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原美術館が品川で開催する最後の企画展 5人のアーティストが魅せる光と呼吸

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2020年10月7日


原美術館が品川で開催する最後の企画展 5人のアーティストが魅せる光と呼吸


原美術館が品川で開催する最後の企画展

5人のアーティストが魅せる光と呼吸

 

 

2021年1月で群馬に拠点を移す原美術館

東京都品川区の閑静な住宅街に佇み、実業家・原邦造の邸宅として1938年に建てられた洋館であり、1979年12月に当時の日本では希少な現代美術専門館としてオープンした原美術館は、2021年1月11日に現在開催中の『光―呼吸 時をすくう5人』をもって40余年の歴史の幕を閉じ、群馬に拠点を移す。

 

品川での最後の展覧会を飾るのは5人のアーティスト。今井智己、城戸保、佐藤時啓が制作した新作及び過去の写真作品に加えて、原美術館のコレクションから佐藤雅晴のアニメーションとリー・キットのインスタレーションが展示中だ。

 

 

5人のアーティストが魅せる 原美術館の光と呼吸

 

リー・キット展示作品《Flowers》(2018年、原美術館蔵)

 

2018年に原美術館で開催された個展「僕らはもっと繊細だった。」が記憶に新しいリー・キットの作品が最初の展示室で出迎えてくれる。人工光と展示室に差し込む自然光を用いた静謐なインスタレーション《Flowers》(2018年、原美術館蔵)だ。光と呼吸のテーマにぴったりな作品となっており、光そのものを展示する大胆なものとなっている。展示を見る人の影も作品の一部になってしまうので、まさに光が呼吸しているかのように感じることができ、見るものを非日常に連れていってくれるのではないだろうか。

 

今井智己展示作品《Semicircle Law》(2013-)

 

今井智己の作品は、『真昼』(2001)や『光と重力』(2009)などの初期作品を皮切りに、福島第一原発から30km圏内の近辺にある数カ所の山頂から、地図とコンパスを使って、原発建屋の方向にカメラを向けて撮影した『Semicircle Law』(2013-)と、原美術館から同方角を捉えた新作をメインに展示。作品を展示している仮設壁のも福島第一原発の方角に設定されていることで、よりリアリティが感じられるようになっていて、今井本人が語る「忘れたくない出来事」という思いで撮影された記憶に残る力強い作品となっている。ここ原美術館で見るからこそ、ずっと忘れてはならない出来事を目に焼き付けていただきたい。

 

城戸保展示作品《梅と小屋》など(2020)

 

続いて城戸保は、何気ない日常風景の中で本来の役割や用途からズレた「もの」を捉え、「見る事やある事の不思議」を考察した写真を撮る。よく晴れた日に、大判カメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラを活用して撮影しているそうだ。「自分のなかでは絵画の延長。写真を使った絵画のようなな作品。」と城戸本人が語るように、かつては画家を目指したことがあったと言う城戸独自の色彩感覚で、どこにでもある日常の風景を非常に美しく捉えているのが魅力だ。鉄の錆なども普通ならどんよりとした見栄えになってしまうが、ほんの少しデータをビビットな色味に調整することで、錆を見事に美しく演出している。

本展覧会では原美術館で撮影した新作も混じっているそうなので、多くある展示作品の中から探してみるのも楽しいだろう。

 

佐藤時啓展示作品《光―呼吸》(2020)

 

佐藤時啓は、長時間露光を駆使し、風景の中をペンライトや鏡を持って歩き回り、光と自身の移動の軌跡をフィルムに定着させるシリーズ『光―呼吸』の新作を展示中。舞台は、本展示会場である原美術館と、2021年に原美術館ARCと改称し活動を続けていくハラ ミュージアム アークである。今回はフィルムを使わずに、デジタルカメラを使用する新たな取組となっている。

フィルムカメラから高画質なデジタルカメラに変えたことで、かなり細かく原美術館を眺めることができるようになったので、細かい部分まではっきりと写すことができるのだとか。例えば階段の手すりの裏についたゴミを見つけたり……、「今まで気づかなかった原美術館を知ることができて楽しかった。」と、佐藤本人が語る。

また、光を演出する作業はかなり体力が必要な作業だという。原美術館の中庭を写した1点には約3時間ほどかかったそうだ。そんな渾身の作品を鑑賞するだけでなく、実際に撮影された美術館内の場所に足を重ねて、光を感じてみてはいかがだろう。

 

佐藤雅晴《東京尾行》(2016年、原美術館蔵)

 

佐藤雅晴の作品は、5年前の五輪へと向かう東京の姿を撮影しトレースした『東京尾行』(2016年、原美術館蔵)の映像作品シリーズだ。現実と非現実を交錯させた映像が佐藤の作品の特徴だが、その実写とアニメーションの微かな差異が虚実を曖昧に感じさせ、新たな視覚体験を見る者にもたらすものとなっている。惜しくも2019年に他界してしまった佐藤だが、その作品は今でも私たちに気づきを与えてくれる。

 

この混沌とした2020年という時代に、5人のアーティストが原美術館にもたらす光と呼吸を、原美術館の姿と併せて記憶にしっかりと留めていただきたい。

 

文=安藤 紘

写真=新井 まる

 

 

 

【展覧会情報】

『光―呼吸 時をすくう5人』

http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/897/

会期      2020年9月19日[土]―2021年1月11日[月・祝]

休館日       月曜日(9月21日、11月23日、1月11日を除く)、9月23日[水]、11月24日[火]

年末年始(12月28日[月]から1月4日[月]まで)

入館料       一般 ¥1,100 / 大高生 ¥700 / 小中生 ¥500

*原美術館メンバーは無料

*学期中の土曜日は小中高生無料

*年齢を確認できる書類のご提示により、70歳以上550円

*身障者手帳のご提示により、ご本人は半額、介助者1人無料

会場          原美術館(〒140-0001 東京都品川区北品川4丁目7−25)

*美術館のご入館には、ウェブサイトでのご予約が必要です。https://www.e-tix.jp/hara/ よりご予約ください。