。
山形県出身、東京都在住。