アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾
~東京国立博物館編~
こんにちは! girlsArtalk編集長のまるです!
元々アートが好きだったものの、あまり知識がなかったわたし。編集長として勉強を続けていくうちに前よりは詳しくなってきたものの、まだまだ勉強が必要。
そこで、プライベートでもアートを学ぶべく、都内の由緒正しい美術館や博物館を回ることにしました。
今回選んだのは、上野の東京国立博物館。常時3,000件以上の作品が展示されていて、創立140年以上の歴史ある博物館とのこと、期待が高まります! GOGO!
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いざ、トーハク!
というわけで、東京は上野の東京国立博物館(トーハク)にやってきました!
何度か取材に来たことがあるけれど、プライベートでゆっくり見られるのは楽しみ! よ~し、早速中に入っちゃおーっと。
やだ、小さいおっさんが見える……。わたし、死ぬのかな……。
無礼者! 小さいおっさんではない! アートエンジェル「ぷさ兄」だ!
こ、こんにちは、ぷささん……。わたし、真面目にアートを勉強しに来ただけなんですが、どうして怒られなきゃいけなかったんでしょう?
では聞くが、おぬし、今日ここに来て最初に何を鑑賞するつもりだった?
ヒッ……! 何で怒るんですか? あ、もしかして縄文土器から見たほうが良かったです?
そういう問題ではない! 博物館や美術館に来たら、まず最初に鑑賞するべきものがあるだろ。そんなダメダメなお前には、1日くっついてみっちり指導してやるぞ!
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見なきゃ損! 博物館に着いたら、まずは建物鑑賞から
東京国立博物館本館
あっ、屋根が瓦で、壁はコンクリートでできている……?
そうだ。つまり和洋折衷なんだよ。本館は「帝冠様式(ていかんようしき)」と呼ばれるんだ。
そうだ。コンクリートや鉄筋でつくられた建物に、伝統的な瓦屋根が載せられた建築手法のこと(※諸説あります)で、色んな文化をミックスするのが上手な日本らしい建築とも言える。
確かに言われてみたら面白いですね。本館を建てた人は有名な建築家だったんですか?
良いところに目をつけたな。本館を建てた建築家は「渡辺仁」(わたなべじん)という方で、和光(元服部時計店)など、他にも有名な建物も建てているんだ。
東京国立博物館にはその他にも、法隆寺宝物館をはじめとして、有名な建築家が建てたユニークな展示館があるから見に行くといい。
そう! だから作品鑑賞の前に建物を見ることはとっても重要なんだ。
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本館で最初に見るべきは、キュートな土偶
建物も勉強したし、いよいよ本館の中ですね!ぷさ先生、よろしくお願いします!
せ、先生!?……ようし、しっかり教えてやるからついて来いよ!
遮光器土偶 秋田県美郷町六郷石名館出土 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 J-36558
2016年12月11日(日)まで、本館1室にて展示中
そうだね。これは「遮光器土偶」と呼ばれている。イヌイットが雪原で日差しを遮るために使用していた「遮光器」に似ていることから、この呼び方が生まれたんだ。
か、かわいい……ちなみに、ぷさ先生のメガネも遮光器ですか?
これは天使界のZ〇FFで買った度入りメガネです……。
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仏が人に近づいた時代「鎌倉時代の仏像
重要文化財 十二神将立像 鎌倉時代・12~13世紀 神奈川・曹源寺蔵
2017年2月5日(日)まで、本館11室にて展示中
次は鎌倉時代の仏像だ。名前を「十二神将像立像」という。鎌倉時代の仏像はそれまでのものと性格が異なるんだ。どんなところだと思う?
正解! 仏様の身体つきがリアルになって、より人体に近くなっているよね。これは、写実的な表現が進んだという証拠なんだけど、それは時代背景と結びついているんだ。
このころって元寇や国内の戦で、世の中が不安定になっていただろ? 不安な時代だからこそ、人の形に近い、いわば“身近な仏様”が必要だったと言われている。
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華やかさの違いが出る2つの焼き物「鍋島」と「伊万里」
次は「焼き物」だ。鍋島と伊万里という2つの種類の焼き物を紹介していくぞ。まずは鍋島から。
そうなんだよ。「鍋島」は元々特権階級のためにつくられたもので、華やかさの中にも繊細さが見られる。
そうだね。伊万里は日本で最初の磁器として作られ、のちに多く輸出されるようになったものなんだ。外国の人にはわかりやすい豪華絢爛さがあるほうが、人気が高かったんだろうね。
このころ伊万里が大量に輸出されたことで、世界のJaponismのイメージが“伊万里的”になったとも言える。
ほ、褒めてなんかいないぞ! 調子に乗るなよ! 黙ってついて来い!
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教科書でも見た2人の巨匠 日本画と洋画のチャンピオンとは
最後に紹介するのは、日本画と洋画のチャンピオンだ!
すごい! まずは日本画のチャンピオンからお願いします!
任せておけ! 日本画のチャンピオンは横山大観(よこやまたいかん)という人だ。ここに並べられている作品は瀟湘八景(しょうしょうはっけい)だよ。
昔、授業で習ったことがあるかも。でも先生、どうして横山さんは日本画のチャンピオンと呼ばれているんですか?
横山大観は、日本画のチャンピオンにして創始者ということですか!?
あながち間違いじゃないね。西洋の絵や技法を真似た絵しかなかったんだけど、横山大観はそれまでになかった技法で、「朦朧体」というオリジナルの形をつくりあげた点で高く評価されているんだ。
あれ? それまでも洋画はあったのに、どうして彼が洋画のチャンピオンなんですか?
確かにそれまでも新しい画材はあったんだけど、油絵という新しい画材を自分のものにできた、というところに彼のすごさがあるんだ。近代日本洋画の最初の画家といえる。
たとえば、モチーフ。有名な「鮭」や「豆腐」の絵など、西洋絵画にはないものを描けているよね。
うーん、でもそれって、たまたま日本のものを油絵で描いたってだけなんじゃないですか?
もちろんそれだけじゃないよ。もう一つは、「日本的なリアリティ」。たとえば肖像画も西洋のリアリズムからすれば下手だけど、対象の人となりが分かるような描き方がされていると思わない?
それから、肖像画についての話だけど、肖像画と政府の関係性は面白くて、国家戦略的な意味合いが強く出ている。肖像画については政治の歴史をひも解きながら見ていくと面白いかもしれないね。
アートを学ぶってことは歴史を知るってことなのか。ますます学ぶことが出てきて大変だけど、頑張るぞ!
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突然ですが、ライターの佐々木ののかです。
今回は紹介しきれませんでしたが、特集展示や刀剣の展示室、土偶のレプリカに触れることができる考古展示室、春と秋にだけ一般公開される庭園など、たくさんの見どころがあった東京国立博物館。
展示室だったところを3年前にリニューアルし、地下から移転してきたミュージアムショップは、高い天井を活かした開放感が爽快。居心地の良い空間で、何時間でも過ごせてしまいそうでした。
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まとめ「アートは歴史と一緒に学ぶことで深みが増す」
歴史を学ぶことで、より深くアートを知れることがわかりました! 鑑賞のポイントもわかったし、おうちに帰って早速日本史と世界史を勉強しなおさなくちゃ!
いい心がけだぞ、まる。俺のおかげで良い編集長になれそうだな。
はい! 最初は小さいおっさんが現れて、破竹の勢いとものすごい表情で説教されたから正直ドン引きだったけど、信じて付いてきて本当によかったです!!!
ようし、家に帰って勉強だ! ぷさ先生、わたしのおうちまで一緒に来てくれますか?
バカを言え! 誰がお前の家になんか行くか! 俺は忙しいんだ! それからまた会う日なんてないぞ! それに、伸びしろしかないお前がどこまでパワーアップするか見ものだな。
ひどい! わたし、頑張っちゃうんだから! それじゃ、今度こそさよなら!
アートオタクな天使に見守られながら、girlsArtalk編集長まるの挑戦は続く。
文:佐々木ののか 写真:吉澤威一郎
出演:花房太一、新井まる
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