feature

日本一有名なアートディレクター約30年の軌跡『佐藤可士和展』

NEWS

2021年2月16日


日本一有名なアートディレクター約30年の軌跡『佐藤可士和展』


日本一有名なアートディレクター約30年の軌跡『佐藤可士和展』

 

国立新美術館にて2021年2月3日~5月10日開催中の『佐藤可士和展』。佐藤自らが会場構成にも携わり、約30年にわたる活動の軌跡を多角的に紹介している同氏過去最大級の展覧会だ。

 

「宇宙」 1974年、色紙のコラージュ、48×50 cm 

 

幼少期のコラージュ作品などから人物像の形成過程を知る「THE SPACE WITHIN」から始まり、アートディレクター時代の仕事を縦長の展示室に一堂に集めた「ADVERTISING AND BEYOND」、クリエイティブディレクションを手がける中で生まれたロゴを大迫力で展示した「THE LOGO」、ポスターや雑誌のグラフィックデザイン「THE POWER OF GRAPHIC DESIGN」、これまでに携わった2Dに留まらず、ブランディングプロジェクトを一挙公開する「ICONIC BRANDING PROJECTS」、そして、佐藤自身の「アイコン」となっている2つのアートワークシリーズを対比的に展示した「LINES & FLOW」の、6つのテーマで構成される。

 

”佐藤可士和”という日本で最も有名なクリエイティブ/アートディレクター。”国立新美術館”での本展は間違いなくその地位を不動のものにした。大げさではなく歴史的だと思う。

デザインや建築の展覧会を定期的に開催してきたとはいえ、まさか健在の、しかも商業系のイメージが強いクリエイティブ/アートディレクターが国立新美術館のメイン会場を単独で飾るなんて。

さて、それではさっそく非常に見応えがあった本展のみどころを3つの項目で紹介しよう。

 

 

 

1.初の大規模展覧会ならでは、人物形成の過程を知ることができる

 

広告に興味がある方なら佐藤可士和は元々博報堂の1社員であったことはご存知だろう。本展は社会人1年目に、当時まだ珍しかったMacを購入し、初めて自分をテーマにデザインしたという《シックスアイコンズ》から始まる。パソコンの起動時にアイコンが浮かんで並ぶのを見て、

 

”そうか、これが広告か。デスクトップがいわば社会で、アイコンのようにイメージが凝縮されたものを作ればいいのか”(音声ガイドより引用)

 

と考えたそう。広告に携わるうえでの基本的な考え方を発見し制作した本作は彼にとって原点ともいえる作品だ。また幼少期からデザインやロゴが好きだったということがよくわかる当時のコラージュや、家族とのエピソードも興味深く、入場してすぐの「THE SPACE WITHIN」は展覧会の最初の見どころだろう。

 

2.これもあれもそうだったんですか?!圧倒的な仕事量

 

「ADVERTISING AND BEYOND」から「ICONIC BRANDING PROJECTS」まで見て改めて感じたのは、圧倒的な仕事量だ。佐藤氏が手がけた屋外広告が原寸大で美術館の壁に展示され、まじまじと鑑賞していると、それらが完璧に設計された”デザイン”であることはもちろんだが、”アート”としても見えてくるから不思議だ。

 

 

それまでメディアといえばマスメディアだったが、佐藤氏は若者たちにとっては街こそがメディアだと考え、ラッピングバスや街頭広告などを活用することを好んだ。

確かに、どれも非常に記憶に残っている作品ばかりなことに驚く。”この広告の時私小学生だったなあ”などと想い出が蘇るのだ。

渋谷の街を佐藤氏の手がける複数社の広告がジャックする様子や、今まで手がけてきたロゴを大迫力のインスタレーションにしたフォトジェニックなコーナーは写真撮影可能なのでSNS好きにはたまらない展示だ。

 

 

一方、佐藤氏が作るロゴは一見すると極めてシンプルなものが多い。ロゴは企業理念やブランド、商品情報を充分に理解し、大きく膨らんだアイディアが大木だとして、丁寧に削って作られた親指程しかない彫刻のようだ。その木肌は素材として残るが、どれだけ大きい木から作られたかは想像することしかできない。良い意味で”佐藤可士和色”は強く主張するわけではなく、共通項として”シンプル”であり”親しみやすい”ため老若男女から好かれるデザインばかりなので企業やブランドを象徴するものとして安心できる。

 

 

3.これから佐藤可士和氏はどこに向かうのか、拡がる活動に注目

 

「日清食品関西工場」 トータルプロデュース、2019年 

 

後半に行くにつれて、デザインにとどまらずブランディングの範囲を拡げた建築などのプロジェクトが一堂に展示されている。

例えば有名なもので「ふじようちえん」という幼稚園の建築がある。これは園屋自体を巨大な遊具ととらえて、子供たちが屋根を走り回れるように設計されている作品だ。これも以前完成形を見た時は”へ~場所を有効活用した良いアイディアだなあ”という感想であったが、提案過程を伺えるようなエピソードと共に見ることで佐藤氏の発想力とプレゼン力に脱帽した。

 

「ふじようちえん」リニューアルプロジェクト トータルプロデュース、2007年 

 

また「ICONIC BRANDING PROJECTS」までの作品を観て、物事を整理するのが誰よりも上手な左脳人間だと思っていたが、最後の「LINES & FLOW」ではアーティストとしての顔も見せる。

始まりは商業的なアート/クリエイティブディレクターだったはずの彼が、自分自身のブランディングも完璧に行い、活動範囲を拡げ続けている。

 

「LINES」2020年、吹付塗装/ステンレススチール/アルミ樹脂複合板、 180×240cm 

 

過去最多級に協賛企業が名を連ねる本展は、言い換えれば日本を代表する大企業達から佐藤可士和へのラブレターにも思える。こんなにも多くの企業に愛され、凄まじい作品数をうみ出し、日常的に私達の目に入ってくるアーティストは他に類を見ない。

グッズコーナーも思わず国立新美術館にいることを忘れてしまうような設計なので、最後のお買い物まで楽しんでほしい。

本展はゴールデンウイークまでの開催予定。早く世の中が落ち着き、より多くの人が感覚的にも楽しめる本展覧会を鑑賞することでエネルギーを得ることを祈っている。

 

文=山口智子

写真=新井まる

 

【展覧会概要】

佐藤可士和展

■会期 2021年2月3日~5月10日

■会場 国立新美術館 

■住所 東京都港区六本木7-22-2

■電話 03-5777-8600

■開館時間 10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)※混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入

休館日 火(2021年2月23日、5月4日は開館)、2021年2月24日

観覧料 一般 1700円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料 

■アクセス 千代田線乃木坂駅6出口直結

■公式URL https://kashiwasato2020.com

■お問い合わせ

03-5777-8600(ハローダイヤル)



Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?ーーー

 

 

幼いころから書道・生け花を初めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

 

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

 

現在、外資系企業のメディア部門で奮闘中。

 

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走リ続けています。

 

instagram URL: https://www.instagram.com/YAMATOMO824/

 

Follow me!

 

 

アートの世界は広く深い。

 

絵、音楽、ダンス、言葉… 感情や感覚、目に見えない物を伝えることを助けてくれるツールであり、人々の感動を創る。

 

だから私はアートが好き。