girls Artalk2周年記念★ファイナル企画
国境を超えた人類愛「歓喜の第九」感動を振り返る
昨年末、girls Artalkでは設立2周年のファイナル企画として
韓国を代表するソウル・フィルハーモニー管弦楽団と日本の東京フィルハーモニー交響楽団の、アジア2代オーケストラが初めて同じ舞台に上がるという史上初の演奏をプレミアムシートで愉しむイベントを開催しました。
写真:合唱団も入り、約300名が一つの舞台に立つという奇跡とも言える瞬間。
「歴史に残る名演」とはまさにこのこと。
「第九」は年末の風物詩として有名ですが、
ベートーヴェンによる最後の交響曲として知られる「交響曲第九番=第九」には、
“人類愛と協調による平和”というメッセージが込められているのはご存知でしょうか?
昨年、戦後70年を迎えた日本。そして、それと同時に日韓国交正常化50周年を迎えました。
韓国のソウル・フィルハーモニー管弦楽団と日本の東京フィルハーモニー交響楽団による
日韓友情を示す「歓喜の第九」合同演奏会では、日本と韓国双方の歩み寄りが見られました。
第一バイオリン、第二バイオリン、チェロといったパートごとに半分ずつ奏者を出し合いながら、
ソウル公演では東京フィル、東京公演ではソウルフィルが各パートのリーダーを務めるといった、
それは過去にもほとんど例のない2つの楽団のメンバーを混ぜる
とても面白い趣向を試みた混成部隊による演奏会だったからです。
そして、2つの楽団からなる混成オーケストラによる合同演奏という離れ業を可能にしたのは、
「アジアの宝」と言われているチョン・ミョンフン氏の存在がとても大きなものでした。
本公演の指揮を務めるチョン氏は2001年に東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドバイザーを就任し、
2006年からはソウル・フィルの音楽監督を務めており、両楽団を知り尽くしていると言っても過言ではありません。
美しいシンフォニーが響いた演奏後には
双方の完璧なまでのハーモニーを、観客はスタンディング・オベーションで讃えました。
ステージのあちらこちらではソウル・フィルと東京フィルの両楽団のメンバーが
抱き合いながら互いの演奏に賞賛する姿も大変印象的でした。
写真:演奏後、抱擁しながら互いの演奏を賞賛する両楽員。
日韓において歴史的な問題が存在していることは否めませんが、
東京フィルやソウルフィルには日韓以外にも様々な国籍を持った人たちが多数在籍しています。
そんな彼らが世界共通言語とされる「音楽」にのせて「第九」に込められている
「人類愛」というメッセージを発信する意味合いを今一度見つめなおすいい機会かも知れません。
未だ解決の糸口が掴めていない、紛争、テロ、難民、飢餓、環境、エネルギーなどの様々な問題。
これから人類は平和への道を進むことができるか?!という深い問いかけとともに、
未来を生きる私たちに何か訴えかけられていると同時に何かを試されているような…
そんな気分になりました。
現実の世界では第2楽章が始まったばかりなのではないでしょうか。
第3楽章の安らぎを湛えた音色、そして第4楽章の『歓喜の歌』までの道のりは遠いかもしれませんが、
クラシック音楽も世界平和も、その美しい音色や人の声に耳を傾ける人が増えるようになれば、
“人類愛と協調による平和”のテーマに、少しずつ近づけるかもしれません。
文:新麻記子
写真:上野隆文
写真提供:東京フィルハーモニー交響楽団