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アートオタクな天使のスパルタ塾 ~国立科学博物館編~

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2018年7月4日

アートオタクな天使のスパルタ塾 ~国立科学博物館編~


 

アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾~国立科学博物館編~

 

 

ぷさ天使のスパルタなアート講座のおかげで鑑賞のコツをつかんできたアートガールの“まる”。彼女が今回、案内された場所は、ちょっと意外なあのミュージアム…。
今回はアートファン&サイエンスファン必見のスパルタ塾です!

 

【過去のスパルタ鑑賞塾はこちら♪】
第1話:東京国立博物館編
第2話:東京国立近代美術館編
第3話:横浜美術館編
第4話:原美術館編

 


 

まる
ぷささん、今日はどこに連れて行ってくれるんですか?
ぷさ
上野公園内にある国立科学博物館へ行こう。
まる
科学?アートとはちょっと分野が違うんじゃないかな?
ぷさ
愚問だな。そもそも、アートと科学はもともと一つのものだ。たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチを見ても飛行機の設計をしたり、医学的な解剖を行ったりしているだろう?
まる
確かにダ・ヴィンチの展覧会では、名画と設計図や解剖図が一緒に展示されていたけど…。
ぷさ
大英博物館の入口にはキリンの剥製が並べられていた。科学系と美術系のミュージアムが分けられたのも、つい最近のことでしかないんだよ。
まる
へぇ、知らなかった!そういわれてみると、私がいつも行っているのは美術系のミュージアムだけかも。
ぷさ
それはもったいない!上野公園には、東京国立博物館と国立西洋美術館だけではなく、幅広い科学の分野を網羅している国立科学博物館、さらには音楽や演劇のホールである東京文化会館や上野動物園まで揃っている。この幸運を生かさない手はないぞ。

 

 

 

 

 

まる
改めて考えると上野公園はとても恵まれた環境ですね!西洋美術館にはよく行くんだけれど・・・。
ぷさ
すぐとなりにある科学博物館にも足を伸ばせば、アート=人間が作ったものとネイチャー=自然が作ったものの関係をより幅広く、より深く考えて楽しむことができるようになる。それこそがアートの醍醐味だ。
まる
なるほど!ではさっそく行ってみましょう!

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

国立科学博物館は1887(明治10)年に設立されました。国立唯一の総合科学博物館であり、日本で最も歴史のある博物館の一つです。

 

 

まる
国立科学博物館(上野本館)には年間250万人以上が来館するんですって。今日も開館からたくさんの人が訪れていますね。特に小学生が多いみたい。みんな楽しそう!
ぷさ
科学は実験的な要素があって、身の回りと関係が強いから子どもでも「楽しい」という感覚が得られやすいのかな。

 
まる
それに恐竜の化石や動物の剥製はインパクトがあるし、大人でもワクワクしますよね。美術館とはまた違う雰囲気だなぁ。
ぷさ
美術館でも、もっと「楽しい」という感覚を得られるといいんだけどな。

 

 

建物を見てみよう

 

 

 

撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
新しくできた地球館は近代的なビルディングですね。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
私は趣(おもむ)きがある日本館が好き!中央が吹き抜けになっていて天井はドーム型で窓や頂部に美しいステンドグラスが施されています。真っ白な壁に繊細なステンドグラスが映えてとてもきれい。
ぷさ
日本館は1931(昭和6)年に建てられた歴史のある建築なんだ。国の重要文化財にも指定されているよ。折衷様式の東京国立博物館ともル・コルビュジエ建築の西洋美術館とも違う、ネオ・ルネサンス様式で科学博物館の趣があるね。この建物は上空から見ると飛行機の形をしているらしい。1931年の建築だから軍事的な背景もあるかもしれないね。

 

 

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 


 

 

恐竜と宇宙とアートで138億年を旅しよう

 

 

地球館は地下3階から地上3階までの壮大なスケールの展示空間。地球と生命の進化、人類の歴史について展示されています。展示面積は約9,000㎡を誇り、日本の科学系博物館のなかでは最大規模。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
スタートは地球館1階「地球史ナビゲーター」の展示室ですね。真ん中に置いてあるのは隕石と恐竜の骨と人工衛星。不思議な組み合わせだなぁ。
ぷさ
宇宙史・生命史・人間史の壮大な物語をテーマに、138億年を一気に旅することができるシンボルゾーンだ。
まる
四方をぐるっと囲む地球史ナビゲーターのプロジェクションがすごい!
ぷさ
まさにメディア・アートだな。
まる
子どもが理解しやすいように可愛らしい映像なんですね。
ぷさ
メディア・アートを作っているアーティストと組んで、インタラクティブな内容にして欲しいな。
まる
もう・・・。ぷささんは何でもすぐにアート作品として見ちゃうんだから。
ぷさ
しょうがないだろ!でも、ここに入るだけで、期待感が膨らむよね!

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
今日のぷささん、なんだかテンション高いですね。
ぷさ
ふふふ、気づいた?実はオレ、天使になる前は恐竜博士か宇宙物理学者になりたかったんだ!
まる
えっ、初耳!しかも天使って仕事なの!?
ぷさ
うん。紆余曲折あってアートオタクな天使になったんだ。

まる
へぇ。(天使って職業だったんだ…)

ぷさ
アートと恐竜と宇宙、この3つには共通点があると思う。
まる
全く違う分野だと思うけど、共通してることなんてあるのかな?
ぷさ
それは、すべて“謎がつきない”ことだ。恐竜は絶滅しちゃったし、宇宙は無限に思われるほど広いし、アートはなんで布に絵の具を塗りつけたものに惹かれるのかすら分からない。どれも、ロマンがあるよね。
まる
ロマンかぁ…(遠い目)

 

 

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

ぷさ
さて、恐竜をはじめとした巨大生物を見て行こう。地下1階「地球環境の変動と生物の進化ー恐竜の謎を探るー」に詳しく展示されている。
まる
恐竜の骨格がすごい迫力!ティラノサウルスにトリケラトプス…。実際に見ると想像以上に巨大で圧倒されちゃう
ぷさ
恐竜って、あまりに大きすぎて、地球を闊歩していたことをリアルに想像することすら難しいよね。この大きさという問題はかなり重要だと思う。
まる
なぜ大きさが重要なのかしら?
ぷさ
たとえば、人間がいまの倍くらいの大きさだったとしたら、アートの形体も違うものになっていたのではないかと思う。大きさによって空間や環境の把握の仕方が違ってくるはずだからね。
まる
なるほど。今よりダイナミックなアートが生まれたかもしれないですね。
ぷさ
それから、すごーく素朴な疑問なんだけど、なんで恐竜たちはアートみたいなものを作らなかったのかって気になる。
まる
え?恐竜がアート?
ぷさ
それこそ科学的に見ればアホみたいな想像力かもしれないけど、科学とアートのあいだをうろついてみると、そういう素朴で根源的なところまで戻って考えることを楽しめるようになる。
まる
恐竜とアートを想像力で繋げられるなんておもしろいですね。
ぷさ
恐竜について分かっていないことは多いけれど、中でも皮膚の色については確定できないんだ。
まる
そうなんですか。
ぷさ
骨は残るけど皮膚は残らないからね。でも、恐竜にとって、色はすごく重要だったはず。色によって敵や見方を判別したり、狩りをしたり、逆に身を守ったりしていたことは想像できる。さっき、恐竜をリアルに想像できないと言ったけど、それは色が分からないということが大きく影響している気がする。

 

 


提供 国立科学博物館

 

 

 

ぷさ
さて、次はオレのもう一つの夢だった宇宙について見ていこう。
まる
地下3階の「自然のしくみを探る」の宇宙のコーナーにやってきました。ここでは宇宙の起源や構造などを詳しく展示しています。

 

 


提供 国立科学博物館

 

 

 

まる
あの〜、ずっと気になってたんですけど、ぷささんって宇宙人なんですか?
ぷさ
当然だ。ただしオレはまるの生きてる宇宙から来たのではない。宇宙は一つとは限らないからね。
まる
ゾゾゾ!今、マルチバースを肌で感じちゃった!
ぷさ
広大な宇宙の観測は、すべて「色」で行われてるんだ。
まる
え?どういうことですか?
ぷさ
ニュートンのスペクトル(spectrum)って知ってるかな?ガラスに光を通すと七色に別れるやつね。七色に見えるのは、人間が見ることのできる色の範囲が七色の範囲に限られるからだけど、要するに色は光の波長の違いによって生じているということだね。
まる
ふむふむ。色彩の知識はアートにも関係がありますね。
ぷさ
この波長の違いによって、宇宙の最小単位である素粒子も観測されている。このことを、美術的視点から言い換えると、我々は世界を「色」によって観測しているとういことになる。
  
まる
世界=色なんだ!
ぷさ
色即是空(しきそくぜくう)」っていう仏教の言葉のように、この現実世界はすべて色によって成り立っていることになるんだね。色=世界、即ち、空である。
まる
深い〜。
ぷさ
宇宙物理学は「宇宙の色」を見ているということになるんじゃないかな。そうすると、もうアートそのものだね。
まる
なんだか宇宙が身近に感じられるようになってきました。
ぷさ
ところが、ここからオレは逆に考えている。
まる
おっと、どういうこと?
ぷさ
もし、ニュートンのスペクトラムの理論が間違っていたらどうだろう、あるいはもっと別の形で光について観測できるようになったらどうだろう。ニュートンの『光学』が書かれたのが17世紀末だから、たかだが300年ちょっと。これが大転換する考えがでてくることも考慮しておいていい。
まる
まさかニュートンの理論が覆されるなんて!
ぷさ
ありえないと言える?科学的視点から見れば「トンデモ」で「オカルト」かもしれない。でも、美術的視点から考えるなら許されると思うんだ。美術の役割ってそういうちょっと可笑しな想像力、でも必然的に人間が考えてしまう想像力を未来に向けてストックしておくことなんじゃないかと思うんだ。
まる
ふむふむ。アートのチカラって改めて考えると大切ですね。
ぷさ
レオナルド・ダ・ヴィンチだってトンデモおじさんでもあったわけだよね。でも、彼の想像力が今のぼくたちを魅了している。それががアートだし、その想像力を広げてくれるものが科学だ。
まる
想像力ってアートと科学の架け橋なんですね。私もトンデモなく自由な発想で科学を楽しまなきゃ!

ぷさ
(安心しろ、お前はすでにトンデモだ、ぷっ)

 


 

 

 

ちょっとブレイク★

 

 

 


出口を出て正面にあるシロナガスクジラの実物大模型。 撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
ぷささんの1,000倍はある!
ぷさ
体長約30メートルのシロナガスクジラだ。
まる
記念撮影のスポットになってますね。私もパチリ!
まる
ところで、科学博物館のシンボルとなる実物大模型がなんで鯨なのかな?宇宙とか恐竜でもいい気がするけど・・・。
ぷさ
うーむ。鯨は日本の文化と密接に関係する生き物だよね。哺乳類だけど人間よりはるかに巨大で、繊細なコミュニケーションができるらしい。近くて遠い存在としての鯨が科学博物館の象徴になっているには、納得できるものがあるよ。
まる
なるほど~。それになんだか親しみもありますよね。大きいけどかわいいなぁ〜!
ぷさ
まる、オレは小さいけどかわいいよ〜♡
まる
ぷささんは…。小さいだけで、かわいくはない。
ぷさ
うっ。そんなにハッキリ言わないでよ…。

 

 

 

 


 

 

クロマニョン人とネアンデルタール人のアートの謎 


 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

 

ぷさ
次は、洞窟壁画だ。最近大きな発見が相次いでいるものの、まだまだ謎が多いんだ。
まる
洞窟壁画って人類最古の絵画ですよね。フランスのショーヴェ洞窟やラスコー洞窟などが有名ですね。
ぷさ
2016年から2017年にかけて、国立科学博物館でも「ラスコー展」が開催された。ラスコー洞窟壁画はおよそ2万年前にクロマニョン人によって描かれたものだよ。実物大のレプリカを見たときに、これは天才が描いた絵だなと思った。
まる
天才?
ぷさ
レオナルド・ダ・ヴィンチと同じレベルの一人の天才が描いたとしか思えない出来栄えなのね。でも、そのあとで色々と他の洞窟の画像を見てみるとやっぱり同じくらい質の高いものもたくさん発見されている。クロマニョン人たちには、そういう天才的な能力があったのかもしれない
まる
ラスコー壁画を描いたクロマニョン人も同じホモ・サピエンスだから、2万年前に天才アーティトが何人も現れていてもおかしくはないのかも…。
ぷさ
数万年単位の中で考えれば、定期的にレオナルドみたいな人が現れていたということかな。
まる
それだけでも想像がつきないですね。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

ぷさ
じつは最近、洞窟壁画について衝撃的な発見があったんだ。
まる
なになに?
ぷさ
ネアンデルタール人の洞窟壁画らしきものが発見されたんだ。スペインのマルトラビエソ洞窟の壁画が、約6万年前のものではないかという調査結果が出た。
まる
うわぁ、6万年前?…とするとクロマニョン人ではないですね。
ぷさ
そうなんだ。これはホモ・サピエンス出現前だから、ネアンデルタール人が描いたものではないかということになる。でも、国立科学博物館人類史研究グループ長の海部陽介さんのお話では、考古学的にはまだ信憑性は薄いらしい。一つの方法だけではなく、いろいろな方法で示されなければ確かとはいえないと言うんだ。それでも、ネアンデルタールは壁画を描いていない、と断定するのもまた極端な想像力だと思う。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

ぷさ
ネアンデルタール人の脳はホモ・サピエンスよりも大きかった。そして、体重も重かった。かつては、「ネアンデルタール人のほうが暴力的で体力面ではホモ・サピエンスが負けたけど、知能によってホモ・サピエンスが生き残った」という考えが主流だったけど、いまはそうではないと考える人も多い。
まる
どういうこと?
ぷさ
ホモ・サピエンスのほうが、ネアンデルタール人を絶滅させるくらい凶暴だったということだね。とは言え、ホモ・サピエンスはネアンデルタール人と交配していることが遺伝子レベルで証明されている。
まる
ということは、やはり彼らが洞窟壁画を描いていたという発見は真実なのかも!
ぷさ
そうだね。ところで、ネアンデルタール人はどんなふうにコミュニケーションをとっていたと思う?
まる
うーん、身振り手振りで伝えていたのかな。ダンスとか?
ぷさ
なかなかいい発想だぞ!じつは、彼らは歌でコミュニケーションをとっていたんじゃないかという考えがあるんだ。
まる
歌をうたったの?おもしろい!
ぷさ
考古学者のスティーヴン・ミズンが著書『歌うネアンデルタール』で紹介しているんだけど、ネアンデルタール人は歌がうまかったらしい。口まわりの骨格がホモ・サピエンスと違うんだね。だから、彼らはリアルなコミュニケーションについては、ホモ・サピエンスよりもうまかった。
まる
わぁ、すごい特徴ですね。
ぷさ
逆に歌の下手な我々はや抽象的な言葉が必要になったわけだ。抽象的な言葉よりも、音楽や歌を聞いたときのほうが直接的な感動は大きいような気がしない?
まる
確かにそうですね。感性に訴えかけるのはやっぱり歌や音楽だという気もします。
ぷさ
ネアンデルタール人は目の前にいる相手ととても上手くコミュニケーションすることができたんだね。だから、抽象的な言語を使って、その時に一緒いなかった相手とコミュニケーションをする必要性がなかったのかもしれない。
まる
今だけ通じ合うための歌ってことかな。
ぷさ
でも、抽象的な言語がないと世代を超えて技術や考えを伝えていくことはすごく難しくなる。だから、長い時間でみれば歌の上手いネアンデルタールに、抽象的な言語を持っているホモ・サピエンスが勝利することになった。
まる
そうかぁ。
ぷさ
じゃあ、アートはどうだろう?音楽に近いだろうか?それとも言語に近いだろうか?
こうして考えてみると、科学の領域で議論されているネアンデルタール人も、アートに近いだけじゃなくて、ぼくたちの生活とすごく近いものであることが分かるね。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

ぷさ
次は彫刻を見てみよう。技術の高い彫刻作品は、壁画とは比べ物にならないくらい大量に発見されている。
まる
昔の人も彫刻作ってたんだ~。
ぷさ
これなんか、日本の縄文時代の土偶に近いね。それから、これは動物と人間が合体したような形をしている。エジプトの彫刻に似ている人間と動物がとても近い存在であったことを象徴しているね。

 

 

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
ねえ、ぷささん。絵画よりも、彫刻のほうが早く発展したんでしょう?
ぷさ
いい質問だ。アートというと絵画作品が初めに思い浮かべるけど、自然界には平面的なものなんてほとんどないんだよね。二次元的な平面を三次元に見せる遠近法も自然界に存在している方法ではない。だから、彫刻のほうが先に発展したのも当然だと言えるね。
まる
なるほど。

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

 


 

 

今回は、人類の進化、日本列島における人類史のはじまりについて、国立科学博物館人類史研究グループ長の海部陽介さんに詳しく解説していただきました。
ぷさ天使は、著書をすべて読んでいるほど海部陽介さんの大ファン。尊敬する海部さんにお話をうかがうことができて感激の様子です。

 

 


国立科学博物館人類史研究グループ長の海部陽介さん

 

 

まる
海部陽介さんが主催する「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」について少しご紹介しましょう。

 

 

このプロジェクトは、私たちの祖先が台湾から沖縄に渡った航海を再現しよう、という壮大なスケールの検証実験です。クラウドファンディングにより古代舟を復元して当時と同じルートで航海する、というこれまでにない試みで、2016年に始動しました。様々なチャレンジを重ね、最終目標の「台湾→与那国島」の航海の再現に向けて再びプロジェクトが動き出します。
詳しくはこちら

 

 

まる
海部さんは研究者でありながら、実際に自分でやってみるというところがすごいですね。
 
ぷさ
おもしろい発想だよね。科学的な研究の場合、研究者は対象に直接関与することを避ける。自分が介入することで科学的な事実を変えないためにね。
 
ぷさ
ところが、海部さんは直接自分でやってみる。 
まる
海部さんが、航海の再現において「当時の人の立場に自分を落とし込まないといけない。そうじゃないと昔の人のことは理解できない」とおっしゃっていたのが印象的でした。
 
ぷさ
海部さんが航海を実践すること、人類の移動の歴史やその技術だけではなく、その精神を探ろうとしている。そもそも、海部さんが実践していること自体が、航海があったことの証明なんだ。当時の人たちもきっと海部さんと同じように、航海をやってみたんだね。そういう想像力を実践に移せる人は限られているけど、それでもやっぱり実践する人は生まれてくる。そして、彼らが道を切り拓くんだね。 

 

 

 

 


 

 

まる
科学って難しそうで苦手だったけど、見方によってこんなに楽しめるんですね。私が見つけたフォトジェニックな科博を少しご紹介します! 

 

 

 

 


撮影協力 国立科学博物館

 

 

まる
今日は楽しかったなぁ。ん?ぷささん、なにを真剣な顔で悩んでいるの?
ぷさ
まる、オレも科学博物館に展示されたい。
まる
…は?
ぷさ
オレほど珍しい天使はいないはずなのに、何でもっと注目してくれないんだ?!よしオレの展示コーナーを作ってもらおう!
まる
ええっ?ぷささん、もしかして剥製になっちゃうの?
ぷさ
それでもいい!これから交渉しにいくぞ。
まる
ちょっとまって~!!

 

 

まるとぷさ天使のアート探訪はまだまだつづく…。

 

 

 

テキスト・五十嵐恵里子 写真・吉澤威一朗
出演・花房太一、新井まる

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花房太一 HANAFUSA Taichi

美術批評家、キュレーター。1983年岡山県生まれ、慶応義塾大学総合政策学部卒業、東京大学大学院(文化資源学)修了。牛窓・亜細亜藝術交流祭・総合ディレクター、S-HOUSEミュージアム・アートディレクター。その他、108回の連続展示企画「失敗工房」、ネット番組「hanapusaTV」、飯盛希との批評家ユニット「東京不道徳批評」など、従来の美術批評家の枠にとどまらない多様な活動を展開。 ウェブサイト:hanpausa.com



Writer

五十嵐 絵里子

五十嵐 絵里子 - Eriko Igarashi -

大阪藝術大学芸術学部文芸学科卒業。
2015年に美術検定1級取得。都内で会社員をしながら、現在アートナビゲーターとして活動中。
山形県出身、東京都在住。