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第27回東京国際映画祭 後編 「ティム・バートンからクロージングまで♪ girlsArtalk的東京国際映画祭レポート」

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2014年11月14日

第27回東京国際映画祭 後編 「ティム・バートンからクロージングまで♪ girlsArtalk的東京


27回東京国際映画祭が1031日、閉幕しました.

girlsArtalkでは初めての映画祭取材を敢行! ライターの藁科早紀(左)と高野麻衣が、六本木ヒルズで行われたオープニング・セレモニーから歌舞伎座での特別上映、クロージングの授賞式まで、好奇心いっぱいでレポートします。

前半はこちら>>>http://girlsartalk.com/event/17044.htm

■『ティム・バートンの世界』展オープニング・セレモニー(藁科早紀)

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111日のティム・バートン展に先駆け1031日のハロウィンに行われたオープニング・セレモニー。壇上には監督ご本人とオフィシャルサポーターのお笑い芸人「ピースのお二人が登場しました。

綾部さんが『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカ、又吉さんは『シザーハンズ』のエドワードに扮していました。又吉さんの手のはさみがよく出来ており、マイクを持つのが難しいのか手が震えていて、会場のみんなを湧かせていました。

この日、ティム監督の左胸ポケットにはウルトラマンのキャラクター「ダダ」が。なんと監督は大のウルトラマンとゴジラ好き。ということでダダ本人(?)とピグモンとガンキューもお祝いに駆けつけました。

ティム監督は大喜び! いつまでも童心の様に怪獣たちを見て喜ぶ姿と大人な男性風のティムが相まって、あの楽しいティム独特のキャラクターや、少し社会風刺的に描く映画が誕生するのだと納得しました。

ティム監督はその後、ウルトラマンの怪獣たちとともに鏡開きならぬかぼちゃ開き。会場にはたくさんのマシュマロの雨が降ってきました。これには報道陣も大喜び! みんなでマシュマロをキャッチしました。

ハロウィン好きなティムの展覧会らしいセレモニーでした!

 

『ティム・バートンの世界』展 内覧会(高野麻衣)

 

ティム・バートンといえばダーク・ファンタジー、それが私の認識でした。不気味だけれどかわいいキャラクターたちも、90年代の『シザーハンズ』や00年代の『アリス・イン・ワンダーランド』のような映画も、時代時代のゴス少女たちの心をとらえています。

ところが、会場に広がっていたのはまるっきり男の子の夢の王国!

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エドガー・アラン・ポーの詩『大鴉』への傾倒などゴシック要素もわずかにありましたが、目立つのはゴジラをはじめとする怪獣、『バットマン』や『チャーリーとチョコレート工場』を彷彿とさせるメカなどなど。日本が大好きなわけだわ、と妙に納得してしまいました。

 

不気味だけれどかわいい怪獣が点在する秘密基地のような空間は、ダニー・エルフマンのサントラに心躍る少年や元・少年にはたまらないはず。これを機会に、観たことのないいくつかの作品に挑戦してみようと思います。

 

NEW!![2/15追記]

ティム・バートンの世界(大阪開催)

期間:2015227()419()

会場:グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル イベントラボ

http://www.tim-burton.jp/

 

映画鑑賞記(高野麻衣)

 

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『紙の月』/

「映画祭の女王」としての存在感をみせつけた女優・宮沢りえの主演作。舞台は1994年。銀行の契約社員として働く主婦・梨花(宮沢)は、偶然知り合った大学生・光太(池松壮亮)との時間のために金銭感覚を狂わせ、ついには横領という犯罪に手を染めていく。

この小説の実写化はドラマに次ぐものだが、前作では「なぜ梨花が堕ちていくのか」が謎のままだった。その点を宮沢さんは、モノローグが一切ないにも拘らず、その圧倒的な存在感――どこか尋常じゃない危うい雰囲気だけで説明してしまう。こんなにすごい人だったんだ、と驚愕した。41歳の彼女が、いわゆる美魔女のような人工的な美しさでないところにも、大きさと自信を感じた。池松壮亮も夫役の田辺誠一も、同僚の大島優子ら女優たちもあてがきのように役にハマっていた。

『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督作品という時点で期待していたことだが、冒頭の讃美歌から世界に引き込まれる、完全なる音楽“的”映画でもあった。「その場面で音楽が流れること」にきちんと意味がある。今作での音楽は、梨花の感情の高まりとイコール。何かに引き寄せられるように光太と恋に落ちるときの音楽も、セックスを重ねるうち無音になっていくのも、ともに印象的だった。若い男、そして横領した巨額の富で美しくなっていく梨花。一見すると悪女だが、不思議と清々しい。聖と俗が入り混じった物語の果ての、生命力を感じる幕切れも忘れられない。

 

『百日紅』スペシャルプレゼンテーション/

江戸風俗研究家であり、漫画家でもあった粋人・杉浦日向子の原作をもとに、一世を風靡した浮世絵師・葛飾北斎を父に持ち、自身も浮世絵師として活躍したお栄を描いた意欲作のプレゼンテーションにも出席した。監督は『河童のクウと夏休み』などの美しいアニメーションで知られる原恵一。

お栄と、彼女をとりまく人々を通じて江戸の町人文化を生き生きと描いた傑作とあって、ディテールへのこだわり方が尋常ではない。江戸の町並みや、北斎の『東海道富岳三十六景』をもとにした幻想シーンなどを見せてもらったが、なにより魅力的なのは主人公のお栄。男勝りというより、けだるげでいなせな遊び人そのもののような風貌で、ちらっと見ただけでも華がある。文化系女子に人気が出るだろうことがわかるので、いっそタイトルを英題のMiss Hokusaiに近づけるのもありだな、と感じた。「北斎の娘」、それだけでもワクワクする題材ではないだろうか。プレゼンは監督とタッグを組むスタジオIGのプロデューサー松下氏をメインに行われたが、彼女が一番言いたかったのは「お栄は自分の生きたい道を自分で選びながら、時々弱気になったりする。私たちと同じです」という一言だと思う。完成を心待ちにしたい。

 

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『くるみわり人形』/

チャイコフスキーの三大バレエのひとつ、そしてクリスマスの風物詩としておなじみの『くるみ割り人形』。その名作をE.T.A.ホフマンの原作に忠実に描き出した実写人形アニメ―ション(1979年)があって、これはある年代以上のひとには忘れられない体験だったそう。あの感動をもう一度!と、増田セバスチャンによる現代の色彩美術をまとってリメイクしたのが今作。

個人的には、昭和50年代の応接間文化そのもののシックな現実世界の描写が好み。クララやドロッセルマイヤーといった登場人物の人形(これは79年当時のものだそう)もかわいくて、製作したサンリオの底力を感じる。なによりすばらしいのは、新たに声を演じた有村架純(クララ役)。夏公開の『思い出のマーニー』でも感じたことだが、この人の声の正統派プリンセス感からは目が離せない。幼いころ大好きだった『小公女セーラ』や『若草物語』を彷彿とさせるクラシック感に、気持ちがほぐれていく。脇を固める市村正親や由紀さおりは当然だが、フリッツ役の松坂桃李も好演だった。きゃりーぱみゅぱみゅによるEDも悪くはないが、そこはチャイコフスキーでよかったかも。

 

『進撃の巨人 前編』/

巨人がすべてを支配する世界を舞台に、巨人の餌と化した人類の抵抗と自由への闘いを描く大ヒット・アニメーションの劇場版。シガンシナ陥落からトロスト区奪還戦までを描いたテレビシリーズ13話分を再構成し、2時間に凝縮している。その興奮密度とスピード感たるや! スクリーンの効能を存分に活かした隙のない展開といい、悲鳴をあげずにいられないリヴァイ兵士長の登場といい、映画として見事に再創造された小林靖子脚本に舌を巻いた。はじめて観た外国人プレスなども、人類の敗北から勝利まで、のひとつの物語として楽しめたはず。

個人的にはあらためて、主人公エレン・イェーガーに象徴される「自由(外の世界)を渇望する少年たち」という題材が好きだと痛感した。南仏カルカソンヌにも似た美しい城塞都市や、複雑にからみあう軍部の軋轢、クーデターの兆しといったディテールも、洗練されてわかりやすく、迫力が増しているように感じた。少年マンガだからと気負わず、試してほしくてたまらない。西洋史や英雄伝、軍記ものが好きな方はきっとお気に召すはず。エンディングに流れるLinked Horizonが耳の奥に住み着き、明日も闘おうという気力がわいてくるだろう。

 

東京国際映画祭に参加して

 

「今回はじめて参加した東京国際映画祭。映画好きな人からイベント好きな人までいろんな人たちが会場に足を運んでいました。普段気軽に行くであろう映画……東京国際映画祭にはちょっぴり普段よりおしゃれして足を運ぶ。そんな光景がよく目に入りました。たくさんの映画好きな人々が集まりたくさんの人が目を輝かせ映画を見る。それはきっと映画がはじめて出来たその瞬間から何十年も変わらなくて、今後もその人々の喜びは変わらないでしょう。映画とはたくさんのひとを夢の世界に誘ってくれる魔法のようなものだと思いました。来年もまた素敵な映画に出会わせてくれるだろうと信じて、一年後を楽しみにしています」(藁科早紀)

 

「観客として足を運ぶことも多いのですが、レッドカーペット等の関連イベントは初参加でした。これがほんとうにおもしろかった! 気合を入れてしっかりプレゼンしようとしている作品は、やっぱり劇場に足を運んで観たくなる。なぜ映画祭を開催するのかといえば――これは音楽祭にも芸術祭にも共通することですが――第一にはそのジャンルのファンの拡大が目的のはず。もともとの愛好者の交流も大切ですが“こなれ感”が前面に出てしまうと、せっかくのハレの場がだらしのない空間になってしまうとも感じました。“ともにハレの場をつくる”という大人の成熟が、日本の文化やジャーナリズムにはもっと必要だと、気合が入りました。

その点で、やっぱり最高のハレの場は歌舞伎座でした。他ジャンルとの融合はいかなるときもチャレンジング。意義あるあたたかな行事に参加することができて、ほんとうに幸運でした。そして勉強になりました。来年は、もっとたくさんの作品やイベントに顔を出したい!」

(高野麻衣)

 

取材・文:藁科早紀、高野麻衣

構成:高野麻衣

27回東京国際映画祭

20141024日~31日・六本木ヒルズ他にて開催

http://2014.tiff-jp.net/ja/