いつもの生活に彩りを!「六本木アートナイト」アフターレポート
10月21日(金)~23日(日)まで六本木ヒルズや東京ミッドタウン、国立新美術館といったアートスポットが一堂に会し、六本木という街全体を占拠した、「六本木アートナイト」。他に類を見ない贅沢なイベントである。今回は数多くの作品の中から選りすぐりの作品ご紹介しよう。
・名和晃平『メインプログラム』(六本木ヒルズアリーナ)
この展示は、名和晃平が西畠清順とデイジー・バルーンとコラボレーションして制作した作品。重力・空間・生命の関係性を表現する彫刻作品『Ehter』と、『White Deer』が出会うシーンが表現されている。その二つの彫刻を取り巻くのは、西畠氏が世界各国から集めた多種多様の木々によって、成熟した森が構成されている。また、この鹿は東京を彷徨い東北へ向かうという設定で、石巻の漁で使用されているブイも配置されている。都心の森に浮遊する海の生き物が混在する、幻想的な光景が生まれた。そして何より、我々よりはるかに大きなその展示から、物語へ入り込んでしまったかのような感覚に陥ってしまう。
・ピーター・マクドナルド『Sleep Walking』
作家本人が六本木アートナイトを廻りながらその様子をスケッチし、それらを六本木アートナイト期間中に壁面へと足していく。一度見た時よりと二度目の方が、二度目より三度目が…と時間を置く度に増える作品たち何度訪れても、その度に新しい作品を観ているかのような気持ちにさせらる。
・リオネル・エスティーブ『Polychromatic nigh
いつものウエストウォークに突如現れた、モビールのように空中に浮かぶ、色とりどりのアクリルボックス。光やその形が空間を彩り、通り過ぎる人がおこす空気の流れに反応し、ボックスが動き、まるで彫刻が人々と交流しているようだ。
・ツァイ・クエンリン『The Sound of Roppongi』
六本木にちなみ、構造体の中にパイプで出来た六本の木が立っている。また三つの立方体からは音が聞こえてくる。道をゆく人たちは作品の前で立ち止まり、そして作品に耳を近ずけ、そっと澄ましてみる。彼らはそこで何を思うのだろうか。
・若木くるみ『車輪の人』
作家は車輪が寛平な速度で回転すると外に貼ってある版画がアニメーションのように見えることを想定していた。しかし、失敗したことから本人がひたすら走り続け観客を驚かせることが、本作のコンセプトになったそうだ。長時間走り続け、くたくたに疲れているだろうに、彼女にカメラを向けると手を振ったり、ピースサインをしてくれた。
・チェ・ジョンファ『Love Me』
ブタは、幸運、富や繁栄を象徴すると言われている。一見、見るものを楽しませるバルーンだが、飛び立てないのに、羽を動かし続ける大きなブタの姿は、どこか不気味に見える。天を見つめ羽を動かし続けるブタは一体何を思うのだろう、と考えてみるのも楽しい。
・チェ・ジョンファ『フラワー・シャンデリア』
本作は、これまで数多くの花のバルーンを制作してきたチェ・ジョンファ氏が、メトロハットに合わせて制作した最新バルーン。エスカレーターを行き交う人たちは、はっ!と上を向き、巨大なフラワー・シャンデリアに自然と笑顔がこぼれてしまう。
まるで六本木のまちがほんのひと時、華やかに彩られた「六本木アートナイト」。それは、そこに行く人々の生活に刺激的な魔法をかけてくれた。来年もどんな作品が見られるのか、今から楽しみである。
文・写真:鈴木萌夏
■六本木アートナイト2016 開催概要
日時:2016年10月21日(金)~10月23日(日)
場所:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
入場料:無料(但し、一部のプログラムおよび美術館企画展は有料)