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未来を変革するアーティスト・チーム THE EUGENE Studio『1/2 Century later.』展

NEWS

2017年12月17日


未来を変革するアーティスト・チーム THE EUGENE Studio『1/2 Century la


未来を変革するアーティスト・チーム THE EUGENE Studio1/2 Century later.』展

 

銀座の資生堂ギャラリーにて、THE EUGENE Studioの個展『1/2 Century later.』が開催中です。

 

 

 

 

THE EUGENE Studio(ザ・ユージーン・スタジオ)は、株式会社オブジェクト・オブ・ヌルを前身とし、2016年7月に設立された株式会社という組織形態のアーティスト・チームです。

 

アーティストの考えを最新のテクノロジーを駆使しながら、各種研究機関や企業、自治体と共に新たな価値を作り上げる活動を行っています。彼らが提唱する新たな視点によって、社会を変革することを活動の目的とし、アートの境界線を飛び越えた活動で国内外から注目を集めています。

 

そんなTHE EUGENE Studioの未発表インスタレーションを展示する本展は、「1968年」を一つのモチーフとしています。展覧会終了後には、それから50年後の2018年を迎え「半世紀」が経過することになります。「あれから半世紀(あるいはこれから半世紀)」が本展のテーマです。

 

展示室に入ると、大きなガラスケースの中に一面、灰色と化した寝室が再現されています。こちらの作品《Beyond good and evil, make way toward the waste land. (邦題訳・善悪の荒野)》は、スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のラストシーンに登場する部屋を破壊し風化した状態で再現しています。

 

 

《Beyond good and evil, make way toward the waste land. 》2017年

 

 

THE EUGENE Studioは1968年を「20世紀においてのテクノロジーの価値観がSF小説や映画の中で決定付けられた年」と捉えているそうです。(映画『ブレードランナー』の原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック作)も1968年の発表です)

 

 

《Beyond good and evil, make way toward the waste land.》細部

 

 

『2001年宇宙の旅』では宇宙船で使われていた人工知能を持ったコンピューターが自らの意思を持ち、乗組員を殺めるという展開が、当時社会に大きな衝撃を与えました。

 

半世紀後の今、テクノロジーの進化により、人工知能は確実に私たちの生活に溶け込みつつあります。映画で示されたような事態はまだ起きていないものの、科学技術が進んだからといって紛争は絶えず、環境破壊は止まりません。人類が向かう方向はこれでいいのかという疑問が各方面から聞こえてきます。

 

『2001年宇宙の旅』では人類を導く存在であるモノリスが、人類を進化させるために部屋を用意したという設定です。その部屋の破壊するという行為は、過去の未来観の破壊・旧来のテクノロジーへの価値観からの脱却などを意味するそうです。

 

このインスタレーションの延長線上、正面に対峙するかたちで展示されている  《White Painting》 は、一見、真っ白なキャンバスですが、そうではありません。100人程の人々が口づけした跡の残るキャンバスです。

 

 

中央に《Canvas》

 

 

アメリカ、メキシコ、台湾で行った、街行く人に声をかけ、愛する人を思いながら白いキャンバスに口づけをしてもらうというプロジェクトにより完成しました。

 

総勢600人近くが参加したこのプロジェクトは、グローバルに様々な問題を抱える現代社会の中で、小さな共同体で行われる運動の大きな可能性を示しています。また撮影時に使用したiPhoneが、参加者が愛について語る様子の映像を公開し、個人個人の声が取り上げられています。口づけをする際の写真も展示されています。

 

 

《Still from Series of White Painting, 2017.》

 

 

一般の人々が参加するアート・パフォーマンスでもあり、キリストや聖母像を描いた板絵に口づけをする、イコンとの類似という西洋美術史との関係、DNAの蓄積など、重層的な側面を持つ作品です。

 

対照的な二つの作品が対峙する構図は、破壊から再生へ、未来を創る方向を提示しています。破壊から、人々の小さな愛の蓄積へ。人間の根源的な部分に立ち返ろうというメッセージとも受け取れます。

 

THE EUGENE Studio代表取締役のEugene Kangawaさんに、《Beyond good and evil, make way toward the waste land. 》の制作秘話を伺いました。

 

インスタレーションは、映画のセットを精巧に再現するために、海外へ家具を買いつけに行き、既存でないものは制作したそうです。例えば、奥に見えるロココ調の油彩画はアンティークのように見えるのですが、実際のキャンバスを用意してペイント。大理石もオーダー品、食事まで再現。なんとも手が込んでいます。ペインティング、彫刻、映像制作のスキルをKangawaさん自身も持っていますが、それらに特化したプロフェッショナルなメンバー、総勢11名の制作チームで作られたそうです。

 

 

《Beyond good and evil, make way toward the waste land.》細部

 

 

床には廃墟のような粉塵や、割れた硝子片が散りばめられていますが、これはKangawaさん個人の、粉砕されていくものへの好奇心も現れています。小学生時代にワールドトレードセンター・テロが起こり、タワーが崩落して粉々になっていく映像が記憶に深く刻まれたことが発端だそうです。インスタレーションの設置はバラバラの細かい部品を組み立てる、とても大変な作業で、ほぼ3日徹夜されたとか…。マニアックな作業の部分も楽しんで進めていると言い切る姿が印象的でした。

 

展示会場中心に設置されたインスタレーションを囲むように展示されているのは、“Agricultural Revolution 3.0 (邦訳:農業革命3.0)”のドローイング。

 

2012年に構想し、2016年に山形県鶴岡市と共同で国内外の研究機関や研究者と協力して行ったリサーチ、インスタレーション、カンファレンスを含むプロジェクトの設計図となった2図です。

 

 

《Model Room for Agricultural Revolution 3.0 》

 

 


《Model landscape for Agricultural Revolution 3.0 》

 

 

スマートアグリとバイオテクノロジーという二つの視点から、農業が食料生産だけでなく、エネルギーや素材づくりをも可能にし、生活の様々な部分の役割を担うという「次世代農業」=「第三次農業」を提案しています。

様々な研究者が未来の農業イメージについて発表し、その積み重ねが、テクノロジーによる、農業の機械化ではない、もう一つのリアリティのある未来を描いた画期的な取り組みでした。

 

《Model Room》 にはバイオテクノロジー技術によって、廃棄物やセルロース、構造タンパク質から生み出された新素材で構成された家具、器、衣服などが描かれています。

 

それらは実際にリサーチで集められた実在する新素材から作られたものです。歴史的に食糧以外の目的で使われてきた植物も描かれています。例えばオリーブは古代から油を作るため、ゴムの木は近代ヨーロッパにおいて、加工し工業用素材になった農業植物です。農耕神話に関するモチーフも描かれています。

 

 

《Model Room for Agricultural Revolution 3.0 》細部

 

 

《Model Landscape》には、前景に広がる農園、奥には農業廃棄物を素材に変換する工場が描かれています。THE EUGENE Studioが示した、縦に伸びていく高層ビルが並ぶ都市ではなく、横に田園が広がっていきながらも、基幹産業により循環可能な「新たな農業都市」を描いています。

 

いずれも、銅版にエッチングという手法で描くことにより、腐食し、経年変化が目に見える方法を選んでいます。

 

 

《Model landscape for Agricultural Revolution 3.0 》細部

 

 

プレスプレヴュー時の宮津大輔さんとの対談の中でKangawaさんは、「自分の世代にとってテクノロジーは新しいものではない。恩恵は受けているが、過剰な期待はしていない。テクノロジーをどう使うかが重要であって、テクノロジーの反乱による問題は、人間側に責任があり、人間を取り戻していくことが重要」と述べました。

 

また、チームで活動する理由について「その人にしかできないことより、思考の構造をいかに拡げるかということに重点を置いている」こと、「情報が素早く行き来する時代において、アーティストが一個人として社会に追いつくことが厳しくなっている」現状や、「現代美術がコマーシャル化し、純粋な制作であり続けるためには制作環境を守っていくことが大切」と話されました。なんと、20代後半のKangawaさん。これからの活動に期待が高まります。

 

 

対談中の宮津大輔さんとEugene Kangawaさん

 

 

いかがでしたでしょうか。

THE EUGENE Studioが描くのは、現状を否定するのでも、悲観視するのでもなく、今から実現可能な、地続きの希望のある未来です。2017年も残すところ僅か。来年のこと、10年後のこと、50年後の未来を、少し想像してみませんか。

 

12月の銀座はクリスマスのイルミネーションで輝く季節。本展は入場無料、平日は19時、週末は18時まで開いています。お越しの際はぜひ足を運んでみてください。

 

 

写真・新井まる、Ryoco Foujii

文・Ryoco Foujii

 

参考文献・『アート×テクノロジーの時代~社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』(宮津大輔、光文社新書) :プレスプレヴューでの対談に登壇した宮津さんによる著書。THE EUGENE Studioをはじめ、チームラボ、ライゾマティクスの活動について詳しく解説しています。

 

 

参考HP・THE EUGENE Studio公式サイト http://the-eugene-studio.com/ja/

 

 

THE EUGENE Studio『1/2 Century later.』

会期:2017年11月21日(火)~12月24日(日)

会場:資生堂ギャラリー

住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階

開館時間:平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00

休館日:毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館)

入場無料

資生堂ギャラリー公式サイト http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/

 

 

【資生堂ギャラリーで開催された展示の過去の記事はこちらから!】

石内都が撮るフリーダ・カーロの軌跡

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Writer

Foujii Ryoco

Foujii Ryoco - Foujii Ryoco  -

学習院大学文学部哲学科(日本美術史専攻)卒業・学芸員資格取得後、アパレル会社にて勤務。
フランス、レンヌ第二大学で博物館学やミュージアムマネージメントを学び、インターンを経験。
パリ滞在中は通訳、翻訳者、コーディネーターとして勤務。
日頃の関心はジャポニスム、日仏の美術を通しての交流。
フランスかぶれ。自称、半分フランセーズ。
アートは心の拠りどころ。アーティストの想いを伝えられるような記事をお届けしていきたいです。
Contact:Facebook・Foujii Ryoco#Instagram・coco.r.f






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