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旅とアート vol.3 ー 真夏のヴェネツィア・ビエンナーレへ ー

NEWS

2016年1月7日

旅とアート vol.3  ー 真夏のヴェネツィア・ビエンナーレへ ー


8月頭に短い夏休みをいただき、ヴェネツィア・ビエンナーレの美術展に行ってきました。
120年の歴史を持つ、2年に一度の祭典です。

 

VB-1

 

56回目の今年テーマは『ALL THE WORLD’S FUTURES(すべての世界の未来)』。
バカンスシーズンも重なって、世界中から観光客が押し寄せていました。

メインの会場となるGiardini(ジャルディーニ)とArsenale(アルセナーレ)を中心に、
街中の様々な場所で展示が行われています。

 

まずは日本館があるGiardini(ジャルディーニ)から見学しました。

 

29カ国による国単位、そしてARENA(アリーナ)と呼ばれる
会場での国を超えたテーマ別の展示が中心となっています。

 

心に残った展示のようすを、いくつかご紹介します。

 

【オランダ館】

 

NL1

 

NL2herman de vries
Dutch Pavilion 2015

 

敷き詰められたダマスクローズのつぼみ。

5月の開始時前にはピンク色だった生花が、8月にはドライフラワーに!
甘く青い爽やかな香りが湿度と重なって届きます。

 

NL3
herman de vries
Dutch Pavilion 2015

 

展示作家は84歳のherman de vries(ヘルマン・デ・フリース)氏。

 

NL4herman de vries
Dutch Pavilion 2015

 

フリースはオランダで造園土木を学んだ後、フランスで農業に関する仕事につき、
その後オランダ植物保護事業に従事していたそうです。

 

自然の中にある多様性や美しさを引き出すような展示が印象的でした。

手のぬくもりが感じられる作品たちから、作り手の愛情が伝わってくるように感じます。

 

NL5
herman de vries
Dutch Pavilion 2015

 

様々なかたちの鎌と、対比するかのように壁にかけられ、切り取られた植物の茎。

 

NL6
herman de vries
Dutch Pavilion 2015

 

壁に埋め込まれた映像。白い壁にはめ込まれています。

素朴な素材を使いながらも、隅々まで洗練を極めた美しい作品たち。

 

【ノルウェー館】

 

NW
Rapture
Camille Norment
The Nordic Pavilion 2015

 

特殊な音にはガラスを割る力があります。
この作品において、割れたガラスは歓喜を表すそうです。

 

空間の使い方が印象的でした。

 

VB-2
VEDE (VENICE EXCELLENCE DESIGN)

 

国単位の展示では有りませんが、スポンサーの会社が出展していたデザインカフェ。
写真はとても馴染んでいた男性。

 

途中で小さな橋を渡ります。よいお天気です。

 

VB-3

 

子供たちが夢中になっていた韓国館は近未来的な雰囲気が漂います。

 

【韓国館】

 

KO1

 

入り口の様子

 

KO2
KOREA, Republic of The Ways of Folding Space & Flying
MOON Kyungwon & JEON Joonho
Korean Pavilion 2015

 

続いて日本館。

 

【日本館】

 

JP1

 

こちらは入り口。

 

JP2

 

展示作家は塩田千春。

展示のタイトルは「掌の鍵 – The Key in the Hand -」。

 

JP3
Chiharu Shioda
Japan Pavilion 2015

 

 

JP4Chiharu Shioda
Japan Pavilion 2015

 

JP5Chiharu Shioda
Japan Pavilion 2015

 

赤い糸に無数の鍵が取り付けられています。

肉眼で見ると緻密と感じる糸の繊細さが、写真を通してみると内側から
目に見えない感情が起毛しているかのように、強く激しく迫ってくるように感じられます。

 

JP6
Chiharu Shioda
Japan Pavilion 2015

 

展示室内の大きな気がゆっくりと動いていたのが印象的だったフランス館。

 

【フランス館】

 

FR1

rêvolutions
Céleste Boursier-Mougenot
French Pavilion 2015

 

こちらは入り口の様子。
内部の様子。木がゆっくりと会場内を移動していきます。

 

FR2Céleste Boursier-Mougenot
French Pavilion 2015

 

続く…

 

【カナダ館】

 

こちらではキューベックのBGLというアーティストグループによる展示が行われています。
まるで工事中のような外見の中身をくぐるとコンビニのような売店があり、さらにその奥にはスタジオ。

 

CA1

Canadassimo
© BGL art collective – Jasmin Bilodeau, Sébastien Giguère, Nicolas Laverdière
Canada Pavilion 2015

 

CA2

Canadassimo
© BGL art collective – Jasmin Bilodeau, Sébastien Giguère, Nicolas Laverdière
Canada Pavilion 2015

 

階段を上がるとコインで遊べる空間が。

 

CA3
Canadassimo
© BGL art collective – Jasmin Bilodeau, Sébastien Giguère, Nicolas Laverdière
Canada Pavilion 2015

 

コインは規則的に振り分けられ、透明の壁に模様を描きます。

 

続いて、船で一駅先のARSENALE(アルセナーレ)会場へ。

 

to Arsenale

 

もともと造船所だった場所だそうです。
元公園でゆっくりとした雰囲気のGiordini(ギオルディーニ)と少し違った、雰囲気があります。

 

to Arsenale2

 

とても広いです。途中、太陽から逃げ場のない道を進みます。
簡易自動車での送迎もありました。

 

会場内部の様子

 

ASTS-1Taryn Simon
Paperwork, and the Will of Capital
An Account of Flora as Witness 

 

ASTS-2
Taryn Simon
Paperwork, and the Will of Capital
An Account of Flora as Witness

 

ASKG-1

Katharina Grosse
Untitled Trumpet. 2015
Installation (Arsenale, Biennale 2015)

 

ASKG-2

Katharina Grosse
Untitled Trumpet. 2015
Installation (Arsenale, Biennale 2015)

 

まるで、鮮やかな絵の具を溶いた水入れの中に、全身で浸るような感覚を覚えます。

 

ASKG-3
Katharina Grosse
Untitled Trumpet. 2015
Installation (Arsenale, Biennale 2015)

 

AS-2

 

会場の質感と相互に解け合ったような作品が目につきます。

壁の質感や空間の形など、少し暗い印象を受けました。
シビアな印象の作品も多く並びます。

 

ASMR
Mika Rottenberg
NoNoseKnows. 2015

 

ASGB
Georg Baselitz
Faellt von der Wand nicht, 2014
Was ist gewesen, vorbei, 2014
Ein Papst ist Avignon, 2014
Amung, Leunnung, alles zusammen, 2014

内側からたましいを絞り出されるような繊細で強い絵は、
ドイツの画家であり彫刻家である77歳のバセリッツ氏のもの。

 

ASKA
LEDパネルの作品;Kutluğ Ataman 「THE PORTRAIT OF SAKIP SABANCI, 2014」
背後の写真; Chris Marker

 

ASTV-1
Vincent J. F. Huang
Tuvalu Pavilion 2015

 

ASTV-2Vincent J. F. Huang
Tuvalu Pavilion 2015

 

ASXBXu Bing
The Phoenix. 2015
Construction site debris and materials

 

外部の変化に合わせて作品の見える印象が変わります。
穏やかな風に揺れる水面に浮かぶ影が静かに躍動し、作品の存在感をよりリアルに表現します。

 

最後に、市内のSan Giorgio Maggiore(サン ジョルジオ マッジョーレ)へ行きました。

 

TG-1

 

教会の中が会場です。

 

TG-2

TOGETHER
Jaume Plensa

 

TG-3
TOGETHER
Jaume Plensa

 

TG-4
TOGETHER
Jaume Plensa

 

女の子の顔だそう。空気を掘っていくような厳かな作品です。

知らぬまに時間が過ぎていきます。

 

VB-Final

 

長いヨーロッパの夏の夜が更けていきます。
宝箱のようなベネツィアの景観と真夏の太陽の下で、世界中のアートを鑑賞する贅沢に酔いしれた一日でした。 

Ciao! また。
次回はベルリンのアートウィークについてレポートします。お楽しみに。

 

La Biennale die Venezia公式サイト:http://www.labiennale.org/en/art/

オランダ館:http://www.mondriaanfonds.nl/en/venice-biennale/

herman de vries:http://www.hermandevries.org/

ノルウェー館:http://oca.no/venice-biennale/venice-biennale-2015.1

 



Writer

Eriko

Eriko - Eriko -

兵庫県出身。

子供の頃から絵や工作が好きで、学生の頃から美術館に通い始める。

好きな画家はジョルジョ ルオー、アンダーソン フリーデルなど。

作品を見た後、いつもの風景が違って見えたり、

身の回りの美しいものに、前よりも敏感になったり、と

五感を使って生きる喜びを与えてくれる美術の魅力にはまって、十数年。

休日は、展覧会と旅行三昧のアラサー外資系OLです。

現在、ドイツ在住。