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住宅を見れば歴史がわかる!?「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」

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2017年8月10日

住宅を見れば歴史がわかる!?「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」


住宅を見れば歴史がわかる!?「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」

 

 

毎度、知識欲がかき立てられる展覧会を開催してくれる東京国立近代美術館さん。現在、開催中の「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展も独特の切り口で見事に整理されていました。
住宅に携わる人たちは必修、そうじゃない人たちもすぐに誰かに共有したくなる本展をさっそく取材しました!

 

 

 

 

75の住宅建築を13のテーマに分けて展示。
展示品は模型、図面、写真、映像、なんと原寸大の模型まで。
合計400点以上からなる壮大な展示は2016年11月にローマで、2017年3月からロンドンで…。満を持して東京での開催となりました。

 

 

日本の住宅の歴史からしっかり勉強するぞ!と意気込み進むとオープニングで衝撃の一文が。

 

“そもそも日本の家の起源などない”

 

え…そうなの…?

 

 

 

 

【日本の建築は突飛に見えるものも少なくありません。けれどもそれは戦後の様々な試みにより建築家とクライアントの双方が鍛えられた結果、最先端の”建築と暮らし方”が求められているからだともといえるのです。】という説明を読み納得。
本展は時代で建築に追るのではなく、取組みのテーマごとに展示しているのです。

 

時代は重なる部分もありながらも、一見して真逆の取り組みなのではないかという
「プロトタイプと大量生産」と「住宅は芸術である」という例を挙げて本展の魅力をご紹介します。

 

 

「プロトタイプと大量生産」

 

 

”住宅”と聞いて真っ先に浮かぶのはどのような建物でしょうか。
これに関しては育ってきた環境や時代で少し変わってくるかもしれません。
今でこそマンションに住む方も増えましたが、国土交通省のデータによると新築住宅着工戸数は平成28年度に戸建(持家)約6万戸に対しマンションは約6.5万戸というのです。集合住宅に住むというのは、意外にも新しい発想ではないのです。

 

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/中銀カプセルタワービル、より転載

 

 

”セカンドハウス”という考え方にも着目してみましょう。今でも現存する銀座駅と新橋駅からアクセス可能な黒川紀章設計、『中銀カプセルタワービル』です。
一見すると洗濯機が積み上げられたような不思議なビルは世界で初めてのカプセル住宅。
一世帯ごとの独立性が高く、機能的には各カプセルで交換も可能ということで私の印象は”ジェンガみたいなマンション”でした。
根強いファンが多くいまだ取り壊されていませんが、当時はサラリーマンのセカンドハウスとして大きな話題になったそうです。内装写真を見ても、最低限必要なものが壁に設置され、さながら宇宙stationの様。カプセルの幅はトラックの荷台に乗せて運べるサイズで、1台に2世帯ずつ載せて”出荷”されていく光景には目を丸くしました。

 

 

限られた敷地内に子供部屋のような一時的に必要なスペースを確保、また高度経済成長期に忙しく働くお父さんのためのセカンドハウス等、世の中の流れや生活の変化と住宅は密接に歴史を築いてきたことを改めて感じました。

 

 

「住宅は芸術である」

 

 

そもそも“住宅”をテーマにした展覧会が美術館で開催されること自体が珍しいです。。近年、多様な展覧会が増えていても“美術館は芸術品を飾るところ”というイメージが多い中、”アートな建築”ってやはり商業施設や空港などを浮かべがちです。

 

本展の中にも”個人の建築家によるプロトタイプの提示はほとんど実効性を持ちえませんでした。”とありました。実際住んでいる人たちはどうなのでしょうか。
個性的な住宅のひとつ、『上原通りの家』の展示は図面や写真だけではなく、そこで40年以上暮らす家族にインタビューも行っています。

 

 

 

 

機能性としてはいかがなものか?と感じる住宅の完成秘話から、住み心地をお母さんが、息子さんは一度は家を出て再び戻ってきた中で客観的にも自身の住まいを語っています。
これは見ごたえのある展示でした。
建築の展示に留まらずそこに生きる人々の生活までを展示しているのです。
模型のコーナーも同様で中に人が生活している写真が展示されています。
よりリアルに”住宅”を感じることができるのです。

 

 

展覧会後半は一般の方でも撮影OK!
原寸大の模型は靴を脱いで上がることもできるので大満足な内容。

 

 

 

 

開催期間は10月29日まで。金・土曜は夜21時まで開館しています。 ただ楽しいだけじゃなく、勉強になる本展をどうぞお見逃しなく!

 

 

文:山口 智子 写真:菊田 剛樹

 

◆開催概要◆
日本の家 1945年以降の建築と暮らし
The Japanese House : Architecture and Life after 1945 

 

 

 会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2017年7月19日(水)~ 2017年10月29日(日)
開館時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00)
*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(9/18、10/9は開館)、9/19(火)、10/10(火)
観覧料:一般1,200(900)円
    大学生800(500)円
*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
*高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
*キャンパスメンバーズ加入校の学生は、学生証の提示で割引料金500円でご鑑賞いただけます。
*本展の観覧料で入館当日に限り、「MOMATコレクション」(4-2F)、「彫刻を作る/語る/見る/聞く―コレクションを中心とした小企画」(2Fギャラリー4)もご覧いただけます。
*使用済み入場券で、入館当日に限り再入場が可能です。
*5時から割引:金・土曜の17 時以降は、割引料金(一般 1,000 円、大学生 700 円)でご覧いただけます。
*リピーター割引:本展使用済み入場券をお持ちいただくと、2 回目以降は特別料金 (一般 500 円、大学生 250 円)でご覧いただけます。

 

公式HP:http://www.momat.go.jp/

 

主催:東京国立近代美術館、国際交流基金

 

企画協力:MAXXI国立21世紀美術館、バービカン・センター

 

協賛:積水化学工業株式会社

 

協力:トヨタホーム東京株式会社、ミサワホーム株式会社、
   新建築社、日本航空、川上産業株式会社

 

美術館へのアクセス:東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分
〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
詳しくはアクセスマップをご参照ください。

 

 

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Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?

幼いころから書道・生け花を始めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

現在、外資系IT企業に勤めながらもアートとの接点は持ち続けたいと考えています。

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走り続けています。

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