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見るものが誘惑される ゴッドファーザーが生み出す’美女’

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2016年2月14日

見るものが誘惑される ゴッドファーザーが生み出す’美女’


初めて見た時の衝撃。

「女性らしい機械の絵画」、いや「機械のような女性の絵画」か。

ありえないのにその素晴らしすぎる技術力で、なんとも言葉にし難い「説得力」を持っているその’女性’は、

なんだか動き出しそうにも見える。

 

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どこかで見たことがある、と感じた人が多いのではないだろうか。

それもそのはず、日本での広告のみならず海外にも熱狂的ファンが多く、著名なアーティストのエアロスミスから

アルバムのジャケットを依頼されたこともある。

さらに日本ではペットロボットとして社会現象にもなったあの「AIBO」(1999年発売開始)のデザインを手がけ

ていたのも空山氏である。

 

そんな彼がNANZUKAにて自身初である描き下ろしの個展を開催している。

これは是非観に行きたい!と思い初日に取材に行ってきた。

まずギャラリーに入ると私を出迎えてくれたのは、真っ白な壁に綺麗に並んでいるクリアな美しい額に飾られた、

マリリン・モンローをモデルとした絵画作品だ。

 

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そして奥に行くと等身大の作品や更に奥には両手で持てるサイズの作品と展示されていた。

暫くその作品に見入った後、ご本人から直接話しを聞くことができた。

 

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まず一番に気になっていた今回のテーマについて、なぜマリリン・モンローなのか。

それには「マリリン・モンローには著作権がないから。」とすごくシンプルに答えが返ってきた。

 

私はその事実自体を知らなかったので意外だと思っていると

「まあ、女が好きなんだよなぁ昔から。男なんてバンドをするのもスポーツも、絵を描くのだって結局女に

 モテたいっていうのが始まりだったりするでしょ。」

と言って、空山氏は豪快に笑った。

 

その潔さにすこしずつ緊張が溶け、個々の作品について話が及んだ。

こだわったところや、作品を制作している時の想いを質問。

 

「購買力をくすぐるかどうかも大事な要素。それには人を驚かせないといけない。

 そもそも女性と機械を描き始めたのはウィスキーの広告でそのような依頼を受けたからだったが、

 世の中の人はそれを見て驚いたんだよね。大理石とか木彫はあったけど機械だと驚いたりね。

 だから印象に残るわけで…」

 

なるほど、私が生まれるよりもずっと以前の作品を見ても確かに見覚えがある。

それは一度世に出た作品の衝撃が余波を長く残しているからだろう。

 

「で、そこにストーリーを入れる。今回の作品の中だとマリリン・モンローの肩に彼女に関連するもの、

 例えばシャネルの№5とかケネディ家の家紋とかを描く。買った人が家に人を招いたときに少し人に

 話したくなっちゃうようなポイントを入れるんだよね。そういうくすぐるポイントを隠してるわけよ。」

 

と教えてくれた。

思わず私は再度その絵を見る!

最初観た時にはシャネルしか気づかなかったのだが、確かにそう言われてみると、早速得意げに友達に

自慢してしまいそうだ。

 

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’わかる人にはわかる’というポイントは作品を更に魅力的にする。

 

「作品を買う人を納得させるように、興味があることや描くものに対して色んなことを調べたりする。」

 

買い手の想いの先を読むその真面目な姿勢。

冒頭で書いた「説得力」の秘密が少しわかった気がした。

 

更によく見ていると作品に向き合う真摯な姿勢が伝わってくる。

エアブラシの使い方の教本等で紹介され、写実技法のゴッドファーザーとしても世界中のクリエーターから

尊敬されているのは有名であるが、例えば網格子の椅子に座っているとき、景色の中にいる時、信じられない

ような緻密さで機械に映り込みが描かれている。

髪の一本一本まで動きがある。そして描かれた作品が完全に機械だと思えないのは絶妙なバランスだと思う。

ウエストの細さや太もも、ヒップラインなど。

 

「ファンタジーなんだけど、現実や体験の一歩先を狙う。そんなものないんだけどありそうって思わせる、

 そこがいい。」

 

空山氏の描く作品世界のキーだと思った。

 

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また今回立体の作品についてはマリリンがモデルというわけではないようだったので、こういった作品のモデルは

誰なのかと質問すると…

 

「誰、とかじゃないんだよな~。生まれてから色んな女性を観察してて、その蓄積で頭に方程式ができているんだよ。

 座っている時には肘が少し内側に入っていた方が、とか指は一本折れていた方が、身体がS字の方が・・・

 より女性らしいっていう方程式で作っていくんだよね。」

 

という。

以前メディアで空山氏のアトリエが取り上げられていた際に、ものすごく物で溢れていて、見ただけでわくわくする

ような空間だったので、フィギアや実在のモデルを参考にしているのかと思ったのだが、やはり天才的だと思って

しまうような回答だった。

 

「アトリエはコックピットだから、好きなものに囲まれてすぐにそれを手に取れるようにはしているよ。カッター

 一つ、ペンひとつだって一目ぼれしたものを使う。本当にいいと思うと値段なんて気にしないだろう?そういう

 ものに囲まれていることは大切なんだよ。」

 

と教えてくれた。

 

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実際に1つの作品を描いている時間は20時間から50時間位が多いということだったが、すべての作品が空山氏の

人生の蓄積なのだと改めて感じた。

今後の作品について最後に尋ねると…

 

「作りたいものは頭の中に溢れているが、様々な現実的しがらみの中で、どうやって形にして伝えていくか。」

 

だと眼鏡の奥の目が少し鋭くなった。

これからも私たちに驚きを与え、記憶に長く残る作品を生み出してくれると確信した。

是非実際に目で見て、作品の持つストーリーと空山氏の想いを感じてほしい。

 

文・山口智子 

 

【情報】

空山基「女優はマシーンではありません。でも機械のように扱われます。」

会場:NANZUKA [ACCESS MAP ]
会期:1月30日〜3月5日
営業時間:11:00-19:00(日・月・祝祭日定休)
入場:FREE ・販売有

 



Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?

幼いころから書道・生け花を始めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

現在、外資系IT企業に勤めながらもアートとの接点は持ち続けたいと考えています。

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走り続けています。

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