芸術の秋!パリ最大のコンテンポラリーアートフェア「FIAC」に行ってみた♪
毎秋パリでは国際コンテンポラリーアートフェア「FIAC」が開催されます。第43回目となる今年は、27カ国、186のギャラリーが参加しました。また、参加アーティストの数はおよそ4000人に昇りました。10月20日から23日の4日間、世界中から目の肥えたコレクターや現代アートのプロが訪れ、作品の買い付けに来ます。パリの街が現代アート一色に染められ、世界中の人々から熱い眼差しが注がれました。
La FIAC au Grand Palais , 2016 © FIAC 2016. Photo : Marc Domage
会場となったグラン・パレ。こちらは毎年11月に開催されるパリフォトの会場にもなっています。1900年のパリ万博万国博覧会のために建てられ、1年に約2億人も訪れる大規模な展示会場です。こちらでは美術館も併設されており、2014年10月1日から2015年1月18日まで「葛飾北斎」展が開催されたことにより、日本のメディアからも注目されました。
La FIAC au Grand Palais , 2016 © FIAC 2016. Photo : Marc Domage
グランパレのアーチ天井の下、ギャラリーは白い壁で仕切られています。ギャラリーによって広さや雰囲気が異なります。
La FIAC au Grand Palais , 2016 © FIAC 2016. Photo : Marc Domage
La FIAC au Grand Palais , 2016 © FIAC 2016. Photo : Marc Domage
2003年からFIACのアートディレクターを勤めるジェニファー・フレイ氏は、インタビューで「以前から参加している出展者と新しい出展者の存在感は、国際的なアートシーンを反映し、精力的な動きを作ります。」と語っていました。
Jennifer Flay © FIAC 2016. Photo : Henri Garat
【日本人アーティストの存在】
東京、ロサンゼルス、ニューヨークの3カ所にギャラリーがあるBlum & Poeのブースでは、瞳が印象的な女の子をモチーフにした奈良美智さんのドローイングや写真、彫刻が個展形式で展示されていました。
多くの人がブースに訪れ、作品の細部にまで見つめていました。
グランパレの正面にある、プティパレの外には高さ23cmあるブロンズがありました。この彫刻は、奈良美智さんの故郷である東日本を襲った大地震に従って設計されました。私がこの作品から感じた事は、タイトルに「Miss. Forest」と名付けられているように、森林を想起させる形と目を閉じた女性の表情から、自然と人間の共存や大震災が私たちに残した傷の深さについてのメッセージです。
Yoshitomo Nara “Miss. FOREST”,2016 ©Adagp, Paris 2016.FIAC 2016 Photo : Marc Domage
イタリア・ミラノとニューヨークにある kaufmann repetto gallery では、アメリカ人女性 Pae White の「Presumptive Close 2016」というポップコーンの形状をした作品がありました。
また、白雪姫にでてくる小人のピンク色のシリコンで作られた彫刻もありました。アメリカ人の Paul McCarthy による「White Snow Dwarf(Bashful) 2011」です。
ドイツ・ベルリンの Esther Schipper / Johnen Galerie では、カナダ人のアーティストグループ Magi© Bullet の銀色のヘリウム風船「GENERAL IDEA 1992」が展示スペースの天井を埋めていました。
ロンドンにあるVictoria Miro Galleryでは、韓国人アーティスト Do Ho Suh による「features Hub, Wielandstr. 18, 12159 Berlin」を展示していました。半透明の布を使った家や家具をモチーフにした作品は、海外生活を経験したアーティストの文化的葛藤を表しています。この作品の考え方は、現在フランスで暮らす私の琴糸に触れました。
ブースの使い方は様々で、ロンドンのギャラリー Sadie Coles HQ のブースでは、Urs Fischer and Sarah Lucasの巨大な走り書きの彫刻がありました。
全体的に参加ギャラリーの半数以上はブースに白い壁を使っていますが、イタリア・ローマの MAGAZZINO のギャラリーブースは他とは異なる雰囲気を醸し出していました。アーティストや作品にもよりますが、装飾次第でギャラリーの個性を窺うことができ面白いです。
会場で1つ1つのギャラリーを訪れてみて気がついたことは、絵画やドローイング、コラージュといった平面作品と、大きな彫刻作品の両方を展示しているという共通点です。彫刻の中でも、現実性を追求された作品が目立ちました。
パリ、ニューヨーク、香港、ロンドンにあるGagosian Gallery では、リアルすぎる彫刻を制作するアメリカ人アーティスト Duane Hanson の「Old Couple on a Bench 1994」がありました。一瞬、本物の老夫婦に見える理由はこのアーティストが1967年から生きている人間から型を取るというプロセスを踏んでいるからだと思います。現実に限りなく近いですが、とても哀感に満ちていました。
ドイツ・ベルリンの Nagel-Draxler Gallery のブースでは、アメリカ人アーティスト Mark Dionの魚市場を連想させるような彫刻作品「The Fisheries 2016」がありました。本物にそっくりな魚たちの金額はおよそ800万円(70,000ユーロ)です。
スイス・チューリッヒの Francesca Pia Gallery では、ドイツ人アーティスト Thomas Bayrleの壁紙デザインやプリント、スーツデザイン「Anzug(Suit) 1967/1999」が公開されていました。衣服のためのマネキンですが、マネキンもアート作品に見えてしまいます!
このマネキンとツーショット撮影をしてもらうため通りがかりの人にお願いしたところ、なぜか「あなた後ろ向いた方がいいわね」と勧められ撮影してもらいました。(笑)
各ギャラリーブースからは様々な言語が飛び交っていたことも印象的でした。
2006年から会場外で屋外展示が実地されるようになり、今年もパリの中心に位置するチュイルリー公園やヴァンドーム広場といったフランス人や観光客が多く行き交う場所で、彫刻やインスタレーションが公開されました。こちらは11月上旬まで展示されていて、誰でも自由に見ることができます。
【チュイルリー公園】
Vincent Mauger “Les injonctions paradoxales”, 2016 ©Adagp, Paris2016. FIAC 2016 Photo : Marc Domage
Julien Tiberi “The Panoramic Dailies”, 2016 ©Adagp, Paris 2016. FIAC 2016 Photo : Marc Domage
Ugo Rondinone “Sprig moon”, 2011©Adagp, Paris2016. FIAC 2016 Photo : Marc Domage
今回FIACを訪れてみて、パリは豊かな遺産を持っている街であると同時に、アート市場における目覚ましい発展は国際的にも欠くことのできない存在であると感じました。
文・写真:矢内 美春
【情報】
FIAC – Foire Internationale d’Art Contemporain – Paris
RMN – Grand Palais