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伊藤桂司+小町渉展 アーティスト対談

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2015年4月20日

伊藤桂司+小町渉展 アーティスト対談


アーティスト:伊藤桂司さん、小町渉さん

ライター:今出真由、写真:洲本マサミ、企画:丸山順一郎

 

渋谷(PLACE) by methodで行われた「伊藤桂司・小町渉展」でお二人にインタビューすることが出来ました☆

 

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広告や音楽のアートディレクションで広く知られる伊藤桂司さん

アーティストとして世界的に評価される小町渉さんのお二人が

「カセットテープ」を題材に、往復書簡のようにお互いのコラージュに

コラージュやドローイングを重ね、共作していった今回の作品展。

その背景や、お二人の制作スタイルについてたくさんお話を伺ってきました。 

 

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(敬称略)

今出真由(以下今出):この度お二人が初めてのタッグを組んだ経緯を教えてください。

 

伊藤桂司(以下伊藤):以前、恵比寿NADiffの3FにあるTRAUMARIS(トラウマリス)で小町さんの作品と出会ったのがきっかけです。

 

小町渉(以下小町):僕は2年前に東京から京都にアトリエを移しています。

伊藤さんは京都造形芸術大学で教授をやられていて、京都に月に何度もお見えになられていたり、お互い同じ雑誌で同時に仕事していたり、僕が伊藤さんのファンであったり、とても近いようで今まで一度も会ったことがない状態でしたのでお会いしてみましょうかということになり、

そこから始まり一緒に展覧会をやろうという話になりました。

 

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今出:今回のテーマは、なぜ「カセットテープ」なのでしょうか。

 

伊藤:僕らは若いころからずっと、カセットをバイナル(レコード盤)同様によく聴いているので、カセットのオブジェとしての面白さや、アナログメディアの身体的な感触を含めた上での再発見をしたいと考えていました。

そんな中、小町さんからカセットテープをテーマに一緒に展示をやりませんかというお誘いがありました。

 

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小町:実は、カセットが現在アメリカで流行っているようなんですが、僕はそのことは知らなかったんです。

日本では今一般的にほとんど誰も聴いていないし、聴く機会もない。

デジタルな時代だから反対に不便なもの、捨てられてきたもの、埋もれていたものにスポットライトを当てて見る人の価値観を変えてみたいと。

そうしたら日本でも次第にカセットが流行り始めたんですね。

これはきっと、デジタルで全てデータ化しちゃうような社会に徐々にみんながうんざりしてるんじゃないか、と。

だから、データ社会に窮屈な思いを感じている若い20代の子達から流行り始めてるのでは、と。

何でもデータ化されてしまうのは便利だけどとても怖い気がして、何かデジタル化できないものを表現しようと考えました。

 

今出:便利ではないけれど、触れられて形に残るものですね。

 

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伊藤:利便性を追求することによって失われていったものはたくさんあるのではないでしょうか。

僕らが音楽を吸収したり享受してきた背景には、“モノとしての価値”もあったと思います。

レコードジャケットやカセットテープのパッケージデザインは、音楽を演出する重要な要素ですし、レコード店の棚から1枚ずつ探し出す行為は、ネット上での検索では体験できない感覚ですよね。

 

今出:それが楽しみであったり。

 

伊藤:アナログメディアを通して、レコード店の空気や、店員とのやりとりで得る貴重な情報とか、いろいろな意味で生身の人間としてのコミュニケーションが出来ていたはずなんです。

それが一切なくなってしまったこの時代に、若い人たちも何か疑問を感じて、今のようにアナログメディアに目が行くようになったんだと思います。

 

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今出:私の父が凄いCDマニアで、たくさんCDを持っています。

 

小町:CDすら数年後には無くなっているかもしれない。

 

伊藤:10年たったらどうなるかわかりませんよね。

 

今出:それは悲しいですね。ジャケットを見て買うこともかなりあるのに。

 

小町:3、4年前にも、レコードショップのバーチャル化の話が出ていたことがある。

 

伊藤:データ配信だけだと、どうしても音にまつわる歴史や背景が見えづらいというか。

ジャケットには、パーソネルが書かれているから音楽家はもちろんプロデューサー、アートディレクター、写真家、画家などを知ることができたし、多くのアルバムを聴くにつれ、点から面で音楽シーンを捉えることが面白くなっていくわけですよね。

 

今出:どんな人が制作したんだろうとか。

 

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伊藤:まあ今はdiscogs.comのような優れた詳細なデータベースがあるから、興味さえあれば簡単に調べることができる環境ではありますけどね。

 

小町:どんどん何でもデータ化して、人間もそうやって映画のように管理させていくようになると思う。

パスポートは間違いなくそうだし。アートや音楽がそんな風にデータ化して横並びになってしまうのはとてもつまらないことだと思うので、そうではないアナログ感が強いカセットをテーマに選びました。

 

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今出:小町さんは以前音楽活動をやられていらっしゃいましたが、現在も活動されているんでしょうか。

 

小町:昔いろいろなバンドでやりましたが今はほとんどやってないですね。

数年前ドローン・ミュージック(単調音で長い音を使う音楽。アンビエント系、民族音楽等)でCDを友人と作って販売しました。

ジャケットは印刷するのもカッコ悪いし、音楽はあくまで趣味なので制作せず、御茶ノ水あたりで「ご自由にお持ち帰りください」と書かれて店の軒先のおいてある空のパッケージを箱ごともらって入れて、そのパッケージ数40-50枚分だけ京都にある一番好きなレコードショップに置いてもらいました。

 

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今出:楽器は何でしたか?

 

小町:ギターです。

 

今出:伊藤さんは普段から楽器をやられたりしているんでしょうか?

 

伊藤:それが全くやったことがないんです。DJはたまにやりますが…。

 

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小町:今回、販売している限定版ZINEについているカセットテープは、初めてスタジオに入った伊藤さんと音作って、37AさんというDJにミックスをやってもらったのですが、伊藤さんはおもちゃのレコード盤用ターンテーブルを持ち込んで、回転数変えたり、軸をずらして盤面のキズでループさせたりして音を作りました。

伊藤さんは本当にすごくて、生まれて初めてスタジオに入ったのに全く動じず、他人の音も聞こえていて、スムーズに2時間で録り終えました。

 

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伊藤:小町さんのドローンは抽象性が高くコラージュ的に音を重ねていくのがスムーズに出来ました。

また、DJの37Aさんのセンスが良くて、1時間の音源を丸投げでお任せしたら、5分弱のクールなトラックが2曲仕上がってきました。

 

今出:伊藤さん、37Aさんとの音楽活動は今回限りですか?

 

伊藤:またやろうかという話にはなっています。バンド名は「PINK PAGES」。

カセットテープ用コラージュに偶然使ったポルノ雑誌の断片に書いてあった言葉です。

 

今出:今回、カセットテープにコラージュされているポルノ雑誌は欧米物ですが、日本物は使わないんですね。

 

伊藤:ドメスティックなものはリアルすぎて、素材としてあまり触手が伸びないですね。

せめて年代物の日活のポスターぐらいまで遠くないと。

 

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今出:小町さんはコラージュ素材の写真はどうやって選ばれたんですか?

 

小町:ちょうどタイミングが合い、今回はフランスのドローン・ミュージシャン「HighWolf」「と「Chicaloyoh」の新作写真を使いました。

これから自分で撮った写真を素材にしてコラージュやシルクスクリーン作品をつくっても面白いなと思っています。

それ以外の作品は、自分の中のスケッチのような感じで作ったものですね。

 

今出:伊藤さんはどういう素材を使用していますか?

 

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伊藤:古い印刷物や自分で撮った写真が中心ですね。

国内でも海外でも素材を手に入れるのは、古本屋とかリサイクルショップ、マーケットかな。

そういう場所には、既に流通していない古い本や得体の知れない雑誌が沢山あるので何が飛び出すかわからない。

そのスリルをいつも楽しんでいます。今では、古本屋に行くと嗅覚でどのあたりに獲物がいるのかわかるレベルになってきていますね。

ハンティングみたいなものでしょうか。

 

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小町:僕は海外調達することが多いです。車の荷台を使ったフリーマーケットで仕入れています。

店は特に決めていないですが、ロンドンとアントワープに誰にも教えないお気に入りの店があります。

自分にとっていい素材に出会ったら、見つけた瞬間に作品の仕上がりまでイメージできます。

しかしながら、いいなと思い、切り抜いてみた絵がインパクトが強過ぎてダメで、なんとか使いたいなと裏を見たら絶妙にカッコよく切り取られていて、そちらを使うことがよくあります。

これもコラージュの面白いところですね。

 

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伊藤:切り抜いた部分がダメで切り抜いた残りの方がよくて使う、ということもありますね。

 

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今出:今後の活動予定はいかがですか?

 

伊藤:二人では、恵比寿のTRAUMARIS(トラウマリス)で時期はまだ未定ですが展覧会を開催します。

個人としては、山梨のGallery Trax(ギャラリー・トラックス)で4月末~5月末に個展を予定しています。

 

小町:国内の、とあるファッションブランドとのコラボレーションをやります。また、「子供ばんど」のCDジャケットもコラージュで制作します。

 

 

 

お二人のインタビューを通して、モノの「便利さ」よりも「手に触れて感じる親しみ」の大切さを改めて考えさせられました。

便利で新しいものが出てきたら、以前まで親しみのあったものも忘れられてしまう。

便利さを求めて失われてきたものは数えきれないほどありますが、その中でも「カセットテープ」は時間を超えて人々に愛されています。

 

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伊藤桂司さんと小町渉さんによって往復書簡で作られた、世界にたった一つのカセットテープの作品たちは、

音楽とアートの深い結びつきを感じさせてくれるものでした♪

 

お二人の新たなコラボレーション作品に期待が高まりますね☆

 

伊藤桂司(いとうけいじ)

1958年、東京生まれ。グラフィックワーク、アートディレクション、映像を中心に活動。

2001年東京ADC賞受賞。テイ・トウワ、木村カエラ、スチャダラパー、PES from RIP SLYME、高野寛、ohana、オレンジペコー、ボニー・ピンク、愛知万博EXPO2005世界公式ポスター、コカコーラ・コーポレイトカレンダー、NHKの番組タイトル&セットデザイン、イギリスのクラヴェンデール・キャンペーンヴィジュアル、SoftBankキャンペーン、KEIJI ITO × graniph Collaboration他、活動は多岐に渡る。

作品集は『LA SUPER GRANDE』(ERECT LAB.)、『FIZZY JJJAZZ』『HELLO DAWN』(共にUFB)他多数。

京都造形芸術大学教授。UFG代表。

http://site-ufg.com/

 

小町渉(こまちわたる)

東京都出身

アーティスト

コラージュ作品がアートコレクターとしても世界的に有名な米俳優、映画監督(DENIS HOPPER/デニス・ホッパー氏)のコレクション作品となり、それを機に本格的にアート活動を開始する。

以降パリを中心にフランスファッションブランドとのコラボレーションやアート展に出展、米ミュージシャンのヨーロッパツアーオフィシャルT-Shirtsデザイン等、これらの活動により欧米で高い評価を得る。

国内においても、百貨店やファッションブランドとのコラボレーション、アート展への出展、

アート/ファッション/プロダクト/写真等、多岐に亘る表現により生み出される作品は時事性に富みウィットに溢れ、国内外にて高く評価されている。

http://www.watarukomachi.com/

 

(PLACE) by method

http://wearemethod.com/contact

 
文 / 今出 真由   写真 / 洲本 マサミ