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MANGAで振り返る、東京【MANGA都市TOKYO ~ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020】

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2020年8月28日


MANGAで振り返る、東京【MANGA都市TOKYO ~ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮202


MANGAで振り返る、東京【MANGA都市TOKYO ~ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020】

 

現在国立新美術館で開催中の展覧会「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」は、東京という都市の変遷をマンガやアニメ、ゲーム等のポップカルチャー軸で紹介している企画展。マンガ、アニメファンから注目されるなど話題を呼んでいる。

 

国立新美術館は、2015年開催の「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」(2015年6月24日~8 月31日)を皮切りに、同展をタイ、ミャンマーに国際巡回し、日本が誇る独自のカルチャーを世界に発信してきた。本展は2018年にフランス・パリにて開催し、来場者が3万人を超える大盛況となった『MANGA⇔TOKYO』展(2018年11月29日~12月30日)の凱旋展示である。

 

パリ展写真 ©MANGA ⇔ TOKYO Japonismes 2018

 

展示構成は、イントロダクションからはじまりセクション1からセクション3まで性別年代フルレンジの90タイトル以上、500点以上の展示物が集結する国内最大級のMANGA展となる。

情報量は多いが、オリジナルマスコットキャラクターのヨリコとヴィッピーにより横串で案内することで展示としてのまとまりを感じる。今回は展示順路に則ってレポートしたいと思う。

 

ヨリコ&ヴィッピー ©2018 OPMA All Rights Reserved.

 

0.「イントロダクション」

イントロダクション<1/1000巨大東京都市模型>

 

まず展示室内に入ると、目の前に広がるのは、1/1000の縮尺で再現された、幅約17メートル、長さ約22メートルの巨大な東京の都市模型。この巨大な都市模型をとり囲むように東京を舞台とするマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品が展示されている。

来場者たちは物語の場面やキャラクターの記憶を蘇らせたり、新たな作品と出会うわけだが、どの展示セクションからもこのリアリティある模型にアクセスがしやすいため、どこにいてもその都度現代の東京と重ねながら楽しむことができる。

 

また模型の奥にそびえる大型のビデオウォールには『AKIRA』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『秒速5センチメートル』『3月のライオン』『残響のテロル』『ラブライブ!』1954年版『ゴジラ』や『シン・ゴジラ』、『グランツーリスモ6』といった東京を舞台にした作品の映像が流れており、東京の歴史を懐かしみながら見ているとあっという間に時間が経ってしまう。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 ©カラー

 

 

01.「破壊と復興の反復」

 

大震災や大火、空襲によって破壊されるが瞬く間に復興し、繁栄を遂げる東京。

これらを比喩した作品も多い。その中でも代表的なものがセクション1では紹介されている。

中でも特に知名度が高い特撮『ゴジラ』シリーズについて触れたいと思う。

 

『ゴジラ』  TM & © TOHO CO., LTD.

 

1954年に日本で製作された初代「ゴジラ」(本田猪四郎、円谷英二監督)誕生の背景には、核兵器や第二次世界大戦がもたらした”恐怖”がある。

 

突如として現れ日本中のあらゆるものを破壊し、東京の街中が火の海となるがゴジラを殺すための攻撃も通用しない。まだ第二次世界大戦から10年ほどだった日本国民にとって、ただ暴れるだけ暴れ街を破壊しつくすゴジラの描写は、東京大空襲や原爆投下直後の無惨な東京の風景を彷彿とさせるものだったはずだ。

さらに2016年に公開された『シン・ゴジラ』(庵野秀明が脚本・総監督)の背景には東日本大震災、福島第1原発事故があったことはいうまでもないだろう。

 

圧倒的な破壊神として目覚める設定は1作目と同様であり、破壊していくルートなどで共通項もあるが、大きく異なるのがエンディングだ。初代のようにゴジラを倒したかのように見える、もしくはゴジラが海に帰っていくというそれまでのシリーズの結末ではなく、”当面の解決”となる。完全に終わることがない不安とどう向き合っていくか、ということはまさに原発による不安に似ており、それが当時の日本国民の共感を得た。

 

これらのように急速に変化する当時の時代背景とシンクロしていたことは、ゴジラシリーズの中でも特にこの2作がヒットし、支持される要因なのではないか。

 

本展では東京都心部の地図上に初代ゴジラが襲撃した場所を表示したほか、「ゴジラによる東京の破壊の反復(1984~2016)」と題し、シリーズ化によって都度ゴジラに破壊されてきた街を映像とともに解説しているので、どの世代でも自身が知るゴジラを思い出し盛り上がれることだろう。

 

展示風景

 

その他にもフィクションの中に歴史的背景を持たせることでリアルに仕上がった作品が複数紹介されている。当時の資料も並べて展示されており、既知の作品でも改めて鑑賞したいと思った。

 

大友克洋 AKIRA ©MASH・ROOM/KODANSHA

 

 

02.「東京の日常」

 

時代ともに移り変わりる東京の人々の暮らしぶりを「プレ東京としての江戸」「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」「世紀末から現在まで」という3パート構成で考察。西洋文化の浸透や関東大震災、第2次世界大戦といった歴史を掘り下げつつ、その中で生きた”人々の日常生活”を描写した作品たちを紹介している。

 

アニメやマンガはその時代ごとの状況、民衆の感情、風習を強く反映している。作品でその当時の社会を知ることができる作品も多く、共感を呼ぶこともヒットの秘訣といえる。

このセクションでは映画も大ヒットを記録した『三丁目の夕日』のように全てが当時の実際の生活に近いものから、『美少女戦士セーラームーン』のように”普通の中学生の女の子が変身して悪と戦う”といった、設定はフィクションでありながら登場人物の性格や心情がその時代のリアルな女子の思いに近く、自分を重ねて入り込めるものまで紹介されている。

 

展示風景 原作:武内直子 『美少女戦士セーラームーン』

 

また、同じテーマでも描かれた時代によってストーリーの切り口やとらえられ方が大きく異なることも面白い。

例えば、江戸時代であれば華やかであり”女性の憧れの職業”として描かれることも多かった”花魁”や”吉原”の世界を、改めて女性の幸せについて読者に問いかけるきっかけとして扱った『さくらん』は性別で職業や幸せの在り方を決めつけることに疑問を持つ現代人から支持され、蜷川実花監督作品として映画化されたのが記憶に新しい。

 

安野モヨコ 『さくらん』

 

変化する生活様式や幸せの基準、価値観といったものが時代背景や歴史と相関性を持っていること、さらにマンガやアニメがそれらを記録していることを改めて感じ、歴史学や文化人類学の観点からみても貴重な資料だということがわかる。

 

 

03.「キャラクター vs. 都市」

このセクションでは、フィクションのなかに登場していたキャラクターが現実の世界に召喚され、その認知度の高さを活かしている事例が多数紹介されている。

 

展示風景 コンビニエンスストアと『初音ミク』

 

『初音ミク』とのコラボレーションで話題となったコンビニや、『ラブライブ!』一色に染まった山手線車両は実寸大で再現されているのが嬉しい。撮影スポットとしても話題になりそうだ。

 

企業や公共機関、自治体などの広報活動を行なう姿や、記憶に新しい『君の名は。』のように特定の場所と登場シーンが関連付けられることで「聖地」となり、観光資源として注目スポットになっているケースを地図とともに展示している。

 

展示風景 電車と『ラブライブ!』

 

今まさに未曾有のパンデミックが起きている。本来であればこの展覧会を通じて東京の歴史を再考察し、私たち日本国民はもちろんオリンピック開催によって世界中から来た人々により深く知っていただくまたとない好機を逃したことは非常に残念ではある。

一方で、震災や戦争などの負の歴史から立ち直り、その度に進化や繁栄を遂げてきた歴史を辿ることは、現状に希望を与えてくれるのではないだろうか。

 

都市の歴史と照らし合わせてみることで、知っていた作品たちも違った角度から捉えることができる。きっと懐かしい気持ちになったり、新しく読んだり觀てみたい作品が見つかると思うので、展覧会を見終わったあとのおうち時間まで楽しんでほしい。

 

 

文:山口 智子

写真:新井 まる

 

 

【展覧会情報】

MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020

 

【会期】※会期変更 2020年8月12日(水)~11月3日(火・祝)毎週火曜日休館

※ただし、9月22日、11月3日は開館(9月23日(水)は休館)

【開館時間】10:00~18:00   ※当面の間、夜間開館は行いません。※入場は閉館の30分前まで

【会 場】国立新美術館 企画展示室1E     

〒106-8558東京都港区六本木7-22-2

https://manga-toshi-tokyo.jp/

 

※感染拡大予防の観点から事前予約制を導入しています

 



Writer

山口 智子

山口 智子 - Tomoko Yamaguchi -

皆さんは毎日、”わくわく”していますか?ーーー

 

 

幼いころから書道・生け花を初めとする伝統文化を学び、高校では美術を専攻。時間が許す限り様々な”アート”に触れてきました。

 

そして気づいたのは、”モノ”をつくることも大好きだけれど、それ以上に”好きなモノを伝える”ことにやりがいを感じるということ。

 

現在、外資系企業のメディア部門で奮闘中。

 

仕事も趣味も“わくわくすること”全てに突き動かされて走リ続けています。

 

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