日本橋NICAにて開催されたエキシビション「Garo Romance」は、世界各地で活躍する注目若手アーティストを集め、
私たちに新しい世界観を広げてくれる、Wooly Arts・鶴田正人氏による企画展である。
会場の中でも、一際個性的で独自の世界観を放っているSabrina Horak(サブリナ・ホーラク)さんの作品たち。
カラフルな色合いだけど、どこか奇妙な雰囲気を醸し出している。
…一体、どんな作家さんなんだろうか? !
そんな疑問を胸に抱きつつgirls Artalk編集部では、作品の制作や本人の素顔に迫るべくインタビューすることにした!
日本とオーストリアのハーフというSabrina Hora(サブリナ・ホーラク)さん。
とても美しい容姿の彼女は絵画と彫刻の要素を併せもった作品を制作しています。
ウィーン美術アカデミーを卒業してからアーティスト活動した後、2013年から日本へと拠点を移し、東京藝術大学に在籍しながら今もなお活動をつづけている。
こんな素敵な彼女が、あの強烈な作品を本当に作っているのだろうか?!
ドキドキしながら質問をしてみた。
girls Atalk編集部 (以下G):
作品のテーマを教えてください。
Sabrina Hora (以下S):
作品のテーマはパラダイスです!
私は人工的なパラダイスについて研究しています。
作中に描かれている人々は、プールで過ごしているひとときを、パラダイスに来ているものだと考え、彼らの”パラダイス”を表現しています。
今回が日本で3回目の展示となる彼女。
前回につづき、展示されている作品たちはどれもパラダイスがテーマである。
G:
どの作品も手作り感がありますが、制作過程を教えてください。
S:
2006年から木材を使い始めました。
試しにアルミニウムを切り取ってみたりもしましたが、すごく嫌だったんです。
そして木材を使ってみたら暖かさが出てきて、とても良かった。…そして使い易い!
立体の人物は鉛筆でベニア板に下書きして切ります。色はアクリル絵の具で塗っています。
製作期間は大きいので6週間くらいで、毎日10時間描いて1ヶ月半くらいですかね。
でも、そんな制作していられないですが(笑)
私たちに見えないところでは、ベニア板を切り出したり、輝くような色彩で描いたりと、パワフルな制作をしているようだ。
G:
二つの国の血が混ざっているという自身のルーツから、何かしら作品に繋がる影響はあるのでしょうか?
S:
皆さんは少し変だと思うかもしれませんが…十代の時に、日本のおばあちゃんが送ってくれる日本の食材のラベルが面白くて、それを切り取ってコラージュしていました。
ラベルは生かしてないのですが、コラージュの形は少し影響しているかもしれません。
レイヤーを生かしたりして組み合わせたりすることもありました。
私は2005年10月から2007年1月東京造形大学に留学していたのですが、 新宿や渋谷の人々が沢山いるのが面白くて!ウィーンでは無い光景なので…ウィーン美術大学では卒業制作のような形で、日本の交差点を歩く人々をモチーフにした作品を制作しました。
*コラージュ:ありとあらゆる性質とロジックのばらばらの素材(新聞の切り抜き、壁紙、書類、雑多な物体など)
を組み合わせること
*レイヤー:画像をセル画のように重ねて使うことができる機能。
祖母との関係から生まれる、彼女にとっての”日本”という存在。
彼女は自身のホームページで、日本は旅行や短期間での滞在経験しかなく、良いところしか知らないため、自身にとっての日本は楽園のようなイメージがあった。と、語っている。
また、ウィーン美術大学在学中に東京造形大学との交換留学経験は、彼女の価値観や世界観を変えたようだ。
G:
作品を拝見していると…作中に描かれている人々は、どこの人種やどこの国にも属さないように描かれていると感じたんですが、自身でも気にかけて制作されていたりするんですか?
S:
人種は特定していません。
人の顔は細かく描かないようにしていますから、誰を描いているかは気にしていません。
ランダムに人の写真を切り取って制作しています。
日本人とオーストリアのファッションって全然違いますよね!でも、水着だとみんな同じように見えるかも。
彼女の2013年以降の作品を見ていると、曼荼羅を想像させるようなものが目についた。
G:
曼荼羅をイメージされているように思えたんですが、そこには意図が込められているんですか?
S:
実はシンメトリーの作品を描いて、その作品を製作し始めてから、曼荼羅っぽいと言われるようになったのです。始めから曼荼羅に興味があったわけではないんです。シンメトリーな作品を制作した理由は、人の視線を一つに集める事ができるかもしれないと思ったからです。
…なるほど。
彼女自身はじめから曼荼羅を意識していたわけではないようだ。
それでも、絵のタッチやテーマは変わらないのにも関わらず、シンメトリーにする事でここまで強烈な印象を与えるのは、彼女の作品が元々持っているパワーの凄さを証明している。
今回の展示で唯一の新作を見せてもらった。他のものとは少し異なった作風だ。
なんと完成したのは展示の1週間前とのこと!
作品について彼女は…
S:
フラットな平面を解体して、くっ付けてみました。
シンボリックにしてみたんですが、インドイズムや曼荼羅からインスピレーション受けているのかもしれません。まだ、実験作品なんですが…
と、語る。
アンダーワールドをイメージした、少しグロテスクな作品も、是非見て欲しい。プールの作品に限らず、様々な表現にもチャレンジしている姿が伺えた。
彼女の作品へ対する思いを伺えたところで、”素顔のSabrina Horak”について迫ってみる事にした。
G:
作品は個性的なんですが…プライベートや制作時以外は何をしているんですか?
S:
旅行が好きです!日本国内、外国でも…最近では仙台に行きました!仙台にある感覚ミュージアムに前から行きたかったんです。
去年はソウルとニューヨークに初めて行きました。熱海にも行きましたし、旅行はだいたい一人で行きますね。
私は初めて彼女の作品を見たとき、強烈な個性を感じて派手な作家さんのイメージを思い浮かべていたのだが、実際に会ってみると、透き通るようにさわやかで繊細な方であった。
さらに、現在は東京大学の博士課程に所属しながら制作し続ける、非常にまじめで勉強熱心な作家であったのだ。
2013年から日本を活動拠点にしているSabrina Horakさん。
今後の活動について聞いてみると…
S:
今後も日本で活動していきたいです。オーストリアにはあまり帰りたくない。
または、ニューヨークでの活動にも興味があります。
作品は、もっと大きな作品を作っていきたい!
インスタレーションも作っていきたい思っています。それも曼荼羅のような作品になると思うので、もっと研究していきたいと思っています。
最後にGirls Artalkの読者へのメッセージをお願いした。
ー好きな事をして、生活をして欲しいです。自由に。ー
まるで自由に表現者としての道を選んだ彼女自身のような答えが返ってきた。
今後、彼女の勢力的な活動に目が離せなくなりそうだ。
【アーティスト情報】
Sabrina Horak(サブリナ・ホーラク)
1983年オーストリア生まれ、2007 年ウィーン美術アカデミー卒業。
ウィーンでアーティストとして活動した後、2013年から日本へ拠点を移す。現在は東京藝術大学美術研究科油絵専攻在籍中。都市社会が造り出す人工楽園「PARADISE(パラダイス)」と、そこに存在する群集との関係性をテーマに絵画と彫刻の要素を併せもった作品を制作。
アクアリゾート施設やスパリゾート地で寛ぐありのままの人間の姿・形を連続的に縒り合せ構成されたシンメトリックで「曼荼羅」のような精密なフォルムを板から切り出し、その上に輝くような色彩と明暗で人々を描き出す。
HP:http://www.sabrina-horak.com