【リアル版】アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾REAL!
〜2017年ヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクト編〜
アートオタクなぷさ天使のスパルタ塾が8月4日(金)の夜、リアル版でついに開講!会場は、表参道の路地裏に佇む一軒家ギャラリーCOCONANI左←→右。
アートのことになるといつも厳しいぷさ天使、リアル版は一体どれだけビシバシしごかれるのか…。不安顔のガールズアートーク代表・まる。
一方、そんなことはお構いなしのぷさ天使。観客の皆様が揃ったところで、アクセル全開の公開スパルタ塾がスタートしました。
2017年はヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクトという現代アートの3大国際展が同時に開催される10年に一度のスペシャルイヤー。
ぷさ天使のアドバイスを受けながら、まるもヨーロッパを周遊して、はじめて海外の国際展を実見してきました。
ヴェネチアの中にジャルディーニっていう広大な公園があったでしょ。そこに30国くらいのパビリオンがあって各国の代表選手のアーティストが選ばれて行くわけだよね。
ヴェネチア・ビエンナーレ2017
VIVA ARTE VIVA アート最高!芸術万歳!
イタリアのヴェネツィアで1895年から開催されている現代美術の国際美術展覧会。2年に1度、奇数年の6月頃から11月頃まで開催されている。オリンピックのように国が出展単位となっており、参加各国はヴェネツィア市内のメイン会場となる公園やその周囲にパビリオンを構えて国家代表アーティストの展示を行う。
2017年の総合キュレーターはクリスティーヌ・マセル。テーマはVIVA ARTE VIVA(芸術万歳!)
まるが注目したのは、ベストパビリオン賞(金獅子賞)を獲得したドイツ館のパフォーマンス作品、アンネ・イムホフ《ファウスト》。
ドイツ館のドアの前にはドーベルマンが2匹檻に入れられている。パビリオンの床はガラス張りで、パフォーマーは音響に合わせて奇妙に絡み合いながらその上を這いずり回る。観客の間近で、歌ったり火を燃やしたり水を撒いたりと様々なパフォーマンスをしながら、作品の世界観へ巻き込んでいく。
Anne Imhof《Faust》2017
続いて派手な外観の韓国館。
比較的小さな館ながらもコンセプチュアルな展示内容で魅力的だった韓国館は、ぷさ天使のおすすめ。
Lee Wan《Proper Time》Through the revolution from the moon, 2017 ©arts council Korea and Lee wan
様々な職業の人の体感時間を時計の針の速さで表現している《プロパータイム》。中央には顔のない象徴的な人民像。
『考える人』の台座にあけられた穴に鑑賞者がお尻を入れて、自らが考える人をやる装置。ウィットに富む作品はぷさ天使のお気に入り。
強烈なインパクトと臭いを放っていたイタリア館。
展示室の中にはドーム型のビニールハウスのような部屋があり、キリストのミイラを模した作品が数十体並ぶ。展示室の中ではマシーンでカビを培養しており、会場全体に強烈な臭いが満ちている。
Roberto Cuoghi 《Il Mondo Magico(The Magic World)》The Imitation of Crist 2017
ファインアート研究の最先端!
ドクメンタ14
まずは、ドクメンタが開催されるまでの歴史的な背景をレクチャー。
メッセージ性の強い作品が多く、コアなアートファンはドクメンタ好きが多いのだそう。まるもその一人。たくさんの写真の中からお気に入りの作品を選りすぐって紹介した。
2017年のアーティスティックディレクターのアダム・シムジックが掲げたテーマはLearning from Athens(アテネから学ぶ)。2017年は、ドイツ・カッセルとギリシャ・アテネでの異例の2都市開催となった。
このテーマが示す意味とは?
Marta Minujín《The Parthenon of Books》
約10万冊の発禁本のパルテノン神殿。象徴的な作品だ。
興味深かったのは、1970年代からポルノ女優として活躍し、性をテーマとした数々のアート作品を手がけてきたアニー・スプリンクル。
知識人とポルノスターのパンツがテレコになって飾ってある。
まるとぷさ天使が一番面白かった!すごく笑った!と口をそろえた映像作品 ローイ・ローゼン《ダストチャンネル》。「ロシア系ユダヤ人の架空の詩人コマー・ミシキンに捧ぐ作品 3部作の最終章」だという。イスラエルの富裕層の家庭を舞台に物語が不可思議なオペラで展開していく。
Piotr Uklanski 《Real Nazis》
ピョートル・ウクランスキーのナチス将校や幹部の写真を並べている作品。ブロマイドのようにキメて撮ってあり、一人一人名前が書かれている。
しかし、その中で「Unknown(氏名不明)」が多いことに驚かされる。
命令のままに殺人を行う凡人が一番恐ろしいという悪の本質を書いたハンナ・アーレント著『エルサレムのアイヒマン』を引用しながら説明。「悪は名指しできない」または「悪は私の中にもありえる」というリアリティが表現されていると解説した。
ミュンスター彫刻プロジェクト2017
ドイツ北西部の都市ミュンスターで、10年に一度夏の間だけ開催されるアートイベント。市街地や公園など町全体を活用した屋外彫刻展で、アートと公共空間、芸術家と市民、生活との関係がテーマとなっている。芸術家が事前に町に滞在し、町や住民のことをよく調査した上で作品と設置場所のアイデアを出し、滞在制作し作品を設置するというやり方を1970年代から取り入れていたことが特徴。
町中に設置される作品を通して、芸術家も市民も芸術と公共性の関係について考えさせられる。
作品が盗まれてた!
オルデンバーグの巨大貯金箱。中身が貯まったら壊して寄付するそう。
鑑賞者が水の中を渡る参加型の作品。
シカゴ生まれのアーティスト、マイケル・スミス。前回と今回の参加アーティストによるデザインの中から、ミュンスターの高齢者たちに選んでもらい入れ墨をする。
リアル版のスパルタ鑑賞塾、いかがだったでしょうか?
会場には、これから渡欧して3大国際展を回ろうと計画中の方も。おすすめポイントやアドバイスをする場面もありました。
今後のスパルタ鑑賞塾にも乞うご期待!
文 :五十嵐絵里子
出演:花房太一、新井まる
【過去のスパルタ鑑賞塾はこちら♪】
第1話:国立博物館編
第2話:東京国立近代美術館編
第3話:横浜美術館編
花房太一 HANAFUSA Taichi
美術批評家、キュレーター。1983年岡山県生まれ、慶応義塾大学総合政策学部卒業、東京大学大学院(文化資源学)修了。牛窓・亜細亜藝術交流祭・総合ディレクター、S-HOUSEミュージアム・アートディレクター。その他、108回の連続展示企画「失敗工房」、ネット番組「hanapusaTV」、飯盛希との批評家ユニット「東京不道徳批評」など、従来の美術批評家の枠にとどまらない多様な活動を展開。 ウェブサイト:hanpausa.com