アートを巡って佐賀を横断!『SAGA Dish&Craft』
〜嬉野・武雄・伊万里エリア〜
伊万里焼や有田焼…有名な窯元が点在し”焼きものの里”というイメージが強い佐賀県。
そこに、”新しいアート”が出没しエキサイティングな31日間、SAGA Dish & Craft後編!
”舞台となるのは、カフェ、レストラン、公共施設。
この”新しいってアート”は美術館や空き家でなく、「焼きものの里の日常」をアートにしています。
未知ないくるアートとの出会いを、まちをめぐりながら存分にお楽しみ下さい。”
~DISH & CRAFT (ディッシュアンドクラフト) 公式HPより~
ということでさっそく残る3エリアの取材リポートです。
(前篇の唐津・有田エリア記事はこちら)
”佐賀を元気に”という共通の思いはありながらも、それぞれに考え方やアプローチの方法が異なり大変面白かったです。沢山の写真と、アーティストの皆さんの言葉をなるべく引用して、エリア毎に実況中継のようにお送りしたいと思います!
大久保兄弟 さん(嬉野エリア)

映像作品を手がける大久保兄弟さんは、その名のとおり本当にご兄弟!お兄さんと弟さんの絶妙なコンビネーションで出来上がった作品が見られるのは、嬉野にあるおしゃれカフェ「224 shop+saryo」。オーナーの辻さんご自身が陶芸も手がけるデザイナーさんでもあり、カフェもショップも随所にこだわりが感じられます。
おしゃれ店内に入ると、オープニング当日も妥協することなくギリギリまで修正作業を行う大久保兄弟のおふたりが!
作業中にもかかわらず、girls Artalk編集部が図々しくもお話を伺うことができました。
girls Artalk編集部:
今回の作品は“嬉野らしさ”が凝縮されたような素敵な映像ですね!制作で気をつけていたこと、大切にしていたことなどはありますか?

大久保兄弟さん:
僕らは現地に滞在できた期間が約1週間しかいない上にほとんど作業に取り組んでいたので実は嬉野を回りきれていなくて…嬉野についての知識はもはや観光にきた外国の方と変わらないんです。だからこそ嬉野でまだ見れていない見たかったものも含めて、素敵だとおもうものを詰め込みました!
僕らのフィルターを通した”嬉野の良いところ“みたいな。いや、もう雑誌”るるぶ”みたいな(笑)。あれって表紙の見出しでその土地の良いもの、観光名所とか全部わかるじゃないですか!あれです。この約9分間には嬉野らしさが凝縮されています。
girls Artalk編集部:
お茶摘みもまるでダンスのようだったし、映像の登場人物が、キャラが立っていて良い味が出ていましたよね。なんだか、所々に見覚えのある顔が……ご本人が出ていたような……?
そうなのです(笑)よく気が付きましたね!お茶摘みの子はうちのアシスタントの子で、クルクル回転しているのは大久保兄弟の弟で、白衣を着ているのは兄です。(ぜひ見つけてみてくださいね!)
あとは、場所もとても気に入っているんです。というのも、アートをわざわざ見に来た人じゃなくても、例えば温泉に来てたまたま展示を見つけてくれる人もきっといますよね。
そういう人たちも「あ、なんか音楽聴こえる!見に行く?」って、ふらっと来て、見て、「なんか楽しい!」って思ってくれたらそれでいいかなって。“なんか楽しいもの”を作りたいだけです。それが難しいのかもしれないけど(笑)もうカオスでもいいかなって思っています。
girls Artalk編集部:
作中にでてきた白いナマズ?のような生き物が気になりましたが、あれは何ですか?
大久保兄弟さん:
白いなまずは神の化身だそうです。嬉野で見ることができた灯篭の展示の中に出てきたものなんですが、すごいエンターテイメント性があって刺激を受けました。
それ以外にも実際に現地に来て、地域の芸術の盛んさにも驚きましたね。市長自らすごく前向きにアート活動に取り組んでいたりして。東京以上に、新しいものを取り入れることへの積極性も感じていて…外国の方も多くてとてもインターナショナルだったりもするので、今回の会場となっている「224 shop+saryo」で作業していると佐賀にいることを忘れてしまいます(笑)
そう語りながらも納得のいくまで作業を続ける二人のプロ根性に感動しました。
会場の「224 shop+saryo」は、昼はカフェ、夕方は英会話教室、夜はバーだったり、DJが入る音楽イベントを開催したり…とかなり面白いスペースになっています。
2階のショップにはオーナーである辻さんの作品の他にも、辻さんが欲しいと思ったいろいろな雑貨が販売されています。
ショップにはビートたけしさんデザインのコラボ品も展示されています(売っていないのが残念ですが)めちゃくちゃかわいいので、立ち寄ったらこちらもチェックしてみてくださいね。
ランハンシャ(武雄エリア)
おしゃれな一軒家のイタリアンレストラン「trattoriYa Mimasaka」では、普段CM制作などを手がける株式会社ランハンシャさんによるプロジェクションマッピングが投影されます。
夜だけ楽しめる約3分程のファンタジックなエンターテイメントは見てのお楽しみですが、
実際に制作を担当されたランハンシャの田代さんにお話を伺いました。
girls Artalk編集部:
レストランで、しかも店内や建物にではなくお庭に投影するということで、苦労したことはありましたか?
ランハンシャ 田代つかさ さん:
建物のように平面で直線に囲まれたような面以外に投影するのが初めてで、まずお店の庭を計測するところから始めたのですが、計測だけで1週間程かかりました。そして“茶色い土に映す”ことが思った以上に難しくて。映像をPC上で作っているのですが、画面で見ていたイメージと、投影したときがかなり違って……。投影のリハーサルに来たときに色が全然でなくて、星屑のような映像はもはや見えなくて(笑)。それぞれ色を強調して、星は大きい粒にして…といった感じで急遽修正したので、無事に間に合ってよかったです。
girls Artalk編集部:
最初の神秘的で“静”なイメージから星空に溺れるような映像になって、最後とてもカラフルでポップな音楽と画面いっぱいのかわいいキャラクターが躍る…といった映像のストーリーはどういった思いで作られたのですか?

ランハンシャ 田代つかさ さん:
“武雄らしさ”っていうのは駅の方の作品に込めていて、こちらにはあえて出していません。そして“庭だから“ということにも捉われずに、誰が見ても楽しいと思えるものにしたかったのです。だから実は最後のカラフルなパートは最初に決まっていて、創っていく上で一番最初のパートに全く反対の要素を入れようか…と考えて、スタートは静寂で神秘的なお庭を活かしたものにしました。
3つのパートも強弱、スピード感を変えて、どんどん楽しくなるイメージを意識しました。
お食事をしているお客さんも皆手をとめてプロジェクションマッピングに夢中で、「あ、あの木に顔が!」「あっちからはなんか走ってくるよ~~!」と大盛り上がりでした。ランハンシャさんは普段はCMを作っているということですが“プロジェクションマッピングは観る人の反応が生で感じられるのも嬉しい“とキラキラした笑顔で語ってくださりました。
このお庭だけのためにつくった、ここでしか観ることができないプロジェクションマッピングなので是非お立ち寄りください。
和‐KAZU‐さん (伊万里エリア)

川沿いにあるお洒落なのにあたたかい雰囲気のカフェLIB COFFEE-IMARI。
こちらで展示されているのはなんと佐世保市観光名誉大使第一号で、ミュージシャンや写真家と色々な顔を持つ和-KAZU-さんのドローンで撮った空撮写真。
それに加えて本イベント”DJⅠ Phantom4 Pro”では、ドローンの販売台数世界70%を占めている人気メーカーDJIの最新機種をつかったワークショップも行いました。
イベントに来た人たちの目の前でドローンを実演し、リアルタイムで映像作品を作りました。
【DJI Phantom4 Pro】4K60P 伊万里空撮
電波は4キロ先まで、また色々作業すると72キロ先まで届くということで、人の目では見られなかった角度からの”伊万里”を楽しめます。
「今回のイベントのテーマが”つなぐ”だと聞いてとても共感しました。町と町、世代…多くの人をつないで、地域のために動きたいなと思いました。
そのためにはまずは自分を知る、つまり町を知ることって大切だなと思いました。
空撮によって、こんなに自分たちの町が綺麗だということ、こんなところがあったのかということ等、新しい発見に気づきましたね。」
と語っていた会場のLIB COFFEE-IMARI オーナー森永さん。

店内に展示されている空撮写真は解説を聞くまで海外のビーチリゾートだと信じて疑わなかったのですが、なんと伊万里市のイマリンビーチ。その土地に住む方々も驚くほど綺麗な伊万里市。きちんとオーナーの目標は達成されていました。
普段ミュージシャンであり、写真家の一面もある和-KAZU-さん。
ドローンは去年の5月から勉強を始めて(ドローン検定というものがあるらしいのですがもちろん1級とのこと!)今もまだ詳しく研究中とのこと。
好奇心旺盛で勉強家な和ーKAZU-さんの美しい風景写真に囲まれて、美味しいコーヒーやスムージーを召し上がってください☆

橋や川沿いの壁にも伊万里焼が・・・お散歩もとっても楽しいです。
以上、前編・後編あわせて5つの市を旅し5組(6名)のアーティストを取材しました。
いかがでしたか?
筆者は過去に5以上の地域の芸術祭に足を運んでいますが、こんなにも”日常生活”の中で行われているイベントは初めてでした。カフェや飲食店の方も積極的に参加していて、アーティストの方だけではなく、地域の方々の強い思いを感じました。
佐賀県は東京から飛行機を使えば約2時間でつきます。しかし町を歩きながら取材してみるとその土地ならではの建物や雰囲気が今もきちんと残っていて”ああ、旅行に来たな”という実感がわいてくる素敵な県でした。
その一方でこのような企画もですが”新しいものを受け入れる”文化も強く感じました。

地域の芸術祭の醍醐味は”その土地、そしてそこで生きる人に出会う”ことだと思います。
『SAGA Dish&Craft』は3月20日で終わってしまいますが、まだ佐賀県に行ったことない方は是非一度旅行してみてはいかがでしょうか。
文: 山口 智子
写真:新井 まる